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これらがわたしがするはずの妨害行為をまとめてみました

 わたしは自分で書いたメモを見て、机の上に顔を伏せる。

 ペトラと会い、初めての週末を迎えた。

 あれから連日レーネの買い物に付き合っているが、彼女が何か品物を買うのはどうにか言いくるめて辞めさせている。だが、ダミアンの誕生日が近づくとそうはいかないだろう。

 正直レーネにダミアンにプレゼントを贈らせたくはない。


 わたしは今までの整理を兼ねて、今までの事情をまとめておこうとしたのだ。


 クラウディアがレーネの邪魔をしたというのははっきり覚えているが、それを改めて確認しておこうと思ったのだ。


 完全とはいいがたいがわたしが覚えている限りではダミアンルートを選んだ場合、中途半端にレーネに協力して、邪魔をするというのが主な道筋だ。


 レーネはクラウディアとの友情を断ち切り、ダミアンを選ぶ。

 クラウディアはレーネたちとは離れ、もう彼女と友人として過ごすことはないというのがその結末だ。


 クラウディアがレーネにしたのは


 一、ダミアンを待っていたら、クラウディアに無理やり呼び止められ、強引に一緒に帰ることになる。

 二、ダミアンへの贈り物をクラウディアに奪われた。

 三、ダミアンをデートに誘いたいと相談をしたら、今は誘わないほうがいいと言われる。

 四、ダミアンとクラウディアが二人でデートしている姿を目撃する。

 五、クラウディアが直接邪魔をしたわけではないが、クラウディアがダミアンを好きだという噂が流れる。

 六、レーネはその噂でクラウディアが今まで自分の恋路を邪魔しようとした理由に気付く。

 七、クラウディアのせいでダミアンに悪いうわさが流れ、ダミアンが学校に来なくなる。その噂というのはクラウディアに暴力を振るったとか。だが、それはダミアンがクラウディアを振ったからそんな噂が流れたということになったとダミアンからレーネは聞かされるのだ。そして、クラウディアはこの学校を去る。デマを流したことが学校中に知れ渡り、居づらくなったというオチだ。邪魔者のいなくなった二人は気持ちを確認しあい、恋人として付き合い始めるという結末だ。


 思い出した順なので、時系列では並んでいない。

 一部妨害行為とは違うものも含まれた気もするが、あえて気にしないことにした。

 わたしは自分で描いたメモを見て分かっていたことだが、やっぱり別の学校に編入しておけばよかったと後悔した。

 今の状態だとそんなことをするとは思えない。


 レーネに言い出せない現状から、一と三はしてしまうかもしれない。それは彼にはすでにドロテーという彼女がいることが確定しているからだ。そのうえ、レーネのあのダミアンに対する異様なまでの信頼と、彼女に聞いた好きな人が二股をかけていたら?という話がわたしの心に引っ掛かる。


 二のプレゼントを奪うってさすがにそんなことはしないと思う。ダミアンのために作ったお菓子をクラウディアが「おなか空いていたの」というたぐいのセリフを残し、奪うシーンだったはずだ。


 四のわたしがダミアンを好きだという真偽はともかく噂ならあり得るだろうか。最後のクラウディアがふられたという一件は何だろう。ダミアンがそう伝えたのがポイントかもしれない。レーネは確実にダミアンの言ったことなら信じるだろう。あくまで甘恋はレーネの視点からの物語だ。だから、彼女がそう思い込めばそれが真実となる。


 あのペトラという女性のことも幼馴染というのを疑っていないようだった。

 ペトラも幼馴染と紹介されて嫌ではなかったんだろうか。彼女もドロテーと同じように嘘をついているようには見えなかった。

 間違いなくダミアンが嘘をついているとわたしは根拠なく確信していたのだ。


 レーネと友人関係を辞め、彼女の傍から去ればそれで丸く収まるのだろうか。

 それはそれで一つの方法かもしれない。だが、あのダミアンをそのまま放置しておくと、とんでもない火種となりそうで気がかりだ。レーネと付き合ったあとも同じことを繰り返しそうな気がしてならなかったのだ。


