プロローグ
「歴史は、統一されるとは限らない。」
本作は、前半部は1871年のプロイセン(ドイツ)統一を目指している、1861年を目安に展開され、後半部は1990年のドイツ再統一(とベルリンの壁崩壊)を目指している、1980年を目安に物語は展開されます。
二つの時代のドイツ統一を一人の異世界のドワーフの少女が時空を超える物語です。
本作は史実を尊重しつつ、フィクションとして描いています。
実在の歴史的事件・人物・場所を題材にしていますが、登場人物の心理描写や出来事には創作の要素が含まれます。
特に異種族や魔法、時間移動などはフィクションとしてお楽しみください。
ドイツの歴史や文化に関してはまだまだ勉強中です。その為、修正頻度高めです。
名前に関してですが、国名や人物等は元ネタはありつつも、大幅に改変されており、史実と異なる場合がありますが、ご了承ください。
殆どの世界線ではヨーロッパ州に、
ひときわ複雑でかつ、
情熱的な歴史を背負う国がある。
それが、ドイツ連邦共和国だ。
しかし、その世界とは"似て非なる世界"。
小国が連なり、革命が起こり、
産業が芽吹き、幾多の戦争を乗り越え、
現在のドイツへと.....
続くはずだった道を歩んでいた。
.....そう、"何処か"までは。
歴史の歯車は繊細だ。
ほんのわずかな狂いで、
軌道を外れ、
他の歯車にも影響を与える。
ひとかけらの偶然、一人の判断、
たった一歩のずれ。
それだけで百年先の未来は、
姿をすっかり変えてしまう。
こうして"この世界"は、
殆どの世界線のドイツとよく似ているのに、
決定的に違う架空の道を進み始めた。
そんな異常にある"人物"は気づいていた。
殆どの世界線が歩んでいる歴史では、
ドイツという地は長い分裂を越え、
"プロイセン王国"によって統一へ向かい、
更に時を経て東西の壁すら乗り越え、
再び一つになるはずだった。
だが、この世界線では違った。
遠い昔に外れたほんの一つの歯車が、
本来起こりえない争いや事件を生み、
本来存在しないはずの交流があり、
当時の人間達たちの行動は、
史実とはまるで異なる分岐を選び続け、
更にはその人格も変化していた。
その歯車自体を修理するのは.....
実に。
実に遅かった。
このままではドイツが.....
ドイツではなくなる。
いや、もっと悪い。
歴史の流れそのものが壊れれば、
"本来の世界線"にすら.....
影響を与えかねない。
そう、その人物は考えた。
その世界は.....
もうすぐ逸脱した"プロイセン王国"が、
統一へ踏み出す時代になる。
だが、その人物はよく知っていた。
統一は決して正解ではない、
という事だ。
統一後に生まれる矛盾と痛み。
そして、新たに生まれた大きな火種。
だからこそ、今尚議論が続いている。
ある世界線では.....
この統一を批判的に見る人が多く、
都合よく書き換えられ、
抹消されつつあるとか。
歴史の"正しさ"は、
時代や視点によって.....
いくらでも姿を変える。
この逸脱したドイツが選ぶ道。
それは、「統一か、別の未来か」。
もしも、"本来の世界線"通りに統一されれば.....
きっと"あの大戦争"は、
免れないだろう。
だからこそ、この世界線は、
もしもが紡ぐ架空史でもある。
当時の人間達の選択や言動一つが、
その世界の未来を大きく変える。
既に、歯車は綻びかけているのだから。
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そもそも、
時間を越えるとはなんなのだろうか。
そんな現象は、
"殆どの世界線"では今の所、
夢物語とされている。
時計の針を逆に回して過去へ戻ることも、
砂時計の砂を一気に落とすように、
未来へ跳躍することも、
人類はまだ一度も、
確かな形で成功させたことがない。
科学者たちは言う。
「時間移動は理論上可能かもしれないが、証明はされていない。もし出来たとしても、莫大なエネルギーが必要だ。」
学者たちは言う。
「異世界など存在しない。宇宙は一つで、我々はその中に閉じ込められている」
そして常識は言う。
「そんなものがあるなら、誰か一人くらい帰ってきて報告しているはずだろう。」
だから、
タイムスリップも異世界転移も、
結局は物語の中だけ。
所詮、
創作物の娯楽の一部に過ぎないのだから。
それで説明はつくし、
誰も不都合がない。
しかし。
もしも、世界そのものが.....
最初から違っていたら?
もしも、魔力が存在し、
空想が形を持ち、
異世界という概念が絵本ではなく、
しっかりと存在している世界が、
本当にどこかにあるとしたら?
そして何より重要なのは、
それが特別な魔法でも、
神の気まぐれでもなく、
物語の必然として起こる、
世界の仕様であるということだ。
科学が否定しようが、
常識が見向きもしなかろうが関係ない。
そこでは、
可能であることが前提条件なのだから。
だから、それは奇跡でも事故でもなく、
ただのそういう世界の仕組みなのである。
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___あるゴミ箱から発見された
丸められたメモ___
上記の文章は、《はじまりの統一、再び。》と題された文献からの抜粋である。
古書か、記録か、未来誌かすらも判然としない。
羊皮紙にも紙にも和紙にも似たその素材は、年代測定も意味をなさず、書かれた言語は辛うじて翻訳出来るものの、世界中のどの書記体系とも完全には一致しない。
更に不可解なのは、その著者が不明であること。
署名はなく、印もなく、本文中のどこを探しても、誰がこれを書いたのか分からない。
にもかかわらず、文献はまるで全てを見ていた者の視点で淡々と語られている。
歴史を俯瞰し、因果を見通していた.....そんな誰かの筆によって。だからこそ、この文献に好奇心を持った我々はこれからこの文章の解読に勤しみたいと思っている。
《 参考文献について 》
※本作の参考文献には、私が執筆にあたって影響を受けたり、表現や設定を考える上で参考にした文献を中心に記載しています。日本語で読める書籍のほか、必要に応じてドイツ語・英語の文献も参照しています。また、Web上の資料を利用した場合は、該当するリンクを明記しています。ここに挙げた文献は、本作に特に関係の深いものを抜粋したものであり、すべての参考資料を網羅した一覧ではありません。尚、参考文献はep.3まで出た際に、使用した参考文献まとめといった形で短編として出します。




