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結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる  作者: 風間悟
第1章:負け確状態から始まる青年の恋物語
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サイン会①:青年は親友らと語らう

 藤原さんと感想会を行った週の土曜日、俺は親友らと会うために一度、埼玉の実家へ約2ヶ月ぶり戻ってきた。


「ただいまー」

「おかえりなさい、お兄ちゃん!!」


 そう言って、勢いよく俺に抱きついて来たのはまだ5歳の妹、葉桜雪はざくらゆきだ。雪を撫でつつ、雪の背が若干伸びてることに気が付いた。


「よう、雪。少し見ない間にまた背が伸びたな。可愛いぞぉ」

「ほんと!? えへへへ、お兄ちゃんに褒められたぁ」


(うーん、俺の妹はいつ見ても天使だなぁ)


 愛しの妹と話していると、奥から母さんがおかえり真夜と言ってきたので、俺もただいまと返す。どうやら親父は今、携わってる仕事が炎上しているらしく、今日も仕事らしい。


 とりあえず立ち話もあれだから、雪と一緒にソファーのあるリビングに移動し座った。


「親父は仕事か。……最近忙しいんだって?」

「そうよ。あんたが向こうに行ってる間、お父さん1人で寂しくお酒飲んでるんだからね」

「飲めない俺に言われてもな。母さんが付き合ってあげればいいじゃないか」

「あんた、隠れてお父さんと飲んだの、お母さん知ってるのよ?」

「……何のことだ?」


 ま、まさかバレてるとは……。親父め、15の誕生日に祝だとか言って飲ませたこと、母さんに話したな?


「それに、お母さんは雪と一緒に寝てるんだから無理よ」

「ママと一緒に寝るの、ゆき好きー!」

「ふふふ、ママも好きよ」


 そんな微笑ましい会話をしてる中、母さんから学校生活について聞いてきた。


「ところで、真夜は向こうでの生活はどうなの? 友達や彼女は出来た?」

「ま、気になるよな。大丈夫、友達も出来たし、ちゃんと楽しんでるよ。それに、好きな人もできたから……」

「そう。好きな人が出来たのは良いことね! それで、どんな娘なの?」


「……結婚の約束をした幼馴染に恋してるクラスの女の子」

「はぁぁ?」

「お兄ちゃん、結婚する人を好きになったの??」


 いや母さん、分かるけども、そんな顔をしないでくれ。そして愛しの妹よ、今その純粋な眼差しで事実を言わないでくれ。……俺に効く。


「あんた、まさかお付き合いしてる人から奪うだなんて言わないでしょうね」


「ち、違う、断じでそんな事はしない! というより、まだ彼女らは付き合ってないから、大丈夫だ!」

「その言い方からして、お互い好きなのね? はぁ、……何が大丈夫だ、なのよ。本当に無理やり奪うつもりはないのよね?」


 母さんからそう問われたので、『そんなつもりはない!』と即答する。それを聞き母さんはそれ以上追及するのは辞めて、『後悔だけはしないように』とだけ言ってくれた。



***



「と言うことが、家であってな。母さんに飽きられるわ、雪には目をキラキラしながら修羅場だーなんて言うから、大変だったよ」

「あははは、真夜おもしーい!」


 そして俺は今、実家を後にし裕也の家で雫らと再開した後、さっきまでの家族とのやり取りについて()()を外した状態で話していた。その間、雫は裕也の膝の上に横向きで座り、腕を裕也の首に回した状態で俺の話を聞いていた。


(俺がいない2ヶ月で随分とまぁ、イチャラブ度合いが強くなったもので……)


「お前ら、普段からそんな感じか? 俺がいた時より悪化してないか?」

「あー、なんだろう。真夜というストッパーがいなくなった事で、歯止めが効かなくなった、的な? 後は学校の友人関係を整理したからってのもあるな」


「……そうか。それは何か悪いことをしたな。お前らまでそんなことしなくて良かったのに」

「いやよ! あんな風に真夜を除け者にする奴らなんか、私たちの方から願い下げよ! 真夜は人助けしただけで何も悪いことしてないのに!!」

「理由はどうあれ、暴力沙汰を起こしたのは事実だからな」


 高校1年になって直ぐのGW、俺は人を助けた事がある。命に関わることでもあったので、助けたことに後悔はないが、その1件は殺傷事件となり、俺は顔を負傷。


 少しの間、入院して退院し学校に復帰した頃にはもう、暴力を起こし、かつ傷を負ったということで、一部を除いた学校の生徒からは危険な奴というレッテルを貼られた。


 結果だけ見ればその通りなのだが、大多数の人は理由なんてどうでもよく、何をしたのかの結果だけで人を判断するらしい。だからこそ俺はもう安易に人を信用することを辞めた。


