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【コミカライズ企画始動!】あやかしダンジョン配信記~底辺配信者の俺、妖怪の地遠野にて美少女座敷わらしと共にダンジョン配信したらバズって大変な事に~  作者: 十凪高志
第六章 画魔蛙と供養絵額ダンジョン

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第119話 巨大画魔蛙

 佐々木健吾に、菊池修吾では勝てない。それは事実だ。まともに喧嘩したなら、まず俺が負けるだろう。

 ――人間同士なら、の話だが。


「えいっ」


 俺は偽健吾の拳をかいくぐり、顔面に掌を叩きつけ――そして、ぐちゃぐちゃに動かす。


「!」


 相手は絵だ。

 たった今描かれて動き出した、絵の妖怪である――だったら話は簡単だ。

 健吾の姿をしているから、絵の怪異として、動く。

 だったら、描かれたばかりの乾いていない絵なんだし、ぐっちゃぐちゃに手で絵具を伸ばしてかき乱せば、それは絵として成立しなくなって、ただのきったねえ染みになる。


 至極簡単な事である。


「おお、すげえ! これがキチク先輩の戦法、敵を尻なんちゃらってヤツっすね!」


 健吾が言う。ちょっと字が違う気がするぞ。


「っちゃー、手が汚れちまった」


 俺の掌には絵具がびっちりとついている。俺はそれを壁になすりつけてぬぐう。


「……ねえエマちゃん。なんなのアレ」

「うーん、なんなんでしょうね」


 弥子ちゃんとエマちゃんも呆れ顔というか諦め顔をしていた。

 そして画魔蛙が叫ぶ。


「……あ、ありえん! なぜ、実体化した絵を消せる! すでに実体化した絵は、絵であって絵ではない、独立した人間のようなものじゃ!

 それを手で拭っただけで絵具となって消えるなど!

 術の理に反しておるわ! 何だ、何なんだ貴様らはあっ!!」


『今更なんだよなあ……』

『遠野人に理屈は通じない、ここテストに出ます』

『カエルさんを襲う理不尽wwwww』

『これが遠野人らしいですわよ』

『遠野人なら仕方ないね!』


 リスナーたちがいつもの調子で色々言ってるけど無視することにする。なぁに、彼らも本気で遠野を化け物だとか言ってるわけじゃなくて、ネットの悪ノリって奴だ。

 俺もそのくらいのことはちゃんと察せるからな。


「ふ、ふふふふふ、ふはははははは!

 よかろう、貴様らに理屈が通用しないことは分かった!

 じゃがな、忘れてはおらぬか、ワシはこの画廊の……否、この『絵』を支配するダンジョンマスター!

