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【100万PV到達!】あやかしダンジョン配信記~底辺配信者の俺、妖怪の地遠野にて美少女座敷わらしと共にダンジョン配信したらバズって大変な事に~  作者: 十凪高志
第七章 座敷坊主と幸せダンジョン

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第129話 幸せが襲って来る

「はーいみなさんこんにちは、幸せですかー? 座敷わらしの千百合だよー。今回はなんと長野から配信でーす」


 千百合がドローンカメラに向かって言う。


『こんにちはー』

『こんちゃー』

『なんで長野?』

『遠野じゃなく長野?』

『よっしゃ座敷わらしちゃんきた!』

『千百合ちゃああああああああん』


「あはは。視聴ありですー。今日はね、長野のとあるダンジョンに挑戦するためやってきました」


『今度は長野のダンジョンを破壊するの?』

『また壊すのか……』

『逃げて長野のダンジョン!』


「壊さねえよ!?」


 思わず俺は叫ぶ。こいつら俺をなんだと思っているのか。


『お前最初はいつもそう言うじゃん』


「ぐっ……」


 反論できねえ。


「と、ともかく。今回俺達が長野に来たのは、一通のメッセージが原因なんだ」


 俺は説明する。

 それは……。



『幸せが襲ってきます、助けて下さい』


 というメッセージだった。


 思わず、怪しい業者か何かかと思ってしまった。

 だがしかし遠野人の心の妖怪アンテナが反応したというか、どうにも気になり、送信者とコンタクトを取ることにしたのだ。


 送り主の名は、山野辺耕作。18歳。

 静岡に住むダンジョン探索者だそうだ。

 知り合いの探索者から、『幸せを呼ぶダンジョン』の話を聞いた翌日、『それ』は現れた。


 一人の和服姿の少年。


 山野辺氏は彼に誘われるように歩き、そして……現れたダンジョンへ突入した。

 そこは鳥居をくぐった先にある洞窟の、ごく普通のダンジョンだった。

 普通に雑魚モンスターを倒し、いくつかのドロップ品を手に入れ、帰還。

 ドロップ品も変哲の無い魔石数個程度で、全部協会で換金、二万円程度の稼ぎだったらしい。


 普通である、そこまでは。

 だが、翌日から山野辺氏を取り巻く環境が一変した――


 遠い親戚が亡くなり遺産が転がり込み、宝くじを買えば一等が当たり。

 有名探索者パーティーからスカウトされ、その女性メンバーから告白された。

 いい事づくめである。


 しかし、彼は怖くなった。

 いい事づくめすぎるのだ。明らかに自分に都合がいい。都合がよすぎた。

 その探索者パーティーで揉めた仲間が、ダンジョンで魔物にあり得ない集中攻撃を食らい、大怪我をして探索者を引退した。

 また、山野辺氏が可愛いなと思った女性探索者が彼氏と破局し、そして山野辺氏に告白してきたそうた。

 なんというラッキーだろう、ああこの世の春!


 ……と思える安直単純な人間なら良かっただろう、しかし彼は怯えるようになったのだ。


 幸せすぎる。

 この襲い来る幸せの奔流に、慣れてはいけない――!

 本能的にに彼はそう感じ、そして悩んだ結果、幸せの問題には幸せのプロに頼もう、と座敷わらしの千百合にメッセージを送った、というわけだ。



「……ちょっと、ヤバいかもね」


 メッセージに目を通した千百合がつぶやく。


「ヤバいのか?」

「うん。幸せってのはね、バランスであり、総量は決まってる……とまでは言わないけど、まあある程度は決まってるの。禍福は糾える縄の如し、ってことわざあるでしょ。幸と不幸が表裏一体であり、何が幸福をもたらし何が不幸を生むか分からないという意味だけど、まさしくそうなんだ。

 良いことがあれば悪い事も起きる。

 良い事も見方を変えたら悪い事になる。

 だから、幸せなだけの人生は――あり得ない、いや、あっちゃいけないんだ」


 千百合は淡々と言う。


「これはシュウゴにもリスナーのみんなにもよく言ってることだけど、起きた不幸も「失敗は成功の母」「人間万事塞翁が馬」「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」の考え方で幸せに変えていける。

