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夜行さん  作者: 原月 藍奈
人喰いの屋敷編
65/66

決着 5

 気を取り直さないと。


 私はパンと乾いた音を響かせて両頬を叩く。それから『喫茶 百鬼夜行』の皆に向かい合った。


「あの。お願いがあるんだけど」

「「「「?」」」」


 妖怪達は顔を見合わせる。


「……山本さんを探すのを手伝ってほしい」

「ナンだよ。そんなことか。ビックリさせやがって」


 河童は自身の頭をボリボリ掻くと、一つ頷く。


「ま、言われなくてもそうするつもりだったしな」

「むしろこっちが助けられたんだから。そんなこと言わなくてもいいのにのぅ」

「!」


 河童とコナキ爺の言葉に、私はまた涙がこみあげてくるのを感じながら、ギュッと唇を噛んだ。それから頭を下げる。


「ありがとうっ。お願いします」


「ほんと、どのあたりがあの母親に似たのかしら……」と雪女が小声で呟いたのと同時に、私はクシュンとくしゃみをした。






夜行(やぎょう)さん視点―




 朝日が顔を出している。こうして『喫茶 百鬼夜行』以外の場所から、朝をむかえるのはかなり久しぶりだ。


 それなのに。……その朝を一緒にむかえる相手が、田中 明愛梨(めあり)の夫である日髙 (つとむ)とはな。


 俺が神社に着くと、すでに日髙 剣は鳥居の前で待ち構えていた。


 日髙 剣はこちらを睨みつけている。だが首無し馬に乗せられた「モノ」を認識すると、目を見開き顔色が悪くなった。


 それもそのはず。首無し馬に乗っている「モノ」は、田中 明愛梨の死体だからだ。


 俺は馬から明愛梨を抱えて、剣の目の前に降ろした。


「…………」


 降ろしてから五、六歩下がったが……。剣はすぐには明愛梨の死体に飛びつかず、こちらを睨みつけている。


 この警戒心……。


 俺はこの男の娘である、日髙 (あかり)を思い出す。

 思い浮かぶのは涙を流している姿だ。


 妖怪を信用するどころか、妖怪の為に涙を流すとは。ほんと、どのあたりが両親に似たんだが。


 どこかでクシャミの音が聞こえた気がした。


 物思いにふけっていると、「それで。陽はどうした」と声がかかる。


 剣の言葉に一気に現実に引き戻される。


 剣は相変わらずこちらを睨みつけている。


「どうせお前と一緒に『人喰いの屋敷』を倒しに行ったんだろう。倒したのか。陽は……無事なのか」

「ああ。『人喰いの屋敷』を倒して、お前の娘も無事だ。今、『人喰いの屋敷』に巻き込まれた、うちの店の常連を探している」

「そうか」


 剣はホッと安心したかと思うと、やっと明愛梨の死体に顔を向けた。剣はそっと明愛梨を抱き上げるが、顔が再び険しくなる。


「この明愛梨は何だ」

「……」


 一瞬、答えに詰まった。だが、結局正直に言うことにした。


「『人喰いの屋敷』の成れの果てだ」

「…………――――」


 そう答えた瞬間、剣の雰囲気が変わる。明らかな殺気――――。


 足が後退してしまいそうなのをグッと堪える。


「お前、明愛梨が『人喰いの屋敷』だと知っていたな。そのうえで娘を巻き込んだのか」

「…………ああ、知っていた」


 知っていた、というよりも、勘づいていたの方が近いだろう。その上で、『人喰いの屋敷』でなければいいと思っていた。

 アイツは俺の「恩人」だから――――。


 『人喰いの屋敷』がアイツだと勘づいたうえで、日髙 陽を利用した。娘がいれば多少は情けをかけるだろう。そうすれば、かけられた術を解きやすくなる。

 そういう思惑があった。


 剣は鋭い目つきを向ける。今すぐにでも殴りかかってきそうだ。だが明愛梨を抱えては殴れないと思ったのか、こちらに背を向ける。


「やはり、お前とは一生分かり合えないな」


 そう言って、鳥居の奥へ入っていった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


陽の父親と夜行さんの確執については、近いうちに出てきますのでお楽しみに!

次回は美術館に残った陽視点です。

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