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結婚を約束した幼馴染じゃなく俺が君を幸せにしてみせる  作者: 風間悟
第1章:負け確状態から始まる青年の恋物語
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屋上とアドバイス①:幼馴染は青年に探りを入れる

「なぁ、真夜。ここ最近、藤原さんとの仲はどうなんだ?」

「ん? 2週間程度しか経ってないけど、まぁぼちぼちといったところだな。ひとまず藤原さんの男友達という地位に入ることには成功したよ」


 1、2限の授業の中休み、俺と雄太はここ最近の話をしていた。よくよく考えてみるとまだ2週間しか経ってないんだよな。それで藤原さんの友達枠に入れたと考えると、中々の速度だとは思う。


「そっか……、順調そうで何よりだ。俺もお前と友達になってから、高橋とも話すようになったけど、よくもまぁあの空間に馴染めたなと感心するよ。遠目で見るのと近くで見るのとじゃ全然違うから」

「そうだな。俺も未だにあの空間にいると、甘い精神攻撃を受けるんだ。だから、その感想自体は正常だから安心しろ」


 現在、チャンスが巡ってくるのを待ちの構えでいる俺にとって、今やれることは藤原さんと少しでも話す機会を作ることと、高橋の隙となる要因が何になるかの調査しかない。


(もう少し手札があれば、戦略も広がるんだけどなぁ……)


 そんな事を考えつつ、雄太と談笑していると珍しく高橋の方から俺の方にやって来た。


「ん? どうした高橋、お前が俺のところに来るなんて珍しいな。1限の授業については藤原さんがノートまとめてるだろうし、そっちを頼れよな」

「いや、なんで俺が授業受けてないみたいな雰囲気で言うんだよ! 後半だけ聞いていなかっただけだ。いや、違くて、ちょっと葉桜に聞きたいことがあるんだ。昼か放課後どっちか時間くれないか?」


 高橋が俺に聞きたいこと? それこそ珍しいな。と俺は思ったが、それだけ高橋からしたら重要な事なんだろうと考え、ひとまず了承することにした。


「それこそ、珍しいな。ああ、いいぞ。なら今日の放課後はどうだ? 明日は藤原さんと、この前俺が書いた小説に対する感想会をやるから無理なんだ」

「ああ、じゃあそれで。……いや、待て! 感想会!? 俺聞いてないんだけど! というか、いつの間にそんな約束をしてたんだよ!!」

「昨日の夜、藤原さんとLIMEでやり取りをしていてな。その時に感想会をいつやるか決めておいたんだよ。んで、流石に相談した翌日にするのも何か悪いなと思って、明日にしてもらったんだ」


 はい。ちゃっかりあの日の帰った後、そういった話を既に済ませてました。藤原さんも早く語りたいのか、物凄い乗り気だったしな。


「多分だけど、今日の昼にでも藤原さんからそんな話があると思うぞ。因みに高橋の参加は認めないからな。読んでない人間が他人の感想を聞くと、後から読んだときに変な先入観が入る恐れがあるからな」


 それを伝えると高橋は『直ぐに確認する!』と言って藤原さんに聞きに行った。全く忙しい奴だ。まぁ気持ちは分からなくはないな。


 何故か? 決まっている。好きな人に関する話が自分の知らないところで進展してましたなんて、……俺だってそんな話、聞きたくない。


 だが悪いが、今回の件についてお前は関与出来ない。と言うか関与させない。


(お前がちゃんと俺の書いた小説を読んでたら話は別なんだけどな……、ちゃんと道は用意してるんだぞ?)


「あははは、真夜は鬼畜だなぁ。高橋が苦手な小説を読まない限り、この手の話に参加すら出来ないんだからさ」

「参加したいなら読めばいいだけさ。それに、俺の作品を読めば恐らくそのまま高橋がシュートして、それで試合終了だ」

「それ、かなり危うい綱渡りじゃないか? 藤原さんのこと好きなくせに、恋敵に塩を送るなんてさ」

「忘れたか? 俺は藤原さんが幸せになるなら、相手は高橋でもいいって言ったはずだぜ? 要は何を優先にしているかだ」


 俺がそう答えると、雄太は『そんなこと言ってたな』と納得したようだ。それと同時に数学の先生が来たので俺たちは話を打ち切り、勉学に励んでいった。


 因みに高橋は藤原さんに突撃し、俺と同じ事を言われたようで、意気消沈していた。



***



 放課後、俺は高橋と共に屋上にいた。聞いたところによると、一部の屋上に続くドアの鍵が壊れているようで、隠れスポットとして存在を知っている一部の生徒によって利用されているらしい。


