恋花
自分の身勝手な発言で、大好きだった友達との友情が崩れさり後悔する霧夏。犯人を捕まえると自分で断言しておきながらも、なんの手がかりもつかめず、途方にくれていた霧夏に翔くんが手をさしのべた。封印しているはずだった恋の花が今開き出す。
8月28日午前8時12分
昨日の記憶がよみがえるたび、自分が憎くてたまらない。
なんてことをしてしまったんだ。
後悔で溢れ、今にも崩れそうになる。
(綾、夢菜、まとい、信奈)
大好きだった友達がみんな離れていってしまった。
綾や、夢菜や、まといは自分の身勝手な行動で手放してしまった。
こんなとき、いつも相談に乗ってくれた信奈はもういない。本当に独りぼっちになってしまった。
自分で犯人を捕まえると言っておきながらも、なんの手がかりもなく、なにもできない。
もういっそのこと消えてしまいたいぐらいだ。
学校に行く気にもなれなかった。行ってもそばに来てくれない友達の姿に、傷つくだけだろう。
(もうやだ…)
そう思いフラフラと公園を歩いていた。
「あれっ日名島さん?」
「うそ、翔くん!」
「どうしたの?そんな暗い顔して、と言うか学校は?もしかしてサボり?」
「うん・・・まあ」
「ふっ、俺も!」
私達は公園のベンチに座った。翔くんがジュースを渡してくれたので、飲んだ。
「俺で良かったら、話してくれてもいいんじゃない?」
「えっ?」
「そんな暗い顔して歩いていた理由。何かあったんでしょ?」
翔くんの優しさに涙が溢れそうになる。
私は、今まであったことを全部翔くんに話した。
「ふーん、そんなことがあったんだ」
「ごめんね、聞いてもらって」
「いいっていいって、俺が話してっていったんだし」
「ありがとう」
やっぱり優しいなと、心を打たれる私。
「日名島さんや、綾達にはおっきい問題だもんな琴葉さんのことは・・・辛かっただろ?」
翔くんのその言葉で今までの思いが溢れ、涙が出た。
(嫌だ、翔くんの前で)
そう思い涙を止めようとするが、どんどん溢れ、止めれない。
そんな時、翔くんが私をギュッと抱き締めた。
「えっ翔くん!!?」
「ずっと泣くの我慢してたんだろ?今は、思いっきり泣いてもいいんじゃないか」
あぁもう、なんでこの人はこんなに優しいんだろう。神様は残酷な事をしてくれる。この人は、好きになってはい
けない人なのに。
「もう大丈夫。ありがとう」
「いいってこのぐらい」
「じゃあ、私帰るね」
このまま一緒にいてわいけない。一緒にいたら、私はこの人の事を。そう思い、離れようとする。
ギュッ
「えっ?」
翔くんが私の手を掴んだ。
「あのさ、こんなこと言われるの迷惑かもしれないけど、俺にも犯人探し手伝わせてくれないかな?」
「えっいいの?」
「このままだと、日名島さんが心配だからね。それに、綾のために何かしてやりたいし」
ああ、この人のがここまでしてくれるのは、綾のためか・・・
「どうしたの、やっぱり迷惑?」
「ううん、嬉しいありがとう」
世の中は不平等だ。つくづくそう思わせられる。
「私ね・・・みんなの事がうらやましかったんだ。」
「・・・?」
「夢菜は頭良いし成績良いし、まといは運動神経良いし、信菜はみんなに無いものを持ってて、綾はかわいくてモテモテで、翔くんみたいな優しい彼氏がいて、私だけ何もないみたいな」
「みんなちがってみんないいって言う言葉があるだろ?自分ではわかんなくても日名島さんには、友達思いってゆう、すっごい良い物持ってるよ」
「・・・本当に優しいね。綾がうらやましいよ」
もうだめだ、押さえられない。
私、この人の事が好きだ。
封印していたはずの恋が開いてしまった。
「私・・・翔くんの事が好きです」
「えっ?」
溢れてしまった思いは止められない。
恋にひたりすぎて気がつかはかった。
誰かがこちらをにらんでいることを。
第3章恋花 終