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結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる  作者: 風間悟
第1章:負け確状態から始まる青年の恋物語
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素顔と曼珠沙華③:幼馴染と友達に見せる笑顔

「真夜、おそーい! 待ちくたびれたよ」

「それは藤原さん含めて言ってるのか?」

「真夜だけだよ。真昼ちゃんなら遅くなっても許しちゃうから」 

「理不尽だろ……」

「あははは……」


 昼過ぎ、曼珠沙華が咲いてるエリアを一通り見て回ったため俺たちは予め決めていたフードエリアに合流した。


 雫の方は腹が減って我慢できなかったのか、牛串焼きを買っていたようで、裕也に食べさせて貰っていた。こういうところのって意外と値が張るんだよな。お祭りマジックだ。


「まぁいいさ。藤原さん、俺たちも何か食べよう。何がいい? ぱっと見、雫が食べてる牛串焼きと角煮まんじゅうの所がそんなに並んでないようだな」

「そうね……、なら角煮まんじゅうにしようかな。葉桜君は?」

「俺も角煮まんじゅうにするつもりだ」


 買いに行くから待っててと言おうとしたのだが、藤原さんが、『なら一緒に並びましょ』と言ってくれたので、ここは従うことにした。


「葉桜君、待っててって言おうとしたでしょ。ふふふ、ダメよ。こういうのは並んで買うから意味あるんだから」


 どうやら俺の考えは読まれてたようだ。けどまぁ確かに祭りとかは並ぶからこそ、食べた時、美味しく感じる気がする。


 並んでからそこまで時間もかからず買えたので、俺たちは裕也たちの所に急いで戻り、立ちながら各々買った物を食べ始めた。なお雫は裕也と一緒に牛串焼きの他に唐揚げと団子をいつの間にか戦利品として入手しており、ご満悦だ。


「ほんと、雫は食べるのが好きだよね。いつまでも見ていられるよ」

「もぐもぐ……、えへへ、もっと見ていいんだよぉ!」


 バカップルはどこにいてもバカップルだと思い知らされるな。もし、高橋と藤原さんが付き合うことになったらこうなるのかな……。ヤバい想像するだけで泣けてくる。


 チラッと、藤原さんの方を見てみれば、物凄く羨ましそうに眺めているので、恐らく高橋とあぁいうのをやりたかったんだろうなと、容易に想像出来る。


「藤原さん、今あいつら見て羨ましいと思っただろ」

「ふぇ!? えと、まぁ、うん。健斗は恥ずかしがるから、やってくれないけど、やっぱり憧れるなぁって」


「真昼ちゃんの幼馴染の話だね! 真夜からは学校にいるときの話は聞いてるけど、私生活については知らないから気になるー」


 雫がそう伝えると、ジト目になった藤原さんは俺に高橋の事で問いかけてきた。


「……葉桜君、何て説明したの?」

「……色々バカということだけ」


 なんか最近、藤原さんからのジト目率が上がった気がする。それだけ気心しれた仲になれたと喜ぶべきか?


「……まぁ、それは否定しないわ。えとね、健斗は──」


 藤原さんと雫は高橋の話で盛り上がり始めたので、俺は裕也と今日の惚気話を聞くことにした。いつか役に立つと信じているぞ。



***



 巾着田で昼飯を食べつつ色々な話をし、俺たちは池袋に戻ってきた。既に時間帯は夕方になっている。


「はぁ、楽しかったー」

「ええ、とても楽しかったわ! 雫ちゃんありがとう。あんなに綺麗だなんて思いもしなかったわ。それと葉桜君も、誘ってくれてありがとう!」


「それは雫に言ってくれ。俺はただ、雫の提案に乗っただけだからな」

「そうだよ、藤原さん。真夜より雫を褒めて欲しい。真夜の場合、藤原さんに素顔を見せることが出来た。それが何よりの報酬だからね」


「私に素顔を見せた事が報酬? どういう事、葉桜君?」

「あー、なんというか、やっぱり友達にしさ、素顔を見せないってなんか嫌なんだよな……。と言っても今はまだ藤原さんだけで、そのうち雄太たちにも見せるつもりはいるけども」