 ワシの力を見せてやろう!」


 そして画魔蛙が筆を振るうと、アトリエに散乱していた画材が一斉に宙に舞った。


「これは!」


 瓶から、缶から、皿から、椀から、チューブから、絵の具、顔料、インク、それらが飛び散り――渦を巻く。


「ぬは、ぬはは、ぬははは! 見よ、これがワシの力じゃ!」


 画魔蛙が叫ぶと。渦を巻いた絵の具や顔料が、画魔蛙を雪崩のように飲み込み――収束していく。そしてそれは一つの形を成型した。


「な……っ」


 それは――巨大な黒い蛙だった。


「そのまんまでかくなっただけかよ!」


 健吾が叫ぶ。


「ふはは、馬鹿め! この『絵』の支配者のワシが、この程度のこともできんと思ったか! ワシは画魔蛙、あらゆるものを描き支配する大妖じゃ!」


 画魔蛙の巨大な足が俺たちを踏み潰そうと落ちてくる。


「ちいっ」


 俺たちはそれを飛び退いてかわす。


「このっ」


 弥子ちゃんがその足に飛びつくが、まるで効果はない。画魔蛙は構わず足を振り下ろし、弥子ちゃんを踏みつけようとする。


「させるか!」


 俺はそれを受け止めようと手を広げるが――


「うおっ!?」


 強烈な重量に思わず悲鳴が上がる。


「ぐ……っ、弥子ちゃんとエマちゃんは下がってろ!」


 俺はその足をなんとか受け止めようとするが、とてもじゃないが支えきれない。


「ぐ……っ!」

「鬼畜さん!」


 弥子ちゃんの悲鳴が聞こえる。どうでもいいがキチクじゃなくて鬼畜って言ってるだろ。


「くはは、無駄じゃ! この『絵』の支配者たるワシに、貴様ごとき人間風情が勝てると思うてか! このまま一気に圧し潰して――」

「【フラワーズ・ブルーム】っ! 竹の花を咲かせる!」


 健吾が叫ぶ。そして俺の足元からタケノコが伸び、成長して花を咲かせた幾本もの竹となる。


「ぐわあっ!」

「――っ、助かったぜ健吾っ!」


 竹が画魔蛙を持ち上げ、転倒させる。俺はその隙を逃さず、飛び退いて距離を取った。


「く……っ、人間風情が! 小癪な真似を!」


 画魔蛙が竹を引きちぎり、立ち上がる。


「だが、所詮は無駄な足掻きよ! 貴様たちではワシには勝てん!」


 画魔蛙が勝ち誇る。

 確かにあの巨体……それに絵具を極限まで混ぜて黒一色となった状態では、かき混ぜて絵としての性質を失わせるということも出来ない。


 厄介だ。


 だが――


「厄介なだけのでかい妖怪なんて、さんざん退治してきた!」


 俺は叫ぶ。

 そう、妖怪を退治するのが遠野の民の生き様だ。


「いくぞ健吾! 遠野パワー・プラス!」

「おうよ! 遠野パワー・マイナス!」


 俺達は叫ぶ。そして俺達の掲げた右腕が光る。


「うおおおおおお! 遠野クロスラリアット!!」


 俺と健吾は画魔蛙の巨体を駆け上がり、そして頭部にクロスラリアットを叩き込んだ。


「グゲァア――――――ッッ!!」


 画魔蛙が絶叫する。


 俺達のクロスラリアットの衝撃で、黒い巨体から小さな……せいぜいがウシガエルサイズの画魔蛙の本体がはじき出され、地面に落ちた。


「うん、なにアレ」

「私にもわかんないです」

「うわー、シュウゴが二匹に増えたー」

「きゅーぅ」


『ナニアレwwwwwwwww』

『俺はさ、キチクだけがやべーのであって遠野人はマトモと思ってたんだ……』

『キチク二号かよ』

『そもそも遠野パワーってなんだ、なんか光ってたぞビカって』

『俺達は何を見せられているんだ』

『シュポーンって飛んだぞカエルが』

『黒ひげ危機一髪かよwwwwww』


 千百合たちやリスナーが喝采している。うむ、我ながら今の必殺技は中々だった。


「ぐ、お……っ」


 そして画魔蛙の本体がよろよろと這いずる。む、まだ生きてたか。


「ゼイ肉とっちまえば本体はコレかよ」


 健吾がいう。その言葉に対し、画魔蛙は……笑う。


「く、くそ……っ、ワシが、このワシが……こ、こんな所で、こんな理不尽な化け物どもにやられるなど……」


 誰が理不尽だ。妖怪に言われたくない。


「ふ、ふひひ、ひゃはははははは。

 じゃがな、ワシはダンジョンマスターじゃ。この絵のダンジョンを支配している!

 ろくに魔物も出ないカスみたいなダンジョンじゃが、ひとつだけ違う点がある……

 ここのダンジョンコアは意志を持つ悪霊、そしてその悪霊は……その気になればこの世界そのものを圧し潰せる、貴様らごとなあ!」

「な……っ」


 画魔蛙が、最後の力を振り絞って叫んだ。


「さあ、我がしもべ、画霊久陽よ!


 ダンジョンマスターたるワシの命に従い、奴らを――この世界ごと圧し潰せいッ!!」



 その言葉に従い――供養絵額に描かれた少女、久陽が現れた。

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