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結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる  作者: 風間悟
第1章:負け確状態から始まる青年の恋物語
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青年と幼馴染④:完成した小説

「ふう、これで完成っと」


 幼馴染エピソードを聞くことができたおかげか、思いのほか執筆が進み、2週間もかからず8日ほどで書き終えることができた。流石にこれには俺もよくやったなぁと自分を褒めてやりたい。後はタイトルを付けて、2人専用のWebページでも作れば完成だ。はてさて、タイトルは何がいいものか。


 今回書いた話は、幼馴染の青年が徐々に大人になっていく少女に対して改めて恋をする物語。それも今まで子供じみた言動をしてた青年が、大人になっていく少女に感化され、もう子供のままではいられないと悟り、きちんと正面から少女と向き合っていく話だ。


 つまるところ、価値観の変化で好きになった理由も変化してるんだし、同じ女性だけど幼少時代と学生時代で違う理由で初恋したと解釈できる。


(だとしたら、タイトルはこれがいいな……)


 俺は思いついたタイトルを入力し、小説を完成させ、就寝した。


<俺は2度幼馴染に初恋する>



***



「えっ、もうできたの? てっきり来週になるんじゃないかなと思ってたけど」

「ああ、俺もそう思っていたんだけど、想像以上に進んじゃったんだよな。ほんと2人には感謝してる。今LIMEにURLを送ったから是非読んでほしい」

「おー、マジで小説っぽいじゃん」


 昼休み、今日は雄太がいないが、俺は幼馴染たちと飯を食べつつ、小説が完成したことを報告し、2人にURLを送ったわけだが、2人の反応が見事に違うから面白い。藤原さんは目をキラキラしながらタイトルを見ているようだ。逆に高橋はちょっとめんどくさそうな顔でタイトルを見ている。


(ほんと、藤原さんは小説が好きなんだな)


 ちなみに俺は執筆作業を行いながらこの8日間2人にバレないよう色々情報収集を行っていた。痴話喧嘩の理由から、どの授業に対して高橋は忘れもが多いのかなど、若干ストーカーじみたことをしている自覚はあるが、これも全ては藤原さんの気を高橋以外に向けるためだ。


 とりあえず分かったことはその全てが高橋の自業自得であること。そして最後には藤原さんが根負けしているということだった。


(いやほんと、藤原さん献身的過ぎるな。これだけやってるにも関わらず高橋は告白もしないのか)


 逆になんで藤原さんから告白しないのかを彼女の中学時代からの友人であるみーちゃんこと、山口美美子やまぐちみみこさんに聞いてみたところ、『あの子はあれでロマンチストだから、自分からじゃなくて相手から告白してほしいっぽいんだよね』と言っていた。


 やっぱり告白という一大イベントにおいて、女性なら誰しもが抱く夢なんだろうなと思いつつ、お互いにそのまま告白をしないでくれと願う俺は最低なんだろうな。


「このタイトル凄くいいわね! 早速家に帰ったら読ませてもらうわ。ちょうど明日から休日だし、健斗もちゃんと読むんだよ?」

「うへー、俺は色々やることあるんだよ、部活だったりFPSだったりさ」

「読むタイミングはいつでも構わないさ。読んでもらった感想も踏まえて、もしかしたら話を修正するかもしれないしな」


「ほら、葉桜もこう言ってるんだし、俺は俺のペースで読ませてもらうさ。あははは」

「はあぁ、それいつもの絶対に読まないパターンじゃない。……葉桜君安心してね、私はちゃんと読ませてもらうから!」

「いいじゃないか! 真昼だって、たまには息抜きしないと見た目も相まって座敷童とかになっちまうぞ。あははは」

「へー、健斗は私に息抜きしてほしいのね。なら今度息抜きに勉強会でも開きましょうか。頭がすっきりするわよ?」


 はぁ、また痴話喧嘩が始まったか。この2人、息をするかのように口論になるから、時々2人の絆に亀裂を入れることができるのか不安になってくるよ。だが、いつかチャンスはやってくる。むしろこれだけ喧嘩してるんだから、来ない方がおかしい。それまで俺はアンテナを伸ばし、その瞬間を見逃さないことだ。


