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消えた令息が見えるのは私だけのようです  作者: gacchi(がっち)


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24.精霊の怒り?

「それで、だ。エルヴィラが当主になると言うのなら、話しは違う。

 ベッティルと婚約解消したことは無かったことにする」


「え?」


ベッティル様との婚約解消を無かったことに?

それはもう二十日も前に解消されているのに、今さら?

驚いていると、陛下は当然だと言う様に続ける。


「公爵家の婿には王族がふさわしいだろう。

 あの時はブランカに継がせるつもりだったから解消させたが、

 エルヴィラが継ぐと言うのなら話は変わる。

 ベッティルと結婚するように。いいな?」


呆然としていると、アロルドが説明してくれる。


「ベッティル王子の部屋にはイザベラがいたよ。

 陛下はブランカがダメだったからあきらめて結婚しろと説得していた。

 イザベラは愛人として連れて行くことを認めるとか言ってた」


ふーん。王命で愛人を連れて行かせると……。

やっぱり陛下は愚かだ。


「陛下、お話はわかりましたが、

 ベッティル様にはイザベラという恋人がいらっしゃいます。

 精霊王は不貞を嫌がりますので、

 愛する方がもうすでにいらっしゃるベッティル様との結婚は難しいと思います」


「なんだと?

 ベッティル、そんなことはないな?」


「ええ、父上。イザベラは仲のいいお友達です。

 けっして恋人ではありません。

 エルヴィラ、お前が俺に冷たくするからわざと恋人だと嘘をついたんだ。

 大丈夫、何も気にしなくていい」


今も自室にイザベラがいるというのに、堂々と嘘をつく。

そんな嘘で私が誤魔化されると思っているのが腹立たしい。


「それは本当でしょうか?

 もし、嘘をついて精霊王の前で誓うようなことがあれば、

 ベッティル様もお父様のようになりますが」


「エミールのように?」


「ええ。雨の中敷地の外に放り出されていました。

 その後、三年ほどは公爵家に入れずにいました。

 先日まで本宅に住んでいたのは、

 精霊王に許されたわけではなく、私が一時的に許可を出しただけです」


「ベッティルもそうなると?」


さっきのお父様とブランカのことを思い出したのか、陛下は渋い顔になった。

だが、何も知らないベッティル様は自信満々だ。


「俺は嘘をつかない!心配はない」


「……では、試してみてもいいでしょうか?」


「試す?どうやって?」


「この謁見室には精霊がいます。

 もし、ベッティル様が私の婚約者としてふさわしいのであれば、

 私に近づくことができるでしょう」


「なんだ、そんなことか」


ほっとした顔になって私へ向かって歩いてくるベッティル様が、

あと数歩というところで弾き飛ばされて転がった。


「んあ?」


「なんだ!今のは!」


何が起こったのかわからず、床に転がるベッティル様。

何も無いところで弾き飛ばされたのを見て、顔色を変える陛下と宰相。

…私は必死で笑いをこらえる。


ベッティル様は私に近づこうとして、アロルドに蹴り飛ばされていた。



「なんだ?今のは」


懲りないのか、立ち上がったベッティル様は私へと向かってくる。

そこを容赦なく、アロルドが殴り飛ばす。


「ぐあっ」


「……」


ゴロゴロと床を転がっていったベッティル様は左頬が腫れあがっている。

手加減しなかったのか、かなり痛そうだ。


「今までの仕返しには足りないな」


アロルドがそんな風につぶやくから、無表情でいるのがむずかしい。

ベッティル様はよくわかっていないようで、

それから二度私に近づいてこようとしてアロルドに吹っ飛ばされる。

懲りない性格なのか、負けず嫌いなのかよくわからない。

最終的に痛みで立ち上がれなくなったのか、少し離れた場所でうずくまる。


「なんだっていうんだ!どういうことだ!エルヴィラ!」


「ベッティル様、嘘をついていませんか?」


「嘘だと?」


「ええ、イザベラは本当は恋人だとか、今でもお会いしているだとか。

 私と結婚しても愛人として連れてくるつもりだったとか、心当たりありませんか?」


「……ないな」


まだ嘘を続けるつもりなのかと思っていたら、アロルドが魔石を取り出した。

魔石に記録していた場面が壁に映し出される。


どうやら先ほどのベッティル様の自室の記録のようだ。音も聞こえる。

ベッティル様とイザベラがソファでいちゃいちゃしているところに陛下と宰相が入ってくる。

陛下から私との婚約を命じられてベッティル様は嫌そうな顔をする。

イザベラは泣いて嫌がり、抱きしめて慰めるベッティル様。

最終的に公爵家に愛人としてつれていくことで納得させて記録は終わる。


「……陛下、どういうことでしょうか?」


「いや、これは…」


「今のは精霊が見せてくれたのでしょう。

 やはりベッティル様には恋人がいらっしゃいますよね。

 それに、ベッティル様は精霊に嫌われている様子。

 私との婚約は無理だと思います」


ここまで見せられたら納得するしかないのか、陛下はため息をついた。

だが、ベッティル様はあきらめきれないようだ。


「エルヴィラ!お前は俺の言うことを聞いていればいいんだ!

 いいか!俺はイザベラだけを愛している。

 だが、お前とも結婚してやろう!わかったな!」


「お断りいたします」


「うるさい!お前が断るだなんて生意気だ!

 黙って言うことを聞け!」


あ、と思った時には雷が落ちていた。

今度は雨は降らず、ボロボロになった服があちこち燃えている。

宰相が慌てて外にいる騎士を呼んで消火させる。

気を失っていただけだと思うが、後遺症がでないとは言えない。


ベッティル様が運び出された後、陛下と宰相は暗い顔をしている。

思っていたことが全部うまくいかなくて、どういうことだと思っているんだろう。


「陛下、公爵家のことはご心配なく。

 私の婚約者は精霊が選んでくれると思います」


「なんだと?精霊はそんなことまでするのか?」



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