表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

まちがいさがし

三国志の主人公、割とピンチ!周倉は来るのか?何しているのか?

「サンゴクシ好き?何の話だ?」


偽物の関羽、張飛を目の前にし、意味不明な返答が帰ってきたことで、劉備は一層困惑した。


「ゲームキャラの劉備にはわからないと思うけど、一応説明してやるよ。女神は俺たちに言った。全章クリアできた最初の一人は、生き返らせてやる、と」


きょとんとした顔の劉備を無視して、張曼成(ちょうまんせい)が続ける。


「だが俺たちは経理部。三国志はにわか知識しかない。普通にやってたら、ゲームを作った制作部の奴等には勝てない」

「そこで俺達は考えた」


偽張飛の菅亥(かんがい)が言った。


「劉備を殺してしまえばいい」

「私を殺す!?」

「そう。劉備が死ねば、奴等の知っている三国志のストーリーでなくなる。俺たちにも勝ち目が見えてくる。何なら俺が劉備に成り代わって皇帝になってやるよ」

「何を言ってるのかはわかりませんが、貴方がたが悪党だということはわかりました」

「悪党!?はっはっはっはっはっ!あっちの世界じゃ言われることもなかったな、そんな漫画みたいなセリフ!!!じゃあ、漫画っぽく、『冥土の土産に教えてやる』よ!はっはっはっはっ!俺のペルソナは『スペグーロの写し鏡』。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。見た目しか変えられなくて、着せ替えを楽しみたいプレイヤー向けのはずれスキルなんだけどさ、いざ現実リアルで使ってみると、結構便利だぜ。仲間のフリして暗殺だとか、隠密行動にも使えてよぉ」

「なんとなくわかりました。そのペルソナで、関羽と張飛に化けた?」

「ご名答」


偽関羽がにやりと笑った横で、偽張飛が叫んだ。


「ペルソナ!」

「なに!?」


劉備は驚愕した。どうあがいても、両手が広がらない!


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが俺のペルソナ『拳骨カンケル』。こっちは武器を持てるのに、相手は丸腰。確かに悪党かもっすね、自分、ひひひ」


素手で武器を持っている相手に敵うわけない!


劉備は、くるりと振り返り、全速力で走り出す。


――逃げなくては!


「逃げれるわけねえだろ?」


張曼成が、指を鳴らすと、桃園一帯から湧き出たように兵士たちが30人余り現れた。


「なんだと!?人の気配はしなかったのに!」

「そいつら全員死人だからな」

「死人!?」

「俺たちの仲間・程遠志ていえんしは、死体ゾンビを操るペルソナ『(かばね)のイーレ』の持ち主だ」


更に劉備を驚かせたのは、その兵士たちの顔が、全員関羽の顔だったことである。

「関羽!?」


張曼成がニヤニヤ笑う。


「全員俺の『スペグーロの写し鏡』で見た目を変えといたんだ。強さは変わらないが、関羽たちが劉備をボコすの面白くね?はっはっはっはっはっ!」


ゾンビ関羽たちが一斉にわらわらと行進してくる。菅亥の視界に入ったことで、全員握りこぶしになった。


「自分の『拳骨カンケル』は敵味方関係なく握りこぶしにしちゃうのが玉に瑕っすね(笑)」

「いいよ、おもろいから。ボッコボコにしたあと、トドメは俺たちがさしてやろうぜ、はっはっはっは、」

「ゲスいなあんたら」

「!?」


偽張飛と偽関羽は押し黙る。今の声はさっきの。

遠隔操作する程遠志の指示で、ゾンビ関羽の行進もストップした。


**********************************


ざざっ。


桃の大樹の木陰から、『疾風のヘルメス』を発動している俺が、ゆっくりと登場した。


「やめなよバカなことは」


決まったぜ。


「お前はさっきの!!」

「周倉です」

「お前、何でここにいる!?馬でもここまで20分はかかったんだぞ!?」

「周倉のペルソナは、あー、あんたらに説明すんのめんどくさいな」

「諦めんな!しろよ説明!」

「超足速い!以上!」

「雑すぎるだろ!つかなんでそんな急いで追ってきたんだ!?そんなに義兄弟になりたかったのかよ!?」


叫ぶ偽関羽に俺は呆れて言ってやった。


「なわけないでしょ。ハナから、あんたらが偽者だってわかってたからだよ」

「「はぁ!?」」


驚きを隠せない二人。


「「完璧な変装だっただろ!」」

「はぁ!??」


今度は俺が驚きの表情を浮かべて言い返す。


「どこがだよ!!!三国志ゲーム10年作り続けてきた俺をなめんじゃねえぞ!!!あんたら、関羽と張飛になりきるなら、マジでちゃんと勉強しろ!」

「……そんなに?」

「一つ目!関羽は身分や立場が上の人間には厳しく、弱者には優しいんだよ!俺への態度が真逆!」

「なるほど」


劉備がうなずいた。


「二つ目!関羽と周倉は友好武将なんだよ!ゲームの設定上気が合うはずなのに、最初の一言からあんたおかしかった!」

「知らねえよそんなの」

「三つ目!関羽は美髯公って自分で言わない!最初に言ったのは、みかどだから!もっと後の時代だから!にわか知識で関羽のフリしてんな!」

「こいつガチ勢っすね……」

「これくらい普通だわ!あと4つ目!」

「「まだあるの!?」」

「まだまだあるわ!張飛の字は、益徳!」


そう俺が怒鳴ると、偽張飛の菅亥が反論した。


「はぁ!?翼徳で合ってるだろ!!」

「翼徳っていう張飛のあざなは、『三国志演義』だけなんだよ!≪バンクォー≫のゲーム初期、翼徳の表記で販売したら、史実のファンや歴史家たちに叩かれまくった経緯があって、ここ5年間、うちのゲームの張飛は、ずっと≪益徳≫ってあざなで統一されてんの!」

「まじか、普通に知らなかった」

「最後に武器」

「「武器?」」

「関羽の武器は、≪青龍偃月刀≫、張飛の武器は≪蛇矛だぼう≫ってのは世間の常識なんだよ」


とまぁ、そういうわけで、俺はこの偽者をとっくの昔に看破していたんだ。


だから。


俺は酒場をもう一度巡り、店員さんたちにお願いして回ったんだ。


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!


大きな衝撃音。


――来たな。


その場の全員が音の鳴った方へ向く。


そして次の瞬間、バタバタバタと、ゾンビ関羽たちが倒れだす。


「何が起きている?」


そう言って、劉備が俺の方を不安げに見てきた。こっちじゃなくて、あっちを見て、と俺が言うと、音の鳴った方から、また一人、関羽が現れた。青龍偃月刀を固く握って。


味方の心配をする偽関羽こと張曼成(成田)が声をかける。


「おお、ゾンビ関羽、あっちで何があった?程遠志、いや、遠藤はどうした?」

「……ん?」

「どした関羽?」


次の瞬間、青龍偃月刀を振り下ろし、張曼成の首が飛んだ。


「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


直属の先輩の首が飛んで、偽張飛・菅亥(菅井)が絶叫する。


「黄巾の下郎が。気安く俺を呼ぶな」


――間違いない。






――この人が。








――本物の関羽だ。




関羽降臨!!次回もお楽しみに!


※よければ☆☆☆☆☆評価や、ブックマークとやらをしていただけると大変励みになります!(汗)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