『本格派魔法世界からの苦情』
ナーロッパといえば、魔法である。
とはいえ魔法といっても種類は様々であり、ナーロッパ内でも世界によって違うことも多い。
攻撃魔法、治癒魔法、といった区別から、火水土風の四元素を司るものまで。はたまた、そもそも区別はなく、詠唱さえすれば、いや、無詠唱でもイメージだけで発動できる魔法もある。
そこで、だ。
残念なことか喜ばしいことなのか、本格派ファンタジー世界の管理者から、魔法に関して苦言が来ているので、それを紹介しよう。
とはいえ、苦言といっても、あまり相手にされていない感じもするので、私としては非常に悔しいのであるが。
まず、魔法とはそれほど簡単ではないようである。特に、無詠唱で魔法が発動できるのがおかしい、とのことである。
それもそうかもしれない。
イメージでできるというが、中々に頭の中のイメージを発動条件のないまま実現するというのは、かなり難しいものである。私達が何かをしようと思う時、残念ながらそう思うだけでは、私達の体は動いてくれない。念じたとて、動いてくれるわけではない。念じるのではなく、何故かわからないが神経が繋がって動いてくれるのだ。何かをしようと思って、それから実際にそれをするまでの間、私達自身に何が起きているのかは、正直よくわからない。
哲学的な話に逸れそうなのでひとまずここまでにしておくが、その神経の仕組みを魔法で再現するというのは、中々なものである。
だからその苦情はもっともではある。
だが逆に、それこそ詠唱が必要な魔法という概念を捨てた方がいいのかもしれない。
ナーロッパでは、魔法は制御の難しい超常現象ではなく、生まれつきインプットされた人間としての第六感のようなもののようになっているような気がする。私達が自分の体を自由に動かせるように、魔法を発動させられるのだろう。
ナノマシンといった具体的な原理が提示されている魔法もあり、それが、ナーロッパ魔法の科学性を示している良い例ではなかろうか。魔法はきちんとルールを守り詠唱をしなければ必ず暴走するのではなく(もちろんナーロッパでもその場合はあるが)、研究され、科学のように人間が自在にコントロールできるものになってきているように思える。
だからそもそも、本格派魔法ファンタジー世界における魔法とは根本的に異なり、比べようがないのだ。
本格派ファンタジー世界の管理者には、そういう風に理解していただきたい。そちら側としても、ナーロッパなどは相手にしていないとは推測するが、こちら側としても、本格派ファンタジーに対抗する気はあまりないのである。少なくとも、路線はかなり変わってくるだろう。
ただ、本格派ファンタジー世界の魔法については、大いに参考にさせていただきたい。ナーロッパの魔法というものは、様々な媒体から得られた知識に工夫や改良を重ねて形成されてきたものである。例えば火水土風の四元素は、古代ギリシアの哲学者エンペドクレスの説に基づいているとも言われる。そのため多くの読者にとってわかりやすく、夢があるものになっている。
n番煎じと言われようが、そのナーロッパ魔法が今日まで続いてきている理由は、必ずあると思うのだ。
リスクが多く、呪われることを恐れながら使うような魔法よりも、生活レベルで使える魔法の方が、ナーロッパの住民のQOLを向上させるだろう。ただ、身分によって使えないことも多いようなので、そこは改善点かもしれない。もちろん、魔法による身分制度、階級制度が、世界の秩序維持に役立っていることも無視はできないのだが。
本件については、私から言っておきたかったことは以上である。
今後もナーロッパの存続と平和を希求していきたい。