表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/145

第11話 ダンジョンコアを前に

「そ、それを壊されたら、こ、ここは……地上と繋がらなくなってしまう」

「いいことだな」


 マヨイガのダンジョン化は止まる。


「だ、だけど……そ、そうなるとだな。わ、私が地上に……出れなくなる」

「なんだ、お前地上に出てるの?」

「い、いや。出た事ない。だけど地上ってアレなんだろ、わ、私がとても綺麗でかわいい美少女でちやほやされるくそちょろい世界なんだろ、い、いきたい……」

「……」


 自己評価が肥大化してるなこいつ。

 卑屈なのか傲慢なのかどっちかにしてくれ。


「つ、連れてって。お願い、地上にいきたい! その後なら要石ぶっ壊してもいいから!」

「お前本当に責任感とかそういうの無いのな!?」

「あ、あのババアに押し付けられた仕事とか、知らない知ったこっちゃない」


 笑う豫母都志許賣。

 だけど……。


「連れてけって無理だな。法律で、ダンジョンから何かを持ち出すことは未成年の俺は無理なんだ」

「に、人間の作った法律なんて……わ、わたしには関係ないし、黙ってればいい」

「いや駄目だよ? そもそも今の会話も生配信してるから記録残ってバレるし。そもそもお前妖怪なんだからバレたら色々と大変だぞ」

「ひっ……わ、私を殺すの?」

「俺は別にそうするつもりはないけど……ヤバいハンターに見つかると狙われるだろうし、ダンジョンから出てきたモンスターだ、と思われてもやばいぞ」

「そ、そんな……せっかく我が世の春きたと思ったのに……ううう……」


 めちゃくちゃ凹み出した。

 どうしようこれ。


『流石に可哀そう』

『喋るダンジョンモンスターってレアだしいいんじゃない?妖怪だし』

『それ判断するの国では』

『出してやれよ』

『俺がかくまいたいです』


 コメント欄が豫母都志許賣の擁護に回っている。

 まあ……庇護欲は沸くだろうな。同時に嗜虐心も刺激されそうだけど。


『モンスターテイマーいたらいいんだけどな』

『テイマースキルだっけ』

『うむ。ダンジョンのモンスターは原則外に出せないけど、テイマースキル等で支配下に置けば外に出すことも出来る』

『でもキチクはスキル無しだしな』

『それな』

『じゃあ無理じゃねえか』


「うーん……いや、でも。

 テイマースキル「等」によって支配したモンスターなら、だろ」


『?』

『どういうこと?』


「いや、普通に拳っていうか? 無理矢理力づくで言う事聞かせた形にすれば大丈夫なんじゃないかなって」


 幸いにも会話可能、意思疎通出来る知性があるわけだし。

 外でモンスターが暴れるのがダメというのがこの制度の根幹なのだから。


『脳筋wwwwwwww』

『さすがスキル無しその発想はなかったwwwww』

『モンスターテイム(物理)』

『鬼畜すぎるwwwww』

『そんなんできるのお前だけや』


「いや、遠野物語の河童淵とかの話だって、悪戯した河童をこらしめて言う事聞かせてるわけだし、普通だろ」


『そう言われればそうだが』

『論理のすり替えでは?』

『やはり遠野がおかしいだけでは?(ぐるぐる)』

『もうそれでいいです』

『もうお前妖怪テイマーだわ』


 そんな俺たちに対し、豫母都志許賣は……


「そ、そそ、それでいいです、従いますので連れてってください、えへへ。く、靴舐めればいいですか」

「……」


 もうちょっとプライド持とう?


 痛々しくて泣きたくなってきた。どれだけ今まで底辺人生だったんだよ。

 いや、昨日まで底辺配信者だった俺としてはすごく共感するし同情するが、だからこそやめてほしい。もっと胸を張ろうよ。


「じゃあ、改めて……あとはダンジョンコアを破壊するだけか」


 そうすれば、マヨイガは解放される。


『ちょっと待って、マヨイガがダンジョンじゃなくなるって事は消える?』

『もったいなくない?』

『確かにもったいない』

『ダンジョン消すのって罪にならなかった?』

『ならない。権利は最初の攻略者にあるからな』


 ダンジョンは本来誰のものでもない。

 しかししいて言うならば、ダンジョン入口が現れた土地の所有者のものであり、そして最初に攻略した探索者のものである……となる。


 ダンジョンコアを破壊したなら、ダンジョンは消える。ダンジョンによって違いはあり、ゆっくりと朽ちていくものもあれば、盛大にその時点で倒壊していくダンジョンもあるという。


 だが、ダンジョンは危険であると同時に、莫大な資源と富を生み出す。

 それゆえに、探索者はダンジョンを攻めるのだ。


 もし未踏未掘のダンジョンを見つけてそれを最初に攻略して自分のものにすれば莫大な富が手に入る。ダンジョンの権利をそのまま国に売ってもいい。それで一気に大富豪になった探索者もいる。


 しかし俺の目的は、マヨイガを開放することだ。


 そのためには、ダンジョンコアを破壊するしか……。


「いやまあ、いち探索者としては確かにもったいないとも思うのは事実なんですが」


 必死に一直線で突破してきたけど、でもこういう入り組んだ和風秘密基地みたいなダンジョンは初めてだったし。


『確かに』

『俺も挑んでみたい』

『マヨイガダンジョン探索したい』

『キチクだけが探索して終わりとかもったいなさすぎる』

『アーカイブみて文句言う奴絶対出てくる』

『国ブチキレ案件では』


 俺の言葉に、リスナーたちも賛同する。

 リスナーにもダンジョン探索者はいるし、興味を持ってる人も多いのだろう。


 さて、どうしたものか……。


「え、えっと……いいですか」


 悩んでいた俺たちに、豫母都志許賣がおずおずと口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