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結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる  作者: 風間悟
第1章:負け確状態から始まる青年の恋物語
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高校生の日常1④:腐女子と運命の出会い

 あの俺たちに向ける生暖かい視線を感じた日から数日後、俺はいつもの日課で朝から色んなクラスに行っては、そこにいる生徒に話かけ、情報収集を行っている。何事にもやはり情報こそが命だと俺は思う。


 誰が誰と付き合ったのか、いつどこであの幼馴染たちが痴話喧嘩が発生したのかを知るのは俺にとっての最重要任務だ。


 なぜなら俺の知らないところでイベントが発生していて、いつの間にかゴールインしてましたなんて、……そんな冗談で済まないことにならないために俺はこの日も情報を集める。


(言ってることはかっこいいが、やってることはただのストーカー紛いな分、質が悪いな……)


「ん?」


 自分の行いについて考察し苦笑していると、4組の教室から1人の少女がまるで逃げるような勢いで出ていくのを目撃した。


 ホームルームまで大体30分ほど余裕が存在する。手洗いに行くにしては急ぎ過ぎだし、部活の朝練だとしても今からはありえない。遅刻という線もあるけど、制服だったのでどうも部活とは思えない。


(あの逃げるような急ぎよう、……まさか、いじめを受けてるとかか?)


 あれほど切羽詰まったかのような勢いで飛びだすには、それ相応の理由が必要だ。部活などの線を除外し、それ以外で該当する内容を考えた際、真っ先に浮かんだのがいじめだ。


 どの学校にも存在する忌むべき鬼畜の所業。理由なんて所詮最初の動機程度、結局は人を傷つけるだけ傷つけることに喜びを感じ、壊れたら物を捨てるかのごとく存在を忘れる。あれこそ人が持つ醜い悪意の1つだろう。


 だからこそ、もしそんなことが起きているなら、せめて俺だけは味方でありたい。過去の俺は親友がいたからこそ、孤独じゃなかったのだから……。


(まずは、4組の様子を見るか)


 そう思い、俺は4組へ足を運び、ざっと周りを見渡した。だけど、クラスの空気は誰かをいじめてるような陰湿な空気はなかった。それにざっと机を見てみたが、落書き等も見当たらないので、教室にいた一人の男に聞いてみることにした。


「なぁ、少しいいか? さっき急いで教室から出ていく女子生徒を見たんだけど、誰か知らないか?」

「なんだ? あぁ如月さんか……。確かになんか、急いで教室を出たな。なんか早く見せないとみたいなことを呟いていたぞ」

「そっか。サンキュー」


 どうやら、いじめという線は俺の勘違いなようだ。だが、早く見せないと……か。何やら俺の直観が面白そうなことが起きると告げている。



***



「と、言うことが今朝あってだな……。如月さんって誰?」


 その日の昼、俺はいつものメンバーたちと昼飯を食べながら、朝の出来事について話していた。如月さん。この1か月、俺の情報収集に一度も出なかった少女の名前だ。なぜだか分からないが無性に気になる……。


「いやぁ、ついに捕捉されちゃったかぁー」

「誰なんだい? その如月さんって女子生徒は? 俺も知らないけど……」


 高橋も頷くので、そんなに有名な生徒ではないようだ。だけど女子たちは知っていると……。


「彼女の名前は如月姫香きさらぎひめかさん。……漫画研究同好会の方よ」

「「「漫画研究同好会?」」」


 3人全員でハモった。なんか悔しい。またしても生暖かい視線を感じる。


「そうよ。部活動としての活動はないけど、同好会として設立されているわ。どんな活動をしてるかまでは分からないけどね……」

「ふーん、どうして藤原さんたちは知ってるんだ?」


 そう聞くと、明らかに2人が動揺し、『じょ、女子の情報網は凄いのよ!』とまるではぐらかすように言うので、俺の直観は正しいと確信した。


「でも、漫画かぁ……。真夜はジャンルは違えど同じ作家としてはどう思うんだい?」

「簡単に言えば、小説は文字で動きや感情、心理を表現するが、漫画は絵によってそれを表現する。似てるようで違うこの差にこそ、小説と漫画の良さが込められてると俺は思ってる」

「めっちゃ、かっこいいこと言うな」


 やめてくれ、照れるだろ。


「だけど、漫画研究同好会……ね。それは是が非でも見てみたいな」

「ど、どうしてかしら?」

「そうだよ、葉桜君。なんでそんなに見たいの?」


 なぜかって?そんなの決まってるだろ。


「俺の直観が言ってるんだよ。絶対に楽しいことがあるって」


 それを聞いた2人は急に青ざめ、『ど、どうしよみーちゃん。あれがバレちゃう』やら、『だ、大丈夫だよ、まひる。私たちでもどこで活動してるのか分からないんだから』とヒソヒソと話している。


(丸聞こえなんだよな……)



***



 その日の放課後、廊下を歩きながら、件の漫画研究同好会がどこに存在するのか探している。藤原さんたちが知っている時点で同好会自体は以前から存在してるのは分かる。そして、そこに在籍しているメンバーは女子のみなんだろうな……。


