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創世記

作者: 八田理

 男はカプセルのドアを開けると女に言った。

「ただいま」

「お帰りなさい。面白いのはあったかしら?」

「それが、驚くべき作品を見つけたんだ」

「ふーん。私はもう、よほどの内容じゃないと驚かないけど……」

「いや、今回のは、さすがの君でもひっくり返るだろうね」

「長いの?」

「いや、君の好きなショートショートさ」

「じゃあ、さっそくお願い」

 こうして男は、『創世記』と言う作品を女に読んであげた。

 

「禁断の実を食べただろ」

 神はアダムとイブを詰問しました。

「いえ、私たちは食べていません」

「神である俺をだませると思っているのか。お前たちをそそのかした蛇が全部白状したぞ」

「蛇は嘘をついているんです。実を食べたのは蛇だからです」

 なおもシラを切り続ける二人に神はとうとう激怒しました。

「嘘つきはお前たちの方だ! エデンから出て行け!」

 二人が荒野に消えるのを見届けた神は、家に帰ると女神に言いました。

「喜べ。とうとう完成したぞ」

「あら、やっと書き上げてくれたの?」

「いや……、どうもそっちは……。やっぱり俺にはセンスはないし」

「じゃあ、あの二人のこと?」

「そうなんだ。やっと嘘をつけるまでに進化したんだ」

「書けるようになれるかしら?」

「ま、百万年はかかるだろうけど、人口が一億ぐらいになればセンスのあるやつが一人くらい出てくると思うよ」

「その時が楽しみだわ。彼らが絶滅しないように、賢くなるように、ちゃんと見守って教育してあげてね」

「もちろんさ。これからはタイムマシンに乗ってこまめに未来へ行くよ」

「私も一緒に行きたいけど、めまいが止まらなくなるからお願いするわ」

「そう、無理は禁物だよ。俺たち二人はこの星で生きていくしかないんだし」

 小説が大好きな女神は力なくうなずき、大破したロケットに目を向けました。

 

「な。驚くべき作品だろ」

「本当……。いつ、どこで書かれたの?」

「例の日本だよ。ショートショートの巨匠が亡くなった後だけどね」

「でも、何だか気味悪いわ」

「そうだろ。タイムマシンのエネルギーが蓄積され次第、作者を調べてみるよ。どうして俺たちの言動が分かったのかをね」



























































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