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【コミカライズ企画始動!】あやかしダンジョン配信記~底辺配信者の俺、妖怪の地遠野にて美少女座敷わらしと共にダンジョン配信したらバズって大変な事に~  作者: 十凪高志
第三章 妖狐と殺生石ダンジョン

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第42話 妖狐・鈴珠

 結果として、停止措置は免れた。


 偶然にも幸運にも、彼女の大事な部分は配信に映らなかった。髪の毛とか尻尾とか、そういう部分で偶然にもカメラから隠されたようだ。

 危ねえ。

 リスナー的には映った方が幸運だったのかもしれないが、しかし18禁になってチャンネル停止したら結果としてみんなが不幸になるのでこれでよかったのだろう。

 まああくまで、配信には映らなかっただけで……


 閑話休題。


 あれからどうなったかというと……。



 ◇


「と、とりあえず服を着なさい」


 カメラを停止した後で、俺は言う。

 相手は子供で、妖怪だ。美少女の全裸が眼前にあるからといって、俺はうろたえない。俺はロリコンではないからな。


「あ、はい」


 素直に従う彼女。


「服は……何かあったかな」


 俺がそう言った時、いつの間にかタンスが生えていた。さすがマヨイガ。何でも出てくる。

 俺はその中から適当な服を取り出して彼女に渡す。


「はいこれ」

「ありがとうございます」


 彼女はそれを着る。

 トレーナーだ。サイズは少し大きいようだ。

 袖から手が出ていなかった。


「じゃあ、改めて自己紹介しようか」


 俺は言う。相手がちっちゃな妖狐だったから、正面切って自己紹介はしていなかったからな。


「俺は菊池修吾。見ての通りのただの人間だよ」


 その瞬間。


 えっ、という顔を彼女はした。


「……何か不満が?」

「いえあの、普通の人間は、檻を素手で破壊したり水神を素手で蹴り殺したり……しないと思いますよ?」


 ……はあ。この子もか。


「あのさ。そう言うといかにも俺が化け物みたいに聞こえるからやめてくれ。檻はただのもろいコンクリートだから壊せたんだし」


 コンクリートはみんなが思うより弱く脆いのだ。厚さや条件次第では素手で壊すことは出来る。


「水虎神を吹っ飛ばすのは、皿を砕いて弱ってたから出来たことだよ」


 タガメや水面ちゃんの加勢があったから隙をついて皿を破壊出来た。そうでないとやばかったからな。


「まあ君はちっちゃいからわかんなかったかもしれないけど、俺は普通の遠野の人間だよ」

「あ、はい……」


 彼女は納得してくれたようだ。


「いや、納得してないと思うなー」

「うん、うん。もういいや、って感じの顔……」


 千百合と日狭女が言う。

 君たちは黙ってなさい。


「とにかく。それで、君の名前は?」

「はい、私、えっと……鈴珠すずたまといいます」


 狐の少女は、そう名乗った。


「えっと、その、修吾様、千百合様、日狭女様。助けていただいてありがとうございましたっ。

 怪我で今まで人の姿を取れず喋れず、挨拶と謝礼が遅れてしまって、もうしわけないですっ」


 そう言ってぺこり、と頭を下げる。

 礼儀正しい子だった。


「気にすることはないよ。困った時はお互いさまだしな」

「う、うん、ほんとうに助かって……良かったね、ふひひ」


 俺と日狭女はそう言う。しかし……


「うん治って良かったねそれじゃ出ていこうか!」


 千百合はぶれなかった。


「えっ……」


 戸惑う鈴珠ちゃん。


「千百合さんや、ちょっとそれは……」


 さすがに止めようとする俺。


「だって! こいつボクとキャラ被ってるじゃん!」


 ……なるほど。


 比較してみよう。


 座敷わらしと妖狐……種族は違うな、かなり。

 髪の色……黒いぱっつん姫カット長髪と、ふわふわした金髪、狐耳つき。

 服装……着物とトレーナーシャツ(下ははいてない)。

 口調……元気なボク口調と、敬語。


「全然かぶってないが」

「年齢!」

「そっちか」


 どちらも人間にして十歳くらいの女の子だ。しかしそれだけじゃねえか。

 しかも実年齢はたぶん千百合の方がものすごい年上だろうに。


 少しは年長者として余裕持とうよ。


「なあ、千百合」

「何?」


 俺は千百合に言う。


「もふもふした毛玉な狐に対して、こいつ嫌いー、出てけー、というのはまだセーフかもしれない。見ててある意味微笑ましい。

 事実、リスナーさんたちにも好評だった。

 しかし……」


 俺は千百合の肩を掴んで言う。


「女の子が女の子を家から追い出そうとしてる姿なんて配信に写ったら……それはもはやリアルな女同士の醜い争いだ。

 確実に……炎上するぞ」

「えっ……」

「そうしたらチャンネル登録者数も減る。観光協会経由でお前に届いてる、ファンからの贈り物のお菓子とかも確実に……減るだろう!」

「!!!!」


 俺の言葉に。

 千百合は電撃に撃たれたように、衝撃を受けた。


「う……うう、確かに……!」

「わかってくれたか」

「わ、わかりたくない……だけどこのままあの狐を追い出したら……

 ボクの食う寝る遊ぶのニート生活が……!」


 座敷わらしは元からそんな生活してる気がするが。


 しかし確かに、マヨイガが用意する古き良き和のお菓子もいいけど、リスナーたちが送ってくれる今どきの市販のお菓子も大好きなのが千百合だ。

 それらが激減してしまうのは痛いのだろう。


 血の涙を流す勢いで苦悶する千百合。


 苦悶する。


 懊悩する。


 そして――――。


「あーもう! わかったよ! わかりましたよちくしょー!」



 かくして。


 妖狐の鈴珠は、マヨイガの居住権を勝ち取ったのだった。

 いや彼女は特に何もしていないけど。

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