「ふふ、そっか。じゃあ今はまだ学校じゃ私だけがあなたの素顔を知ってることになるのね」

「そうなるな」


 あ、ある意味秘密を共有してることになるのか。これはこれで青春でもあるし、特別感があっていいな。裕也たちのおせっかいではあったが、結果的には感謝しかない。


「ふっふっふっふぅ……。真昼ちゃんとも友達になれたし、私は大満足なのだ!」

「よかったね、雫」

「なんだかんだ、一番楽しんでたのは雫かもな」


「真昼ちゃん達は来月末に文化祭なんだよね?」

「ええ、そうよ。そろそろ出し物を決めないとだわ……」

「文化祭か……、11月だっけか。お前らのところにも行くから覚悟しておけよ?」


 そう言うと裕也たちは少し、困惑した顔になる。まぁ理由は分かるが……


「真夜は来ない方がいいと思うぞ……」

「そうだね……。真夜は来ない方がいいと私も思うよ」

「俺はもう気にしてないんだけどな」


 藤原さんは『どういうこと?』と言っているが、その話はまた今度だ。話すならみんながいるときに話したいしな。


 少し話が暗くなってしまったが、俺たちはここで別れることになったのだが、最後に雫に呼ばれたので、少し藤原さんに待ってもらうことにした。


「どうした、雫。何か忘れ物か?」

「違うよ、真夜。……頑張ってね。多分真昼ちゃん、自分じゃ気が付いてないけど、真夜の事、意識してると思うから」


 その言葉を聞いて、ドキッとしてしまった。藤原さんが俺の事が気になってるだと?そんな素振り見せていないが……。そんな俺の心中を察したのか、普段の可愛い笑顔で雫は俺に伝える。


「女の勘ってやつだよ! ふふふ、私応援してるからね!」

「分かった。雫の助言ありがたく受け取っておく」


 そう言って、俺たちは今度こそ別れた。藤原さんからは『何かあったの?』と聞かれたが、『秘密』と答えると、『気になる―』と返してくるので、俺は笑ってごまかした。



***



「今日は本当にありがとう、葉桜君! 健斗が来れなったのは残念だったけど、それを感じないくらい楽しかった。それに……、ようやく葉桜君の素顔も見ることができたしね」

「俺も、今日はいつもより楽しかったよ。まぁ素顔については今日の特典と考えてくれ」


「……もう見せてくれないの?」


 これを素で言っているなら、藤原さんは悪女だな。そんなこと言われて喜ばない男はいないだろう。


「いや、学校じゃ見せるつもりはないけど、そのうちまた見せるかもな」

「そっか……。ふふふ、じゃあその時になったらまた見せてもらおうかしら」

「ああ、楽しみにしてくれ……」


「そういえば、近いうちに高橋は練習試合があるんだったよな。藤原さんは見に行くのか?」

「勿論よ。健斗のかっこいいところ見なくちゃ!」


 そう笑顔で藤原さんは答える。……この1か月ずっと見てきたから分かってきたのだが、藤原さんは高橋にしか見せない、笑顔が存在する。それもとびっきりの親愛がこもった笑顔だ。


(いつか俺にも向けられたらな……)


「そっか。俺も時間があったら見に行こうと思う」

「ええ、その時は一緒に応援しましょう」


 そう締めくくり、俺たちはそれぞれの帰り道で別れようとしたのだが、藤原さんに呼び止められた。


「葉桜君の素顔を見て、()()って言ったけど……、もう一つ言い忘れてたの」



──とてもカッコよかったわ!



 そう()()に向ける笑顔で言い、藤原さんは走って帰って行った……。

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