 これは同好会を知ってる人たちが女子生徒だけだったためだ。放課後になるまでに何人かに聞いてみたが、男子は誰も知らず、女子はきょどりながら知らないと言っていた。


「とは言え、めぼしい所には無かったし……、これは先生に聞いたほうが早そうだな」


 先生なら部活申請以外にも同好会申請も受けているはずだ。もしそこでも知らないと言われたら、逆に情報の秘匿性から面白みが増すんだけどな。


 方針を決めた俺は職員室に向かうため、廊下の角を曲がったタイミングで1人の生徒とぶつかってしまった。


「きゃ!」

「おっと……」


「す、すまない。大丈夫か?」

「いえ、私も前を見ず歩いてたのがいけないので……」


(おや、この人は如月さんじゃないか)


「すまない、俺とぶつかったせいで物が散らばったな、俺も拾うよ」


 そう伝え、俺は散らばった物を拾おうとしたのだが……。


──だ、だめ!!


 そう強く言われてしまい、彼女は、『あ、ごめんなさい。でも本当に大丈夫だから』と言って、急いで散らばった物を集め、走って何処かに行ってしまった。


「なんか、やっちまったか?」


 流石にここまで拒絶されるとは思わなかった。今度改めて謝るかと考え、今日は職員室に行かずに帰ろうとした所、足元に何かがぶつかった。


「如月さんの拾い忘れか?」


 俺は少し大きめの茶封筒を拾い、申し訳ないと思いながらも中身を少し覗いてみた。


「……こ、これは!?」



*** とある一室 ***


「あれ?」

「どうしたんですか? 同志如月」

「な、無い! 書きかけの原稿がないよ……。も、もしかしてさっき彼にぶつかった時に……」

「!? それは……、マズいね」



***



 翌朝、日課の情報収集をせず、4組の前で如月さんが来るのを待っていた。


「よもや、こんな身近に特急呪物が存在するとはな……。だが、同じ作家として、認めないと言えないのが実情だな」


 いや、描くことについてとやかく言うつもりはない。それは個人の正当な権利でもあるんだから。


(でもなぁ……、なんで題材がコレなんだよ)


 だが、薄々勘付いていた視線の理由はこれではっきりした。後は俺の気持ち次第なところではあるが……。いや、俺の気持ちはもう決まってるな。


(主要キャラについては置いといても、こんな面白い事に足を踏み入れない男はいないだろ)


 覚悟を決めた俺は如月さんが来るのを待ち、少し経ってから、少し青ざめてる如月さんが4組の方にやって来た。


「やあ、如月さん。待ってたよ」

「!? は、葉桜君……。あの、その……」

「分かっている。先ずはコレを返そう」


 バッグから茶封筒を取り出し、如月さんに返却する。如月さんは拍子抜けた表情をしつつも、『ありがとう』と言い、受け取った。


「だが、驚いた。漫画研究同好会では、それを描いてるのか?」

「み、見たの!?」

「すまないが、少し覗いてしまった。まさか、俺たち3()()()()()にしたBL漫画を描いてるとは思わなかったよ」


 俺がそう言うと、如月さんはこの世の終わりかのような表情になった。まぁ無理もないか。当事者に自分たちを題材にしたBL本を描いてるなんてバレたんだからな。


 だが安心しろ、俺はその辺の男とは違う。


「安心してくれ、俺はそれを咎めるつもりはない。むしろ協力させてくれないか?」

「え、え!? ど、どうして?」


 如月は信じられないといった眼差しで俺を見てくる。


「俺が小説を書いてるのは多分知ってるよな。同じ作家として協力したいんだ。如月さん、セリフ回しやストーリー構成に悩んでるんじゃないか?」


 ざっと見た感じ、絵のレベルは高い。だけど、場面毎のセリフや構成についてはまだ粗い。恐らくイメージは出来てるが、それを表現出来るだけの構成力が足りてないんだな。


「そ、そう! そうなの! やりたいことのイメージはあるんだけど、どうしてもそれが描ききれなくて……」

「そこを、俺が補完したいんだ。と言ってもガッツリ監修というより、アドバイス程度にするつもりだが、それでもかなり捗るはずだ」


 更に追い打ちをかけるべく悪魔の手札を切る。


「それに、当事者公認となれば、より自由に描けるとは思わないか? あぁ、あの2人については気にするな。俺が許す」


 ある意味で公式公認。コレほど魅力的で悪魔的な劇薬は存在しないだろうな。如月さんは、『ふふふ、こ、公認……』と呟いてる。少し怖い。


「ええ、なら是非お願いしたいです! 実際に小説を書いてる人からアドバイスがもらえるなんて、滅多にないことですし!」

「あぁ、これから俺たちは同志だ。宜しくな」


 こうして、現役ラノベ小説家と未来の売れっ子漫画家が運命の出会いを果たした。

 なお、彼女とはそれ以降、戦友ともとして交流を持つことになる。

ここまで読んでもらいありがとうございます!


この話必要か?と思われる方もいるかと思いますが、正直そこまで必要じゃないというのが本音です。だけど、書きたかったので許して下さい。


一応今後のストーリーで、コミケなども出そうかと思っていますので、まぁそのための下準備と思っていただければ幸いです。

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