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「はい?
説明して、城崎。」
「水流さんに頼んだ俺が馬鹿だった。
あれ、何で俺、頼んじゃった?
疲れてんなぁ、ってか呼び捨てかよっ。」
「早く。」
「分ったよ。
はぁ、お嬢父かなり控え目だし、お嬢のハートは広いんじゃなくて、底無しのブラックホールだし、ザックリって言うより自分以外out of 眼中、他人、何それって感じで自分に無関係な事に無関心なだけだし・・・」
「心の声、漏れてない?」
「えっ、嫌だな。
何の事かな。
で、記憶の事だがね。
その前に、この世界の事を話すぞ。」
「それって軌道修正出来てるかしらね。」
「話終わったら、全身の血が抜けた気にしてあげる。」
「何それ、意味分かんねぇけど怖よ。
話すんなってこと?
さっきの悪口、実は怒ってた?
すまん。
ごめんなさい。
今のお嬢に言っても分かんねぇだろうけど、そういうこと言わんでくれ。
冗談に聞こえないから。」
こいつは最初から訳分からん事ばかりよく喋る。
「ふぅ、脱線しちまったけど、これからの話は今まで以上に大事だからな、よく聞いといてくれ。
そもそも3層で成り立つこの世界、始まりがいつなのか、どう始まったのか、どの層にも伝わっていない。
あまりに昔過ぎて記録が失われてしまったのか、それとも創造神なんかがいたりしてパッと突然、現れたものなのか、誰しもが推測はするが、何せ資料が1つもねぇんで分からない。
ただ不思議なことに3層、言語が同じなもんで、1部の学者なんかは元は1つだった世界が3層へと分かれたのではないか、なんて言ってたりする。
まぁ、上の御方も下の御方も絶対に認めないとは思うがね。
天界の奴らは自分達の事を天界神と言って、それで分かると思うが地界の奴らや特に人間を下等生物と見て、かなり見下してやがる。
天界の奴ら、面倒だから天神と言ってるが、天神はだいだい47万人ほどで、そのほとんどが天界の中心、こっちで言う首都キャピュトルに住んでる。
キャピュトルの中心には天界マスターがいて、彼が天界の主って訳だ。
天神のほとんどが氷や雪を操る氷雪能力者で、現在の天界マスターは歴代マスターの中でも秀逸と言われている。
んで、氷雪能力者が住んでる天界は年中、雪で覆われているが、キャピュトルはマスターの力で守られているから常に温暖で雪なんてねぇ。
人界で言うところの未来都市みたいな所だ。
科学が発達してて高層ビルが立ち並んでやがる。
その科学技術の進歩の動力源になっているのが通称“スノーボール”。
そいつがマスターの力を凝縮した高エネルギーに変換、キャピュトル全体に供給していて、マスターの住む宮殿のどこかにあるらしい。
ちなみに天界マスターの名前はヴィートス。
って聞いてねぇな。
今から話すことはマジで聞いてろよ。
お嬢にも関係あるからなっ。
もう一つの界、地界。
彼らは自分達の事を地界魔と言い、炎を操る好戦的で邪悪な奴らだ。
とにかく戦って勝つことが何より好き、いや、勝つことが生きる上での至上命題なんだろうな。
だから地界のマスターも最強となった者がなる。
けど天界マスターが実力はもちろん、家柄や人格、功績等々、加味されるのに対して、地界マスターの座は実力のみで勝ち取るんだ。
戦って戦って地界魔全てを平伏させた者だけがマスターとなる。
だから47万人はいるとされる天界と比べて地界は20万人もいるかどうか。
常に戦いに身を投じている中で弱者は淘汰されてしまう。
そして今の地界マスターはアレクサ。
奴もまた歴代マスターの中でも群を抜いた最強の発火能力者だ。
ちなみに地界は街というより村って感じで、レンガ造りの家々が不規則に密集している。
んで、ごちゃごちゃした村の奥にマスターの要塞みたいな城がある。
天界も地界も勿論広い、限り無く広い。
なのに天界は地界を、地界は天界を制圧しようと目論んでいる。
要はお互いが目障りでしょうがない。
でも間に人界がある。
奴らは結託している訳でもねぇだろうが、どっちも足掛かりとして人界にやってくる。
本当、この戦い、数百年以上続いているらしいんだわ。
あいつらは長命だが人間は長くて百年。
どれだけ代替わりしているか。
迷惑だし、面倒だっつぅの。
ちょっと弱い結界能力者が現れると、何処からともなく現れて、襲ってきやがる。
まぁ、そん時は他の結界能力者に補完してもらって防ぐ訳なんだけど、あぁ本当、面倒。
その上、新たにお嬢の問題が俺達にのし掛かったって訳だ。
長かったが、ここでやっとお嬢の事だ。
水流さんじゃないが、簡単に言うと地界マスターがお嬢に惚れちまった・・・それが事の始まりだ。」