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05.ざまあ宣言

挿絵(By みてみん)


「ばばばばばっ、バカ!! こんな、ちゅ……ぅ……するみてえな……っ。~~っ、ごごごご、誤解されたらどーする――」

「ざまあして」

「……は?」

「君が僕を負かして。それでもう一度、僕をギラギラさせてよ」

「っ!!? そんなん無理に決まって――」

「元に戻ってほしいんでしょ? 今の僕は嫌なんでしょ?」

「それは……」

「僕だって嫌だ」

厳巳(いずみ)……」

「お願い。……っ、助けて」


懇願した。情けないとか、みっともないとか、そんなふうに自分を恥じる余裕すらない。

とにかく必死だ。お願い。お願い。応えて。

改めてじっと彼を見つめる。だけど――。


「……っ、……~~っ……」


彼は『そんなこと言われても困る』と言わんばかりに、ぎゅっと目を閉じた。

ダメなの? やっと……やっと見つけたのに……。

手から力が抜ける。そうしたら――。


「っ!」


不意に手首を掴まれた。

濡れてる? これは……汗か。

彼は顔を俯かせていた。

身長差があり過ぎて、表情が見て取れない。


「ねえ、どっちなの? YESなの? それとも――」

「じょじょじょっ、上等だ!! ややややっ、やってやるよ!!!」

「……えっ?」


ガクブルしながら宣言してきた。おまけに涙目。まるでチワワだ。

物凄く頼りない。これが僕の主人公(ヒーロー)か。


「ふっ……」

「わっ、笑ってんじゃねーよ!!」

「無茶言わない……でよ……?」

「? なっ、何だよ?」

「笑ってた? 今? 僕が?」

「おっ、おう」


自覚したらまた「ふっ」と笑みが零れた。

なるほど。流石は主人公様だ。

こんなにも早く僕から笑顔を引き出すなんて。

本当にここ4年ぐらいは、まともに笑ってこなかったんだけどな。


「…………マブ」

「え? 何?」

「なっ、ななななっ!!! 何でもねえーよ!!!」


彼はそう言って、半ば投げ捨てるようにして僕の手を離した。

いちいちやかましいな。

だけど、だんだん可愛く思えてきた。

ここは素直に愛でるとしようかな。

僕だけの幼い主人公を。


「契約? も成立したことだし、そろそろ名前教えてよ」


彼は眉を寄せて、静かに目を伏せた。

凄く寂しそうだ。あ、ヤバい。やらかした。


「ごめん。やっぱ顔見知り? どっかで一緒に練習したりとか――」

永良(ながら)悟行(さとゆき)。永遠の『永』に、良い悪いの『良』、悟るの『悟』に行動するの『行』だ。年はお前と同じ15。中3。村山SS所属だ」

「………………………………マジ?」

「……何だよ」

「小学生じゃないんだ」

「~~っ、てめえ!!!!! 身長マウントも大概にしとけよ!!!」


根拠は身長だけじゃないんだけどな。

ぎゃうぎゃう吠える永良をしばらく愛でる……つもりだったのに、すっと正気に戻ってメダルを返してきた。

半ば強引に握らされた形だ。

その時に触れた永良の手は、とても小さくて温かかった。


「メダル、もう捨てんなよ」

「君次第かな」

「…………はいはいはいはい」


永良は顔面を覆うと、静かに天を仰いだ。

……何それ? 意味分かんない。

けどまぁ、問題はないだろう。


「じゃ、またな」


『一緒に帰ろうよ』と言いかけた時には、既に彼の姿はなかった。

追うことも考えたけど、ぐっと我慢する。

これ以上欲張ると(ばち)が当たるような気がして。


「永良、ね」


メダルを箱にしまう。

温かかった。メダルも。僕の心も。




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