実験に使われた動物
私は、人間が嫌い。
人間は、私たちを籠の中に閉じ込める。
白衣をまとったと思うと、こちらへ視線を向ける。
決して優しい目なんかしていない。私たちを、道具のような扱いで見てくるの。
怖い、という恐怖よりかは、またなんだ、と飽きれた気持ちになる。
もう何回目だろう。
同じ籠で育った私の仲間たちは、数えられないほどいたのに、今では私しかいない。
みんな帰ってこないのだ。
帰ってきたとしても、それは私の知っている仲間じゃない。もはや、別の種族ではないかと変化していたりする。
実験。人間はそう言う。私たちを使って。実験に使って。
同じことを何回も、昨日も、そのまた昨日も、そのまたの昨日も。
わかっている、今日は私の番。
逃げようなんて無理なこと。助けてもらえるなんて無理なこと。
無理なことをやろうとするほど、私はバカじゃない。
これが運命なら、そう従うまで。
けれど、私は嫌だ。籠の外に出されたら、二度とココへは戻ってこれない。
いっそ、今ココで殺してほしい。
何されるかわからない地獄よりかは、断然まし。
なのに、自分の墓場さえも、人間は選ばせてくれない。
憎い。憎い。心の底から、こみ上げてくる。
けれど、きっとこの気持ちも忘れるだろう。
今のこの感情も忘れるだろう。
人間の実験によって、私という存在は、消えるのだから。
だから、抵抗はしない。もう好きにしなさい。けれど、死んでも忘れないわ。あなたたちが憎い、てことを………。
「よぉし、じゃあ、実験始めるぞ」
その声をともに、人間は、白い手で私を持ち上げた。