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結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる  作者: 風間悟
第1章:負け確状態から始まる青年の恋物語
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幼馴染との約束②:約束と優先順位(健斗視点)

「ふぅ、今日は疲れたなぁ」


 俺は放課後の練習試合を終え、真昼と一緒に帰宅した後、疲れてたので直ぐに自分の部屋に行きベッドで横になった。


(真昼と、デートかぁ)


 帰り途中に、真昼からデートの誘いが来るとは思わなかったな。ここ最近は俺も部活やらゲームのFPSやらで忙しく、出かけてもカラオケやゲーセンとかが多かったのは事実だし、あそこまで真昼が水族館に行きたいと言うなら、やぶさかでないが一緒に行ってもいいかなと思えた。


「もしかしたら、そのまま告白されたりしてな……」


 水族館とかでデートした後に告白された。なんて言う話はよく聞く。だとしたら本当に真昼から告白されるかもしれないな。


(うーん、俺としては俺の方から告白したいんだよなぁ)


 折角真昼が誘ってくれたんだ。それに便乗してデート終わりに俺から告白するべきか? いや、やっぱりこういうのは雰囲気が重要だ。それに告白するなら俺からデートに誘ってからの方が絶対にムードも良いだろう……。


「今年残ってるイベントは、文化祭とクリスマスか……」


 うちの高校では文化祭が終わると、その後に後夜祭が始まる。そこでは任意の参加者たちがダンスを踊ることになっている。聞いた話によると、そこで踊った男女は結ばれるなんて言う、ベタな噂が存在する。だとしたら後夜祭で真昼と踊り、クリスマスで告白と言う流れが一番じゃないだろうか。


(うん、それが良いな。と言うかもうこれしかない!)


 そう決めた俺は仮に告白されそうな流れになろうとも、どうにかして、はぐらかす事にする事を決めた。


「ん?」


 スマホから着信音がなってる事に気が付き、俺は電話に出た。



『高橋、今いいか?』

『監督? どうしたんですか? 珍しいですね、俺に電話してくるなんて』

『ああ、実は以前ミーティングで話した、プロ選手との交流イベントについてなんだが、応募の結果、お前を含めた3人が交流イベントへ参加出来ることが決まったんだ』

『え、本当ですか!?』


 まさか、当たらないと思ってた募集に当たるなんて思いもしなかった!それも3人もだなんて、うちの部活めっちゃついてるな!


『それで、お前の参加意思を聞きたくてな』

『是非、行かせてください! どんな用事があろうとも必ず行きます!』

『そうか。そう言ってくれると俺も嬉しい。お前には期待してるからな』

『はい! それで、交流イベントはいつなんですか?』

『あぁ、来週の土曜日だ』


 ……え?


『土曜日、ですか?』

『そうだが、何か問題があったか?』

『いえ、そう言うわけではありません』

『そうか。俺からの連絡は以上だ。今日はマークが厳しく中々思うようにプレイ出来なかったと思う。だが、最初に得点を入れたプレイは良かったぞ。これからも練習を励め』

『ありがとうございます!』


 そうして、監督からの電話は終わったのだが……。


「なんで、真昼とのデートと被るんだよー!」


 ヤバい、どうしよう。監督には絶対に参加すると言っちゃったし、真昼にも約束忘れないでってさっき言われたばっかりじゃないか!


 なんで先にいつやるのかを聞かなかったのか、ほんの数分前の俺を怒りたい。


(でも、約束してしまった手前、どうすれば……)


 今回のイベントは正直、次いつあるのか分からないくらい貴重な体験になると思う。逆に真昼とのデートはデートで、次行けるのがいつになるのか分からない。なぜなら来週を逃せば、文化祭の準備とかで忙しくなるし、11月以降は新人戦に向けた練習もあるだろうから時間が怪しい。


 現状、八方塞がりと言っていいだろう。どうすれば、この局面を切り抜けられる?考えろ、未来のレギュラー!!


(葉桜なら、こういったときどうするんだ?)


