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関羽と張飛

いよいよ関羽と張飛の登場!瑛冶(周倉)は義兄弟になれるのか!?

涿県(たくけん)

周倉(しゅうそう)・劉備が大金を稼いだ翌日の昼過ぎ。劉備の家にて。


「ペルソナ?」


日焼け肌の好青年・劉備が首をかしげる。


「そう。俺のペルソナ『疾風のヘルメス』は、無制限に高速の移動を可能にする」

「ハハハハハ、なんてこった。そんな才能を持つ人に初めて会ったよ」

「玄徳。あんたにもあるんだよ、ペルソナは」

「私にも?」


そう。劉備玄徳のペルソナは『麒麟きりん』。

制限時間の30秒の間(レベルがあがるほど時間は延びていく)、主人公補正の幸運が続く能力。使用限度は一日3回。

要するに≪30秒無敵状態≫という、初心者向けに設定された能力である。

主人公補正のチートキャラ。自分が劉備だったらカンタンにクリア出来たろうな。


ただし。


劉備、そして関羽・張飛がペルソナを使えるようになるのは、『桃園の誓い』の後に設定されている。

三国志のメインキャラであるため、ペルソナ覚醒の際は、独自のムービーシーンが用意されているのだ。



だから。


今はただの、大志を抱いた、無能力キャラというわけだ。


「あんたは近々、関羽と張飛という、一騎当千の実力をもつ、超強い男たちに出逢う」

「関羽と張飛」

「その二人と俺とあんた、四人が義兄弟の契りをかわしたとき、ペルソナは使えるようになる」

「そうか。周倉が言うなら信じよう。ちなみに、周倉の字は何と言うんだ?」


あざな。三国志を知らない人だとわかりにくいんだけど、要は通称というか、別名というか。親しい間柄であれば、この時代、みんなあざなで呼び合っていた。


ちなみに周倉の字は、元福だが。


まぁ、せっかくだし。


瑛冶あきや


本名(吉川瑛冶きっかわあきや)でオネシャス。


「そうか。改めて瑛冶、よろしく頼む」

「おう」

「では、瑛冶。一緒にその二人を探そう」

「いいのか?」

「一騎当千なんだろう?その二人を仲間に引き入れ、急ぎ義勇軍を結成しよう。何事も善は急げだ」


その通り!さっさと関羽、張飛と義兄弟になり、隠しクリア条件を達成だ!


俺は劉備と連れ立ち、涿県の酒場巡りを再開した。


**********************************


探索から5時間ほど経過。

日が沈みはじめ、辺りが夕焼け色に染まる頃。


「周そ、いや瑛冶、あれを見ろ」


5軒空振りし、6軒目の店内を見まわしていた劉備が、奥の座席を指さし、声をあげた。


そこにいたのは、美しい髭を生やした身の丈九尺ばかりの大男と、身長は八尺あまりと負けじと大柄な、豹のようなグリグリとした目ん玉をひんむく、虎髭の武将。


間違いない。関羽と張飛だ!!!

ついてる!!これで最速クリアだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「すみませーん!!!!!!」

