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女王の憂鬱  作者: 紫月旅人
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2

「はぁ、あんた何言ってんの。

前から怪しい、怪しいって思ってたけど、やっぱり変質者だったわけだ。

さっさと出てって!!!」

z,zz,zzzz

「神流、落ち着いて。

城崎、あなた神流を試したわね。」

「揺れたな。」

「はぁ、そうね。

言ったでしょ。

地界の者と交わっても神流が私の後継者だと言うことに変わりはないって。」

「それでも真実を告げる事を、ここまで延ばしたのはお嬢への愛ってやつかね。」

「そうね。

でも今となっては、それが神流にとって良かったのかどうか。」

「おばあちゃん?!

一体、何の話をしているの?」

「詳しい話は俺からするよ。

いきなりだけどお嬢、地球は丸いと思うかい?

答えはNOなんだな。

この世界、お嬢が想像する以上にでっかい。

なら、何故人はこの世界を丸いと思っているのか。

答えは簡単。

我々が、そう思わせているからだ。

色々質問があるだろうが、まずは俺の話を聞いてくれ。

この世界は3層に分かれている。

上から天界、人界、地界と呼ばれていて、俺たち人間がいるここは、人界。

人界はさらに北極ホッゴク南極ナンゴク西極サイゴク東極トウゴク中極ナカツゴクと5つに分かれていて、総称して五極ゴゴクと言っている。

それぞれの極に1人、人界代表者がいて、俺は中極の人界代表者だ。

俺達の役目は人界を守ること、つまり結界能力者を守り、彼らに協力すること。

結界能力者ってのは、結界を創り極に張り巡らすことで極を守るもの達のことだ。

この能力者も各極にいる。

この結界のおかげで、他の界からの悪質な侵入者を未然に防いだり、逆に俺達が設定している“地球”から人間が出られないようにしているんだ。

そして、察しがつくだろうが、水流さんは中極の結界能力者。

お嬢は水流さんの後継者、次の結界能力者だ。」

「へぇ。」

「本当よ。

突然の事で信じられないでしょうけど、本当の事なの。

私達結界能力者は、自分の命が尽きる前に後継者を選ぶの。

いえ、選ぶというよりは分かるといった方が良いわね。

自分の死期が近いことと、次の後継者が誰なのか、ほぼ同時に閃くの。

本当は、もっと前に貴女だと分かっていたのだけど状況が状況だし、城崎にも止められていたから。

でも、もう引き延ばせない。

ごめんなさいね。

こんなに急に事を進めるつもりじゃなかったのだけれど。

私も今朝方、明日までもたないと知ったから。」

「お嬢が記憶を無くしたままでいてくれれば、急にせよ、何にも問題はなかったんだがな。

結界能力者の引き継ぎは、前任者の死をもって行われるんだ。

お嬢はただの結界能力者になるだけだった。

けど大きな誤算が出た。

それはお嬢の記憶が戻ってきていること、それに伴って力が使えるようになってきていること。

そんな事は、有り得ないんだ。

水流さんの創った完璧な結界の中にお嬢の記憶を封じ込めたんだからな。」

「・・・」

「お嬢、ショックだろうし、俄に信じがたい気持ちも察するが心をしっかりと持ってな。」

「私の記憶を返して。

そしたら信じてあげる。」

「信じるって・・・」

「私がおばあちゃんの後継者だってこと、信じる。

だから記憶を返して。」

「信じるって、俺の話聞いてたか?

説明しといて何だが、そんな簡単に信じれるもんじゃねぇだろう?!」

「違う。

まず、あんたを信じてはいない、全く。

正直、感謝してるけど、おばあちゃんのことも信じるとはまだ、言えない。

でも後継者の話が本当なら、その時が来たら“分かる”んでしょ?

なら、ここで考えても仕方ない。

それにおばあちゃんが今夜、死んじゃうなんて信じられないし信じたくないけど、私にはどうすることもできないから、自殺じゃないなら今夜まで様子を見るよ。

あと地球が丸くないとか、3層とかの話は、どうでもいい。

だって、結界のおかげで、そういう事実を知らなくてすんでるんでしょう。

なら、私は今まで通り、地球は丸いし、世界は地図に示されてるもので全部って信じていることにするよ。

だから私の記憶をさっさと返して。

記憶がないと私、何かどこかが欠けている気がして、ここら辺がモヤモヤするんだよね。」

胸をソッと押さえながら城崎を見ると、口を大きく開けて呆然としている。

「ほらね。

神流はそんなことぐらいで驚いたりしないでしょ。」

「そんなことって・・・」

「神流のお父さんが言ってたのよ。

“神流はお母さん以上に心のでっかい、ざっくりした娘です。”って。」

「お父さん。」

「そう、貴女のお父さん。

とてもしっかりした義理の息子だったわ。

末神マツミも、貴女のお母さんね、頭が良くて可愛い娘だったのに、まさか二人とも私より先に逝ってしまうなんて・・・」

「おばあちゃん。」

「しんみりしてる所にすいませんがね、お嬢が平気だって言うんなら記憶を封じた理由をズバッと言ってみようと思うんだがね。」

「まぁ、城崎、何だか投げ遣りね。」

「気ぃ使ったのが馬鹿馬鹿しくなってきてな。

でも、心のデッカイお嬢でも、今から話すことはさすがにキツイ、デリケートな話になるんでね、身内で女性である水流さんから説明してもらっていいかい。」

「そうね。

神流、おばあちゃんね、あっという間にひいおばあちゃんになっちゃった。」



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