「もう終わった事だ。俺は気にしていないし、今でもあの行動は正しいと思ってる。それに、俺にはお前たちがいるからな」


 そう言うと雫は、少し怒り口調で、『そういうことじゃないよ……』と言う。でもこれは俺の紛れもない本音なんだから許してくれよ。


「ま、辛気臭い話はこれくらいにして、今は真夜の恋愛事情に花を咲かせようじゃないか。何せ、男から女の子を奪おうとしてるんだからな」

「言い方よ。まぁ事実だが」

「ぶぅ。……まぁでもそうね。ねぇねぇその幼馴染の人たちってどんな感じなの?」

「そうだな。まず、藤原さんは──」


 俺は親友らに彼女らどんな人なのかを話した。藤原さんの場合、明るく活発的で幼馴染の前ではコロコロ感情が変化することや、俺と趣味趣向がかなり近く、話していていつまでも飽きない。


 逆に高橋の場合は、良くも悪くも自分の感情優先。藤原さんの事が好きなのに変に依存してるから、いつも軽口を言って彼女を困らせる。あまりにも子供すぎるやり方に、基本バカなんだよあいつはと言うと、裕也はちょっと苦笑いをしていた。


(昔のお前も雫の前で中々本心を言えなかったもんな)


「この3週間で分かったことは、あいつの藤原さんに対する想いは本物なんだろうとは思う。その表現方法についてはかなり歪だけどな」

「嫌も嫌も好きなうちって言うくらいだもんな」

「でも、それだけお互い想ってるとなると、中々大変だねー」

「少なくとも、今年中は無理だと思ってる。藤原さんを遊びに誘うとどうしても高橋が着いてくる可能性が高くて、中々前に進めない」


 そんな事を呟くと、雫が『そうだ!』と何か閃いたようだった。


「その高橋君ってさ、聞いた限りじゃ直感的に楽しめるような遊びが好きなんでしょ?」

「そうだな。藤原さんから聞いた話だと、ゲーセンやらボーリングやら、こう騒げる所が好きだな」

「ならさ、今年も行く予定の曼珠沙華まんじゅしゃげ──彼岸花ひがんばなを見に、一緒に誘うよ! 私、藤原さんと話してみたいし」


 雫からそんな提案を受けた俺は少し思案し、確かにそれなら自然に誘えるだろうし、高橋が来ない可能性が高いと考えた。あの一面赤色の絨毯を見たら喜ぶだろうなぁ。


「それは盲点だったな。そっか、そういう方面で誘う手があったか。藤原さんはそういうの好きそうだし、アリだな」

「ふふふ、真夜が見落とすなんて珍しいよね! 今、藤原さんが喜ぶ顔でも妄想したんじゃない?」

「真夜の意外な一面だな。恋は盲目っていうし、真夜でも視野が狭くなってたってことだろ」


(こいつら好き勝手に……、だけどまぁ、こいつらがいて本当に幸せだ)


 そうして俺たちはどこに出かけるこもなく、ただただ昔と変わらず3人で話す時間を楽しんでいった。



***



「もう帰るのか?」

「えー、もっと話そうよー」

「悪いな。いつまでもいる訳にはいかないし、飯の準備もある」


 時間は午後の4時を回っており、流石に東京に戻る時間も考えたら、ここいらが潮時だと伝え、雫からは『絶対に誘ってねー』と言われつつ、俺は1人、東京にある家に帰って行った。


 最寄りの駅を降り、スーパーにでも寄って行こうとしたところ、俺の前を歩いている()()()()()な少女を見かけた。


 その少女は白色のロングスカートに、ピンク色のアウターを纏った少し背伸びしたような大人っぽい服装で、黒色のブーツを履いていた。そして、まるでトレードマークかのように艶のある長い髪に、以前も見た同じ()()()()()()()を被っていた。


(藤原さん……だよな? 大人な恰好が似合い過ぎて、見とれたぞ)


 後ろ姿だけでも分かる。俺の意中の女の子。……見かけたのは何故か1人で歩いている藤原さんで、俺は気になり声をかけてみた。


「え? ……葉桜君?」



 そう振り向いた藤原さんは少し元気がない様子だった……。

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