 うーん、素晴らしい。こういう普段出来ない事をやるのってまさに青春って感じだ。いいネタの提供ありがとうございます。……それにしても今日はいい風が吹く。


「それで、話ってなんだ? 女の子からなら兎も角、流石に男からの告白はノーサンキューだぞ。そっちの世界に行くにはお前はまだ早い」

「ちげぇよ! と言うかなんで俺がそっちの気があると思ったんだよ……。じゃなくて、聞きたいのは昨日の事についてだ」


 昨日? ……なるほど、高橋は俺と藤原さんが2人でいたところを何処からか偶然見かけたってところか。だから、俺たちの関係について探りに来たんだな?


(俺もまだまだだな……。ナンパだけじゃなく、高橋が来るかもしれないという可能性も考慮出来ないとは)


 部活後はそのまま遊ぶと聞いてたから、ショッピングモールに遊びに行くと言う可能性を外していたのは痛手だったと反省する。次からは同じ轍を踏まない事を決意し、高橋からの質問をどうのらりくらり躱すか考える事にした。


「なんだ、高橋もショッピングモールにいたのか……。だったら声をかけてくれたら良かったのに」

「いや、昨日は部活終わりに友達とショッピングモールにあるゲーセンに行ってたんだ。お前たちを見かけたのは帰る前だったんだよ」


 なるほど、そういう経緯かと納得する。


「それで俺たちを見かけて、どんな関係なのかって探りに来たってところか。案外可愛いところがあるんだな」


 高橋は『はぐらかすな!』と言い、続けて『まさか付き合っているのか?』と尋ねてきたので、これには流石の俺も苦笑した。


「それこそまさかだ……。2週間の付き合いとは言え、お前らの夫婦っぷりを間近で見てきたんだぞ? なんで告白が出来ると思うんだ……」


 わざとらしい素振りを見せて俺はそう答える。


「そもそも俺と藤原さんは友達だぞ? 友達なら遊びに行くのは普通さ。それとも異性の友達と遊ぶのはダメだって、お前藤原さんに言うつもりか? 付き合ってもないのにそれはただの束縛だぞ」


 事実だけを述べられるのって、相手からすると対応し辛いんだよな。だって反論の余地がないからな。それが分かってるのか、高橋はう、あ、と狼狽えるだけで答えることが出来ないでいる。


(そもそも、言葉遊びで作家に勝てると思うなよ?)


「というより、それ藤原さんが聞いたら怒るからな? 『健斗、またそうやって迷惑をかける! 私と葉桜君はただの友達って何度も言ってるじゃない』ってさ」

「お前……、なんで真昼に対する解像度が高いんだよ。マジで真昼なら言いかねないぞ」


 これでも人と話したりするのは好きだからな。まぁお前と藤原さんのやり取りは割とわかりやすいってのもあるけども……。


 どうやら高橋的に、今の俺の答えで満足したのか、『そうだよな、友達なら普通だよな』と言ってきたので、この話し合いは俺の勝利で終わったようだ。


「まぁでも安心した。お前、ちゃんと嫉妬する感情はあるんだな。普段からの軽口のおかげで藤原さんに対して、好意がないんじゃないかと思ってたよ」

「だ、だから違うって、何度も言ってるだろ……」

「なんでそんなに否定する? 好きなら好きって認めた方が気が楽だぞ」

「なんで好きだって思うんだよ。俺はむしろ胸が大きくて背の高いお姉さんキャラがいいんだ。真昼なんてその真逆じゃないか。昔ならいざ知らず、もう今更好きになることなんてないね」


 精一杯の抵抗だと言わんばかりに真昼を否定する言葉を連ねるが、俺からしたらあまりにも滑稽な姿にしか見えない。むしろ好きすぎて自分がどうしたいのか分からない。まるで道に迷って泣いている迷子の子供のようだ……。


(まぁだからといって、手助けはしないがな。そうやって俺に猶予を与えてくれるうちにやれるだけのことを俺はやる)


「ま、お前が何と言おうがお前の勝手だな。話も終わりだろうしどうする? どっか寄ってから帰るか?」


 そう聞いてみれば、『いや、先に帰ってくれ。俺は1人で帰るわ』と答えるので俺は『そうか』と頷き、先に屋上の扉の方に向かおうとした。



――好きって認めたら、真昼がもう俺に構ってくれないと思っちまうんだよ……



 高橋が最後に何か小さく呟いていたようが、外にいたこともあって声は俺の耳まで届かず風と共に消えていった……。

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