 そこでふと、脳裏によぎったのは葉桜だった。あいつはそつなく器用にこなす。こういう場面でも、あいつなら切り抜けられる助言が貰えるかも……。


「いや、あいつの事だ、きっと俺の事をため息つきながらバカとか言うんだろうな……」


 一度、聞いてみた場合を想像してみたのだが、『バカだと思ったが今回のはいつにもましてバカだな。いいか? 既に約束をしているなら、普通その後に入る予定はないんだよ』とか言い出しかねないと思った。


 ……いや、待てよ? そういえば、既に似たことを聞いたことがあったな。確かあの時は──。



── とある日の中休み ──



「なあ、葉桜。1つ聞いてもいいか?」

「お前が俺に相談なんて珍しいな。それで、要件は?」

「同じ日に予定が重なった場合、お前ならどうするかなって」

「……お前、ついにやらかしたのか?」

「いや、やらかしてないから! ただ、お前ってそつなくこなせるから、そういう場面になったらどうするのかなって」


「そもそも、そうならないように徹底するんだが……。まぁこれはお前の望む答えじゃないか」


「俺の場合は、優先順位を付ける」

「優先順位?」

「ドラマとかでよく、家族や恋人とかを人質にされてどっちかを選べって言われたら、大体の主人公は選べなくて苦悩するだろう?」

「そうだな」


「それは当り前のことだ。何せ両方大切なんだからな。……だけど、この世に同じだけ大切なんてものは存在しないんだ」

「?」


「分かってない顔だな。いいか? どんなに大切でもそこには差があるんだよ。片方は大切度100として、もう片方は大切度99.9とか、そんな感じだ」

「……つまり、どんな人や物でも、比べたら必ず優劣はあるって言いたいのか?」


「そうだ。トロッコ問題なんて、まさにそれを表している。よく第3の選択肢とか言う奴がいるが、そんなのは問題の趣旨をはき違えてるバカだ。人は二者択一の選択を迫られたとき、どっちかを必ず()()するんだ」


「稀に恋愛ごとで、日本でも正妻と内縁の妻みたいな()()()()()がいるらしいが、そんなのは本当に稀だ。人はそこまで器用じゃない」

「なんだか、哲学みたいな話だな。……それでお前にとっての優先順位って何なんだ?」


「細かい内訳は抜きにして、大雑把に言うなら、……家族、親友、自分、小説、友人、その他ってところが、昔の俺が決めた優先順位だ。だから俺はそれに則って約束をしている」

「俺たちは小説よりも優先順位が低いのか……。ん、昔? 今は違うのか?」

「あぁ。今はまだ未定だが、いつか家族よりも優先にしたいと言える人がいる。少なくとも現時点では俺よりも優先度が高いな」

「それって、もしかして好きなやつか!? 誰だよ!」

「誰が言うか」

「いいじゃないか──」



── 現在 ──



 思い出した。そういえばそんな話をしていたなと、俺は葉桜に質問をした過去の俺を褒めたたえたい。だけど、どんなものにも優劣がある……か。なら、俺にとっての優劣はなんなんだろう?


 真昼の約束とサッカーイベント、現在俺が迫られている選択はこの2つだ。普通に考えたら、幼馴染の真昼との約束の方が大切だと思うんだけど、今回に限ってはサッカーイベントも同じくらい大切だと思える。これを逃せば次が無いのは誰にでもわかる話だ。だからこそ、俺の天秤は揺れている。


(ダメだ……、決められない)


 ここで、ふと脳裏に悪魔がささやいた。


(いつでもできる約束とその日限定のイベントで比べたら、明らかに今回のプロ選手との交流イベントだよな……)


 そう考えてしまったが、直ぐに頭を振り、頭から悪魔を吹き飛ばす。


「まぁまだ時間はあるし、ゆっくり考えていくしかないか……」


 真昼のあの嬉しそうな顔を思い出す。あんな表情をする真昼を悲しませたくないと思いつつも、どうしてもイベントに惹かれてしまってる俺がいる。だからこうして、結局問題を先送りにしているんだろうな。


 そんな自分が嫌になるが、まぁ明日の俺が解決してくれるだろうと思い、俺は眠気が来たので、意識を手放した。



 この時、気づくべきだったんだ。葉桜は優先順位をしっかりと決めていたのにも関わらず、俺は二者択一でしか考えていなかったことに。この時、葉桜と同じように優先順位を決めていれば結果は……。

高橋は目の付きどころはいいですが、やはり若干抜けてる部分がありますね

これがどう今後に左右するのか……


また、次から本章最後のエピソードになります。

少し長めの話数になりますが、楽しみにしてください。

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