 でもこれはあくまでも、起きた不幸を前向きポジティブな考えと行動で乗り越えて幸せを掴む、って事なんだ。

 こんなふうに、不自然そして不条理に幸運が降りかかるってのは……」

「幸せすぎて死んじゃう、が洒落になってないって事か」

「そういうこと」


 俺が言うと千百合は頷く。


「とにかく話はわかった。山野辺さんを助けないとな」

「だね。助けるには……原因を正す根本治療。すなわち……」

「幸せダンジョン攻略か。だけどそれがもし、過剰なだけの『ダンジョンの恩恵』だった場合……」

「ダンジョン攻略しても消えるとは限らない」


 ダンジョンコアを破壊しダンジョン崩壊させても、ドロップアイテムが消失するわけじゃない。

 何個もダンジョン崩壊させたからわかる。


「うん。だから対処療法が先だね。山野辺くんを連れて、とあるダンジョンに行くべきかな」

「とあるダンジョンとは?」

「幸せには不幸。不幸といえば貧乏神。

 そう、信州諏訪にある、貧乏神神社さ」


 


「……と言う事なんだ」


 俺はリスナーに説明する。


「そんなわけで特別ゲストとして、幸せに襲われて困っている山野辺耕助くんでーす。かなりマジで困ってるコなのでイジメないであげてね!」


 千百合が一人の青年を紹介する。山野辺氏である。


「どうも、山野辺です……いつもこのチャンネル見てます。今回はこんな形でコラボ?出来て、嬉しいというか複雑というか」


『やべー! マジで幸せダンジョンあるの!?』

『てか貧乏神神社って何?』

『貧乏神って神社に奉ってあるの?』

『幸せすぎると危険ってどういう意味?』

『いやそりゃあ不幸な出来事が起こりやすいって意味だろ。幸せすぎるってことはその反動が大きくなるって事だよ』


「おー、鋭い人がいるねー。その通りだよ。

 幸せが破滅を呼ぶ事例で分かり易いのはあれだね、宝くじ高額当選」


『あー』

『わかりみ』

『銀行員が高額当選者にマニュアル渡すとか聞いた』

『増える知らない親戚』

『やってくる投資の案内人』

『翌年の税金』

『初めまして幼なじみです』

『↑もはやホラー』

『あなたの妻よ忘れちゃったの?』

『シャレじゃなく起きるから怖い』

『俺も一万円当選したら友人どもの飯代に消えた』


「うんそうだね。他にも、生活レベルが変わって支出増えて戻せなくて、気がついたらすっからかんになったり。そうやって変わってしまった時に、どれだけ自分を保てるか、取り戻せるか……心持ちが大事なんだよ」


『さすが座敷わらし、含蓄あるなあ』

『ありがたいお話』

『心構えが大事、覚えた』

『レッツポジティブシンキング』


「うんうん。

 で、今回は彼を連れて信州諏訪ね貧乏神神社に来たわけだけど、貧乏神神社には貧乏神が祀られているんだ」

「元々は同じく信州は飯田市に建立された神社で、拝殿の中央に貧乏神の木像が祀られていたんだ。

 その像を赤い棒で「貧乏神出ていけ」と叫びながら3回叩き、その後に再び「出ていけ」と3回叫びながら3回蹴ることでご利益があるとされていたんだ。今は神主の健康上の理由で閉鎖。

 諏訪の味噌蔵を含め五つの分社があり、ダンジョン化したのは諏訪の味噌蔵分社だけだけどな」


 俺は千百合の言葉に補足を入れる。


『御神体を殴る蹴るwww』

『バチ当たり過ぎない?』

『遠野もやべえが長野もヤバすぎんだろwww』

『飯田の本社は祟りで潰れたのでは……?』


 まあそう思うよなあ。


「で、その味噌蔵の奥にある貧乏神神社ダンジョンの最奥にある御神体……ダンジョンコアが今回の目標だ」


『また壊すのか』


「壊さないよ? そもそも貧乏神神社の参拝は先ほども言ったように貧乏神像に殴る蹴るをする事で、貧乏神に不運不幸、厄を押し付けるんだ」

「だけどね。貧乏神さんには、ひとつだけ禁忌があるの」


 千百合が声のトーンを落とす。


『禁忌?』

『それは一体……』


「……まあ、それはダンジョン最奥についてからの話だね。

 というわけで、今回のボクとシュウゴの仕事は、山野辺くんを貧乏神のところに連れていくことなのです」


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