エピローグ:結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる
『──と言うのが、今日の出来事だな』
『いつの間にか、そこまで進展していたか。やったな真夜』
『真昼ちゃんの好感度も爆上がりだねー!』
俺はデートから帰宅し、夕飯等を済ませた後、裕也達に今日の出来事について話していた。
(というか、既にいい時間だと言うのに、なぜ雫が裕也の家にいる?)
『なぁ、何で雫がこの時間に裕也の家にいるんだ? もう帰ってる時間だろ』
『えー? 彼女が彼氏の家にお泊りするのってそんなに変かな?』
『大丈夫だよ、雫。全然変じゃないから。真夜にはまだ早いだけさ』
この場にこいつらがいないことが本当に悔やまれる。いたら確実にチョップを喰らわせてることだろう。
『それとも、真夜は私たちの熱い話でも聞きたいのかな?』
『辞めろバカ! 誰が好き好んで親友カップルの生々しい話を聞きたいか!』
『あははは!』
ほんと、こいつらのバカップルっぷりがどんどん加速していってるようだ。誰か止めてやってくれ。そのうち間違いが……、あり得そうで怖いな。
『はぁ。……ま、今日のは本来の意図とは違う事ではあったけど、それなりにいい時間を過ごせたと思うよ』
『ふふふ。真夜、いつの間にか幼馴染の男の子にも同情したりしてるもんねー。やっぱり根が優しいから』
『そんなつもりはないんだけどな。俺はただ藤原さん優先にしてる結果に過ぎない』
いや、本当は心の何処かではあいつを応援してる俺がいる。
『まだまだこれからさ。次は文化祭もあるし、距離を縮めろよ?』
『分かってる。まぁ何処まで縮められるかは微妙な所だけどな。特に後夜祭なんかは絶望的だ』
『もう少し、自分本位に考えてもいいと思うんだけどな』
『考えておく』
そう締めくくり、俺たちは電話を切った。雫の様子からすると、近いうちに藤原さんに今日の事でも聞きそうだなと思い、俺は苦笑した。
(自分本位……ねぇ)
理由はどうあれ、ショッピングモールでのデートの誘いや曼珠沙華への誘いなど、割と自分本位で動いてる部分はあると思うんだけど、あいつらの中じゃそれは含まれていないって事か?
(そういえば、昔あいつに言ったっけかな)
『もっと自分にわがままになれよ』と、俺は中学の時、裕也にそう言った事を思い出した。あの時はうだうだ悩んでたから、この際自分の気持ちに正直になって、雫にアタックしろという意味合いを込めて言ったっけかな。
(わがまま、周りの意見ではなく、自分の意見を通したりすること……)
言われてみれば、俺はそんなに藤原さんにわがままを通した事はない気がする。プレゼントがそれに当たるならそうかも知れないけど、あんなのは所詮事後承諾みたいなものだからノーカンだろう。
むしろ藤原さんは俺に対して、眼帯の件などで割とわがままを通してる気がすると気が付き、苦笑する。
あれが彼女の素であればいいんだけどな。
「ん?」
ふと、スマホが鳴っていたので起動すると、藤原さんからLIMEでメッセージが来たようだ。
「ははっ」
俺はメッセージを見て、思わず声を出して笑ってしまった。そこには『プレゼント、ありがとう!!』の文字と共に、藤原さんと優花ちゃんが2人並んで、プレゼントしたペンギンのぬいぐるみを笑顔で抱きしめている写真が添付されていたからだ。
この写真に写る2人の笑顔を見れただけでも、今日のデートは大成功と言えるだろう。まぁ藤原さんは遊びという認識だけどな……。
でも、この笑顔を見たからこそ考えてしまう。高橋はこうやって、彼女らの笑顔をちゃんと作れているのかと……。藤原さんはよく約束を反故されると言っていた。優花ちゃんはお姉ちゃんを悲しませていると言っていた。
好きだから、幼馴染だからという免罪符で、やっていいことにも限度は存在する。今回の件において、藤原さんはまだ大丈夫なようだったけど、それも積み重なっていけば、いつかは決壊するだろう。
そうなった時、彼女はどんな表情になる? 決まってる。自分を押し殺し、泣きそうな顔で悟られないようただ、俺たちに変わらない笑顔を見せるだろう。藤原さんは優しいから……。
(なら、いいよな……)
ふと、裕也が言っていた自分本位と言う言葉が脳裏をよぎる。俺に対してとっての自分本位とはなんだ?
そんなのは決まってる。藤原さんの想いを最優先にしつつ、俺のやり方で好きになってもらうこと。それこそが俺のわがままであり、これだけは変えられない俺の決意だ。
俺が昔、大好きな裕也たちの恋を応援するために雫を諦めた時と同じだ。好きな人の想いを大事にするだけだ。
(あぁ、やってみせる。これからも藤原さんを悲しませたり、泣かせたりするなら、その度に俺が彼女を助ける。そして、いつか俺に恋心を抱かせる)
そして、俺はそこに新たな誓いを追加する。藤原さんの想いが崩れそうになったら、その時は俺が君の想いを守ると……。
それらを全て実行するのは難しいかもしれない。なぜなら、その前に彼女らは付き合うかもしれないから。
(それでもやりきってみせる……)
拳を握りしめ、俺はあえてこの言葉を俺以外誰もいない空間で宣言する。それを改めて自分の誓いとするために。
「結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる」
第1章:完
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これにてタイトル回収をしつつ、第1章は完となります。
拙い文章ながら読んで貰い、ほんと感謝しかありません。
1章の感想を拝見し、それを2章以降に反映出来たらなと思っていますので、これからもよろしくお願いします。
なお2章は文化祭やクリスマスなどイベントが目白押しなので、ここからどう物語が進むか楽しみにしてください!
それでは2章でお会いしましょう。
最後に登場人物紹介も一緒に投稿しますので、そちらも拝見してもらえると嬉しいです。