 逆に、わたしが知っているゲームとの違いは何だろう。

 細かいイベントの内容は違っていることもあったりするが、得られる結果はそんなに変わらなかった。

 違う内容で会話が盛り上がったり、例えばレーネの数学と歴史の点数が入れ替わっていたりとかそういった感じだ。前の流れにそっていえば、クラウディアがお腹が空いていたではなく、おいしそうだからといった類のセリフを残し、贈り物を奪う可能性だってある。


 あと登場人物もレーネ視点という問題なためか、出てこなかった人もかなりの数いる。

 フランツがその最たる例だ。

 もっともレーネとフランツが深くかかわることもないし、当然といえば当然だろう。だが、クラウディアには幼くして遊んでいた相手がいたと聞かされていたため、そこにが入っていてもおかしくはない。


 あと、ペトラのような女の子も出てこなかった気がする。

 彼に女の友人が多いで一括されていたのかもしれないが。


 まあ、レーネと付き合う前までにペトラと別れていたとしたら、もしくはレーネに二股以上をかけていることが甘恋の物語の期間内でばれなければ出てくる必要もないだろう。


「ペトラはどう思っているんだろう」


 彼女からもらったメモに視線を通す。


 電話してみようかな。


 わたしはそう決めると、電話機まで行く。そして、書かれた番号に電話をしてみた。

 家の人がでたら友人と名乗っていいのだろうか。そんなことを漠然と考えていると、聞きなれた声がわたしの耳に届いた。どうやらペトラが電話に出てくれたらしい。


「わたし、クラウディア=ブラントと言います」

「クラウディア様?」


 彼女は驚きの声をあげた。


「あなたに話があるの。今日、あなたの家に行っていいかしら? 難しければわたしの家でも」


 どこかのお店を指定しなかったのは、人に聞かれくなかったためだ。


「はい、大丈夫です。お待ちしています」


 わたしはペトラと二時間後に約束をして、電話を切った。

 今は昼の一時でちょうど昼食を終えた頃だろうか。

 二時に出れば十分間に合うが、始めていく家なので、迷わない可能性もゼロではない。

 彼女の家がわかり、時間が余ればどこかで買い物でもしたらいい。

 わたしはそう決断して、メモをバッグに入れると早めに家を出ることにした。


 今から思えば、ダミアンの家に行くときにアポイントを取らなかったのはなぜだったんだろう。わたしがダミアンが彼女といるのをどんな形であれ目撃するためだったんだろうか。現にわたしはベルタの買い物によく付き合っていた。風邪をひいた彼女の代わりにフランツと買い物に行くことになっていたとしてもおかしくはない。


 本当に何の因果なんだろう、とわたしは苦笑いを浮かべた。


 わたしは立ち上がると、そのまま部屋を出て行こうとした。

 ちょうど扉の所でフランツに遭遇する。

 彼はわたしが出てくると思わなかったのか、目を見張っていた。


「何か用だったの?」

「アレックス様がお嬢様へのお土産のケーキは何がよいか聞いてきてほしいと」

「チョコレートケーキがいいわ」

「では、そう伝えておきます。クラウディア様は今からどこかに行かれるのでしょうか?」

「知り合いの女の子の家に行こうかなと思うの」

「ゲルタ様に送ってもらうのでしょうか?」

「歩いていくわ」


 わたしは少し考えてそう返事をした。

 彼女は言えば送ってくれるが、忙しい彼女を巻き込みたくなかったのだ。


「僕もついてきますよ」

「あなたも家に上がる気?」

「近くで待っています」


 そこまでしなくてもいいのに。

 過保護というかなんというか。


「最近、カミラに似てきたわね」


 わたしは呆れ顔でそう呟いた。


「そうですか?」


 わたしは軽く冗談として流すと思っていたが、フランツは複雑そうな顔をした。


「フランツ?」

「なんでもありません。行きましょうか。お嬢様」


 フランツはそういうと微笑み、わたしの手を取った。

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