「はいはい、痴話喧嘩は家でやりましょうね。ところで高橋、今日の昼はえらく旨そうだな……。お袋さん料理上手なんだな」

「違うぞ、これは真昼が作ってくれたおかずなんだわ。もうちょい味を濃くしてもいいんじゃないかっていつも言ってるんだけどなぁ」

「ダメよ、ちゃんと健康に気を付けないとっていつも言ってるでしょ」


「この前も言ってたけど、本当に藤原さんは料理上手なんだな。俺も一人暮らしだからいつも自炊してるけど、そこまで美味しそうに作るなんてできないな」

「え、それ葉桜君が作ってたの? というか一人暮らしだったなんて知らなかったわよ」

「まぁ言うほどでもなかったからな。気になるなら、おかず一つ上げようか?」

「え、いいの? じゃあその卵焼き貰ってもいいかしら。その代わり私も一つ卵焼きを上げるわ」


 そう言って、藤原さんは俺の卵焼きと自分の卵焼きを交換してくれた。まさかこんなところで好感度上昇イベントが発生するなんて思いもしなかった。早速交換してもらった卵焼きを食べてみたが、これがまた旨い。


「うま! この卵焼き、もしかしてダシを使ってる?」

「ええそうよ、きちんと鰹節と昆布からダシを取っているわ。……葉桜君の卵焼きもとても美味しいわ。私の味付けに少し似ているわね」

「俺のは普通の白だしだけどね。濃すぎないよう少量だけ入れてるんだが、口に合ったようでうれしいよ」


(料理をしていてよかったと初めて思えたよ。ありがとう母さん)


 そんな感じで互いの料理について褒めていたのだが、ふと高橋に視線だけ移してみれば、なんとも不服ですと言いたげな顔をしていた。まぁ幼馴染の料理が自分だけのものだと思ってたら普通に異性に上げてるんだから、そりゃ嫌な気持ちにもなるか。


 だが、こればっかりは譲れない。俺にも戦いに参加するだけの権利はあるはずだ。なのでちょっとだけ高橋への牽制も含めて藤原さんに聞いてみた。


「でもさ、料理の味が似てて、おまけに小説の好きなジャンルが同じってなると、案外俺と藤原さんは相性がいいのかもな」

「!?」


(案の定、驚いたな)


「え、えぇ!? た、確かに私たちの趣味趣向は似てるかもしれないわね。でも突然どうしたの? 葉桜君」

「いや、ふと思っただけさ。変な意味で言ったわけじゃないから気にしないでくれ」


(ちょっと赤くなった藤原さんもまたいいな)


「び、びっくりしたぜ。いきなりどうしたんだよ葉桜。こんな貧相な体型の奴に欲情したのかと思ったよ。あははは」

「はあぁ……。高橋、いつまでも軽口なんてせず、もう少し女性に優しくなれ。そんなんじゃ、いつまでたっても彼女が出来ないぞ」

「な、なに言ってるんだよ。今はまだいなくてもいいんだ。今の俺は部活とFPSが恋人なんだ! つーか、そんなこと言ったら葉桜だって彼女いないんだろ?」

「俺は長い目で見ているからいいんだ。高校がダメでも大学もあるしな。それより、部活とFPSが恋人って……、言ってて悲しくならないのか?」

「お前だって、小説が恋人みたいなもんじゃないかー!!」


 そんな話を高橋としていたら、クスクスと藤原さんが俺たちを見て笑いつつ、『いつの間にそんなに仲良しになったの?』と言うもんだから、俺たちは一度目を合わせ、揃って『そんなに仲良くない』と言うもんだから、余計に笑われてしまった。


 あぁ、今はまだどうなるかはわからないけど、こういう日常の中の関係も悪くない。同時にやっぱり藤原さんは笑っている時が一番輝いていて、そして可愛いと思えた。

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