超問題作~異世界知的障害~
「あなたの判断で『異世界に人間を転移させる』あなたのしていることは人権侵害です!」
若い女性議員が国会で増山異世界大臣を糾弾していた。
増山は白髪だらけの53才の中年だった。
「だって彼らは人間じゃないよ?」
女性議員はしめたぞとほくそ笑み。会場からは罵詈雑言が飛んだ。
誰もが増山の大臣クビを想像した。
人の不幸は彼らにとって最高のエンタメだ。
「人間じゃない?それが大臣の言葉ですか?見ましたか!?中継を見ている国民の皆さん!」
ネットも5分で荒れに荒れた。
増山への誹謗中傷はあっという間に数十万件を超えた。
「俺の息子は知的障害者でねぇ」
「だからなんです!?」
「だからね?行ってるんだよ。異世界に。……目を背けるな!」
増山の気迫にざわついた国会が静寂に包まれた。
「俺が異世界に送り込んだのは『知的障害を持つ性欲の強い人間』だ。彼らは悪気なく異性に飛びつきペニスを弄り胸を揉む」
「……知的障がい者の方でも権利が」
「じゃああんたが俺の息子を射精させてくれるのか?姉ちゃん」
「セクハラですよ!」
「悪意がねぇんだよ!あいつらの性欲はよ!身体は大人になっていくのに心は子供。性欲は人並み。そんな奴らを社会に放りだしちゃいけない」
女性議員や他の議員が法律や障害者の性を支援する団体の話をしても増山の態度は変わらなかった。
「重度の知的障がい者の性犯罪は罪にならねぇ。人権問題を叩かれるのを恐れてマスコミも報じない」
増山は1台1台のカメラを睨みつけて言った。
「ネットのバカども聞いてるか?お前たちは人権人権とうるさいが暴力団事務所や風俗街が出来たらすぐに追放運動をしやがる。『人権は大事だけど自分に害の無いどこかへ行ってくれ』ってか?笑わすな。俺の息子も障害者施設で真面目にパンを作る仕事をしていた。だが、お前たちは『障がい者が怖い』と追い出した。確かに町中で女を見てペニスを触る障害者も男にキスをしてくれと頼む女もいた。しょうがねぇじゃねぇか。生物に生まれたんだから。障がい者は社会から追い出されてキスもセックスも出来ないまま山の中で過ごせってのか?ええっ!?」
増山は泣いていた。
「……お望み通りあいつらは人なんかいない異世界に追い出してやった。そこで障害者通し仲良くやってる。嗜好品の増税案はすぐ通るくせに障害者の異世界生活税は全く上がらねぇな。あいつらが少ないゴールドでどんな貧しい生活してるか知ってるのかよ……」
「そ……その結果。障がい者達が何と呼ばれているかご存知ですか?」
増山は女の質問には答えなかった。
「思春期。息子は勃起と射精を覚えると妻の布団に毎晩潜り込んだ。分かるか?自分の息子の性処理をする妻を見た俺の気持ちがよ。最初は胸を揉みながら自分でしてたけど、息子は一線を越えた。そりゃ止めたさ。でも力でねじ伏せられたよ。その日から俺は『異世界大臣』になる事を決めた」
何かヤジを飛ばせねばと口をパクパクさせている議員もいたが、何を言っていいか分からないようだった。
「……ゴブリン」
「はい?」
増山が女議員に言った。
「ゴブリンだろ?あいつらは異世界でそう呼ばれている。大丈夫。女騎士は絶対に近寄らせないように向こうに話はつけてる」
増山は書類を片付け立ち上がった。
「悪いな。これから孫のお迎えなんだ。……正確には子供なんだけどな」