「ん?……誰だお前は?」


怪訝な顔をした関羽が、高圧的に聞いてきた。


「え?……あ、すみません。俺は周倉って言います。西涼の出で、今は義勇軍を結成しようと、あいつと一緒に仲間を集めてるんです」

「あいつ?」


俺の言葉を聞いた張飛が、劉備を見た。


「お!!!」


思わず声を出す張飛。それにつられるように、関羽も劉備を見て咄嗟に「おお!」と声を上げた。


「ずっと会いたかったんだよあんたに!!」


張飛が嬉しそうに劉備に近づいていく。


「私に?」


驚く劉備の手を、張飛が両手で包むように握る。


「漢の景帝のご子息、中山靖王・劉勝の末裔なんだろ?漢王朝の再建を夢見る男!!この村の奴等から話は聞いてるぜ!!!」


興奮気味に張飛はしゃべる。続いて関羽が言う。


「落ち着け翼徳(よくとく)。劉備殿が困っているではないか」

「ああ、悪い兄者、つい興奮しちまって」


劉備の手を放す張飛。



「挨拶が遅れて申し訳ない。俺は、美髯公(びぜんこう)・関羽。字は雲長」

「ビゼン?ああ、ヒゲのことですか?」

「さすが劉備殿、その通りです、はっはっはっ」

「俺は張飛。字は、翼徳。実は俺たちも黄巾の奴等の横暴には腹が立っててよ、ぶっ倒したいって思ってたところなんだ」

「なんと、貴方たちも?」

「ふぅーん」


俺は、音に出して、ふぅーんと言った。関羽がこちらを見たあと、無視して続けた。


「ええ。俺と翼徳は、義勇軍結成を夢見る貴方の話を聞いてから、ずっと貴方の力になりたいと思っていた。劉備殿がよければ、ぜひ、我等三人で、義兄弟の契りを交わしていただきたい!!」

「交わしていただきたい!」


関羽が頭を下げ、張飛が重ねるように頭を下げた。


ん?三人だ?


「待ってくれよ」


俺が口を挟む。


「そこの劉備、いや玄徳は、俺の義兄弟だ。義兄弟の契りを交わそうって言うなら、俺も混ぜてもらわなきゃ筋が通らない」

「なんだお前は」


高圧的な関羽。なんかヤな感じだな。


「だ・か・ら!俺は周倉!劉備の義兄弟で、義勇軍立ち上げようとしている男だよ!」

「兄者、どうするよ?」

「ふん。まぁ~……劉備殿の義兄弟なら仕方ない。ただし、お前は末弟、一番下だ」

「はぁ!?」


思わず声が裏返る俺。


「待ってください」


たまらず劉備が口を挟んだ。


「この周倉、私と義兄弟の契りを交わしたのは昨日のことですが、私は彼に全幅の信頼を置き、私にはない才能のある、非凡な人物と認識している。私があなたたちと義兄弟になるのは構わない。しかし、彼への敬意を欠くのならば、話は別だ」


ぴりついた空気が酒場じゅうに広がった。


いやいや劉備ぃ~!!!!嬉しくて抱きしめたくなっちゃったよお前~!流石仁徳の士だなおい!!!!

だけどもだ!!!関羽・張飛と義兄弟になるのは絶対断んなオメェ!!!!!


「ありがと玄徳!でも俺末弟でいいわ!」

「いやしかし!」

「義兄弟になろ、ペルソナ使お!」

「それはそうだが」

「こいつが良いって言ってんならいいじゃねえか、なぁ兄者?」

「うむ。劉備殿、我等四人、義兄弟の契りを交わしましょう」

「う~ん、……ならば、うん、わかったよ。そうしよう」

「こんなところじゃ、あれだしよ。東にずうっと進んだところに、桃の木がたくさん生えてるところあったろ、あそこで契りの盃を交わそうぜ」

「翼徳。お前にしては、粋な提案ではないか。いかがかな、劉備殿?」

「私はどこでも」

「こんな夜に桃園の誓い?」

「文句があるのか?よし。周倉、ここの酒と盃を樽で運んでくれ」


関羽が俺の肩に手を置いて、サラッと命令した。


「俺が?」

「末弟なんだから仕方ねえだろ。さ、劉備殿、俺たちは馬で行きましょう」


そう言うと張飛は、店の壁に立てかけてあったトゲのついた棍棒を手に取り、外へドシドシ歩いていく。

するとそれに続いて関羽も、長柄の矛をたずさえ、劉備を引っ張り、店を後にした。


……。


むかつくなあいつらああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!


……うし。俺に失礼な態度取ったこと、死ぬほど後悔させてやるぞ。


そう心で誓った俺は、先日話した顔見知りの店員に声をかけ、紙を渡した。


「それ、宜しくね」


店を出る。関羽張飛は、俺を待たずに劉備を連れて行ったようだ。


さて。




俺は「ペルソナ」と呟き、両足に翼を生やして、空振りした酒場の方へと加速した。


まさかの関羽と張飛がちょっとヤな奴!

義兄弟にはなれそうだけど?この後どうなる!?

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