始まりの時
4月25日 午前7時50分
いつものように私は走って、いつもの場所に向かう。
ハァハァハァ
黒く、長い髪を乱しながらも私は走る。
「遅っそーい!! 早くしてよ遅刻しちゃうじゃん。」
「ごめーん。寝坊しちゃった。」
「まったく、昨日も寝坊今日も寝坊・・・いつになったら成長すんのよあんたわー」
「 だからごめんって」
「だいたいあんたは…」
「もーやめなよ二人とも!」
「そうだよ、もう学校行こう。遅刻するぞ。」
「その通りよ。霧夏ちゃん、綾ちゃん学校行きましょう。」
私達はいつも一緒に居る仲良しグループだ。私、日名島霧夏。いつも喧嘩ばっかりしているけど私の一番の理解者でとっても美人な、一之瀬綾。しっかりしてて、頭もよくて、私達のたよれるお姉さんの、西城夢菜。運動神経バツグンでクールでかっこいい、天野まとい。礼儀正しくて、優しくてかわいい、琴葉信奈。
私達5人はいつも一緒にいる。それはもうあたり前なこと、ずっと・・・ずっとそう思ってた・・・私達は誰も思ってもいなかっただろう。こんなあたり前のことが、闇に閉ざされてしまう日がちかずいているということを・・・
。
8月12日 午後7時38分
自分の部屋でボーッとしていたとき、
プルルルルル
ケータイがなった。
「もしもし」
「あっ霧夏!」
綾だ。
「どうしたの?そんなあわてて。」
「ねえ、そっちに信奈いってない?」
「えっ?来てないけど、どうしたの。」
「さっき、信奈のママから電話きたんだけど、信奈が家に帰ってないんだって!」
「え?信奈が。」
「うん。今みんなで探してるんだけど、霧夏しらない?」
・・・頭がついていけない。信奈が帰ってない?つまり・・・行方不明ってこと?
「うん・・・」
半信半疑で私は答える。
「じゃあ私他のところにも電話してみるから、何か分かったら連絡ちょうだいね。」
「わかった。私も心当たりのあるとこに、連絡してみるね。」
プツッ
信奈・・・どうしたんだろ?そんな不安な感じで頭がいっぱいだ。
私はふと、机に飾ってあるみんなで撮った写真を見た。
(嫌な予感がする)
こんな気持ちで私の1日が終わる。
次の日、学校での話題は信奈のことでいっぱいだ。
昨日、クラス全員に信奈の連絡が回ったみたいだが、誰もその姿を見ていない。
「霧夏、おはよ」
「あっ“まと”おはよ」
「信奈、まだ見つからないんだってね。」
「うん。心配だよね。」
「誘拐・・・とか何か変なのに巻き込まれてなきゃいいんだが。」
「もう・・・信奈、どこにいんのよ。」
私もまといも、たぶんみんなも、ただ
信奈の無事を祈るばかりだ。
ガラッ
教室のなかに誰かが入ってきた。
綾と、あともう一人綾の彼氏の西風翔だ。綾と翔くんは、高校に入学して出会い6月から付き合っている。翔くんはとてもかっこよくて優しくて、そして・・・私の好きな人でもある。その事は綾にも、誰にも言っていない。いや、言えない。
「おはよー綾、相変わらずラブラブだね。」
「・・・・・・」
・・・?
(綾・・・どうしたんだろ?)
「・・・みんな、あとで屋上きてくれない」
「えっ?」
「どうしたんだ?綾、様子がおかしいぞ。おい翔!どうしたんだよ」
まといが怒鳴った。
「そう言えば、今日夢菜は?休みかな」
「夢菜は今日、休みだよ」
「綾?」
「とにかく!後で・・・全部話すから」
何かがおかしい。綾はどうしたと言うのか、夢菜は?なぜ今日休みなのか。わからないことでいっぱいだ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなった。私達は仕方がなく席に戻った。
ホームルームが終わり、私達は約束通り屋上へ向かった。
「で、綾どうしたの?」
「・・・今日、私のとこと、夢菜のところに信奈のママから電話が来たんだ」
「えっ信奈は?」
「信奈は無事なのか?」
私もまといも、気になることは一緒みたいだ。
「信奈のママ、あまり噂が広まったらって・・・だから私と夢菜だけに電話したんだって・・・信奈、信奈ね・・・うっ」
そこまで言いかけると、急に綾が泣き出した。
・・・綾どうしたの?なんで泣いてんの?信奈は、信奈はどうしたの?
「信奈・・・今朝、遺体で発見されたって・・・」
(遺体?信奈が・・・?えっ・・・それって)
理解ができない。遺体って・・・死んだってことだよね・・・?信奈が、これは夢?
「どうゆうことだよ・・・どうゆうことなんだよ!!!綾」
「私だって、私だってわからないよ!でも・・・信奈は・・・今日、夢菜が休んだのも、それで・・・あと、信奈の遺体を調べたら・・・殺された可能性が高いって・・・」
・・・!!!!!!!!
「殺・・・された?」
なんで?なんで!!!私はこれまでに無いくらいの怒りを覚えた。
「なんで・・・なんで信奈は殺されたんだよ!!なんでなんだよ、信奈は人一倍いい子だったなのになんで!!!!!恨みなんてかうような子じゃない!!なのになんでなんだよ!綾!!!!」
この日、私達のなかで大きなものが崩れていった。
第一章始まりの時 終