ペット自慢
「可愛いなぁ!」
「そうだろう!?」
大学の講義室、友人たちが前の席で騒いでいる。僕は席から身を乗り出して、二人に声をかける。
「何が可愛いの?」
「お! 木崎、お前も気になるか!? うちの猫を見てくれよ!」
「俺のも! うちのは柴犬!」
二人は目を輝かせると、それぞれのスマホを僕に差し出した。彼らのスマホには、猫と犬の写真が表示されている。騒ぎの原因はペット自慢が原因のようだ。可愛いらしい理由である。
「ん、どちらも可愛いね」
「そうだろう!? で、木崎はどっち派だ?」
「犬派だよな?」
素直な感想を口にすると、猫と犬のどちらが好きか問われる。
「僕は――派かな」
「ん? 何だって?」
「もう一回言ってくれ」
猫も犬も可愛いと思うが、僕の一番はどちらにも該当しない。僕が愛し好んでいるペットの種類を口にしたが、彼らは首を傾げた。講義前の騒がしい状況では、聞き取れなかったようだ。仕方がない。
「このコだよ」
もう一度口にするのは容易いが、写真を見せた方が早いだろう。僕はスマホを取り出し、一番可愛く写っている写真を彼らに見せた。
「ん? 二人とも?」
写真を見た彼らは何故か、机にうつ伏せてしまった。体が小刻みに震えていることから、僕のペットの可愛さに悶えているのだろう。魅力が広まったことに嬉しく、微笑むと講義開始を告げるチャイムが鳴った。
友人たちは講義が終わっても、起きることはなかった。