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【コミカライズ企画始動!】あやかしダンジョン配信記~底辺配信者の俺、妖怪の地遠野にて美少女座敷わらしと共にダンジョン配信したらバズって大変な事に~  作者: 十凪高志
第五章 挑戦者たちとマヨイガダンジョン

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第89話 第五関門 妖怪大相撲 第二試合 ゴリラvs脳筋

「ひがぁ~しぃ~、東雲ぇ~山ぁ~」


 タガメが名を呼んだのは、探索者達のエースと言って過言ではない、東雲優斗だ。

 筋肉質のたくましい肉体にマワシを締めている。


『ふぉおおおおおお!』

『REC●』

『濡れる!』

『私もマワシになりたい……』


 女性陣のコメントが殺到した。


「にぃ~しぃ~、石川ぁ~海ぃ~!」


 そして相対するは……ゴリラだ。

 マワシを締めたゴリラが土俵に立つ。


『ブホォオオオ!?wwww』

『これはひどいwwww』

『なんでマワシしてんだよwwww』

『もうやめて! 探索者の腹筋のライフはとっくにゼロよ!』


 コメント欄も大爆笑である。

 シュールだもんなあ。


 しかし笑っているのはリスナーたちだけだろう。

 探索者たちは……その姿に気圧されていた。


 それはそうだろう、画面越しに見ているだけの俺達と違い、あの筋肉の圧を間近で受けているのだ。プレッシャーは相当なものに違いない。


「はっけよい……のこったぁ!!」


  開始と同時に、ゴリラの石川が動いた。

 一瞬にしてトップスピードに乗ったゴリラが突っ込む。


「うおぉおおお!!」


 雄たけびを上げながら、ゴリラが東雲に突進する。


 それを、


「ぬうううううううんっ!!!」


 東雲が受け止めた。


 相撲において最も威力を発揮すると言われるぶちかまし。

 だが、それを受け止めた東雲の足下が大きく陥没した。


 その衝撃たるや凄まじいもので、地面は大きくえぐれ、まるで隕石でも落下したかのようにクレーターが出来上がっている。


「ぐぅう……!」

「むんんんっ!!」


 それでも2人は押し合いをやめない。

 両者一歩も譲らない力比べだ。


「中々やりますね……!!」


 ゴリラが笑う。


「こちとらA級張ってんだ、それに……あの時誓ったんだよ、二度とモンスターに負けねえって! まあ、あんたがモンスターかは微妙だがな!」

「モンスターだろうと妖怪だろうとどう扱っていただいても構いませんよ、私は私ですから!!」

「――はっ、いいねえその我の強さ! あんた気に入ったぜ!!」

「私もですよ!!」


 ゴリラ二人は意気投合したようだ。

 熱い戦いである。


「ならば!」


 石川は一歩下がり、そして腰を落とす。


「ふううううううん!! 必殺ゴリラ張り手!!」


 石川が張り手を繰り出す。その一撃が東雲に直撃する!


 普通なら下手したら体が爆散しそうなほどの破壊力。しかし、東雲は動かない。受け止め――耐えている!


「まだまだあ!!」


 張り手の連続。


 その全てを東雲は受けきる!

 しかしこれではさすがに――


「おかしいぞ」

「どうした」


 見ている探索者たちが話す。


「東雲さんは確かに強い。S級探索者も夢ではないと言われている男だ。だけど、あのゴリラの攻撃をあれだけ受けて耐えられるものなのか」

「実際に耐えているじゃないか」

「そうなんだが――それにしては違和感がある。最初の激突の時ほどの破壊力の余波が無いんだ」

「そういえば――どういうことだ?」


 そしてそれは、当の石川も疑問に思ったらしい。張り手のラッシュを止め、声をあげる。


「――何故だ。確かに君は強い。しかし、私の張り手で倒せずとも……これだけの猛攻、土俵の外に押し出せるはずだ」


 しかし、東雲は動いていない。

 そして東雲は笑う。


「――俺は一度、手痛い敗北を喫した。

 デーモントロールっていうS級モンスターでな、歯が立たなかったよ。俺は修吾の偽物に助けられ、そしてその偽物の狐は修吾が倒した。

 上には上がいるって思ったよ、正直へこんだね。だってそいつは、スキルもない不適格者だぞ?」


 その話は俺も知っている。

 デーモントロールなんて、深層の魔物であり、探索者たちがパーティーを組み入念な準備をしてようやく撃退できるモンスターだ。


「こないだのSL銀河ダンジョンで、トラウマを見せつけるモンスターがいてな。俺は何を見せられたと思う? そう、デーモントロールだよ。俺はそいつと戦わされた。ああ、勝てるわけねえ。俺なんかが一人で勝てるわけがない……だけど俺は生きてここにいる、つまり勝ったってわけだ。

 どうやってだと、思う?」


 東雲は笑う。そして――攻撃を受けるため組んでいた腕を一気に、開いた。


「それは、これだ――【アイテムボックス】、収納解除!!」


 次の瞬間。


 衝撃が、解放された。


 東雲の手から解き放たれる、これは……まさに衝撃だった。そう、何かがぶつかるときの衝撃。


 これは。


「私の――張り手!!」

「そう、俺のアイテムボックスは、生物以外のあらゆるものを収納し取り出せる――そしてそれは、攻撃のダメージも収納できたんだよ!!」


 つまり今までただ耐えていたのではなく……張り手の攻撃を収納していたのか!!


 そんな使い方、聞いたことない。


「ぬううっ――!!」

「銀河鉄道で修吾とメシ食って話してたときに、あいつが気づかせてくれたのさ! おかげで俺は夢の中のデーモントロールを単独撃破できた!」


 そして東雲は、体勢を崩した石川のマワシを掴む。


「どっ……せぇぇええええええいっ!!!!」


 そしてそのまま――投げた。


「勝者、東雲山ぁぁッ!!」


 タガメが号令をあげる。


「うおおおおおおおおお!!」


 見守っていた探索者たちがわき上がる。


『おおおおおお!!』

『東雲ニキ勝利!』

『すげえ、ゴリラに勝った』

『あのゴリラただのゴリラじゃないぞ……それに勝つとか』

『名勝負!!』

『さすがS級目前!!』

『アイテムボックスって外れスキルじゃなかったっけ』

『強いな……』

『¥10000:夕菜ちゃんからアニキに渡して』

『アドバイスしたのキチクだって? キチクもすごい?』

『さすがだな』


 コメントも大いに盛り上がっている。

 先ほどの勝負がなんだこれ、だっただけに盛り上がりもすごい。


「……まさか、あんな力で私の攻撃を利用するとは。攻防一体の技、さすがです。最後の投げも見事でした」


 石川が笑う。東雲は手を伸ばした。


「あんたも強かったよ。正直、デーモントロールより強かったぜあんた。また戦ろう」

「……ええ。次は負けません」


 そして石川は東雲の手を握り、立ち上がる。


 マヨイガに、拍手が響いた。


 男と男の、戦士の戦いを讃える喝采だった。

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