表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜行さん  作者: 原月 藍奈
人喰いの屋敷編
62/63

決着 2

 夜行さんから合図が出た。夜行さんの体は徐々に透けていっている。


「!!!」


 足が重い。喉がキュッと痛くなって瞼から自然と涙が溢れてくる。本当は夜行さんを助けに行きたい。でも。


 夜行さんの瞳が真っすぐにこちらを捉える。


「っ――――」


 私は強引に瞼を袖で拭って、夜行さんに見せつけるように刀を構える。一度息を吐いてから深く息を吸う。


 今のうちに。人喰いの屋敷が夜行さんに引きつけられている今のうちに。早く。


 私は一気に息を吐いて地面を蹴った。影に貫かれた夜行さんの横を見向きもせず通り抜けていく。そしてそのまま人喰い屋敷の、母さんの前に出た。

 影が私に気付いて下から湧き上がってくる。けれどもう遅い。影が出た時にはすでにもう私の刀は母さんに向けられていた。


「……母さん、ごめん。夜行さんを、返して」


 刀は綺麗に弧を描き、母さんの胸元を斬りつける。斬りつけられた母さんの胸元から赤黒い血が流れる。極めつけに口からも血が滴り落ちた。


「っ!」


 母さんはもうとっくに死んでいるはず。それなのにどうしてっ。


 思わず動きが止まる。その一瞬の隙で、周囲を影に取り囲まれてしまう。


(あかり)!!!」

「!」


 夜行さんに名前を呼ばれた。だがその夜行さんも影に突かれたままで、今すぐにも消えそうだ。


 このまま負けるわけにはいかないのに。私は人も妖怪も守れる退治屋になりたいのに。


 けれど影は容赦なく一気に私に向かってくる。


 貫かれるっ!!!


 そう覚悟を決めた瞬間――。


「ぴい!!!」


 懐かしい声が聞こえた。


 そうだ。ぴーちゃん。山本さんを追っている時にはぐれてしまって。それからいろいろありすぎて探す暇がなかった。


「ぴーちゃん! お願い! 力を貸して!」


 咄嗟に叫んだ。と、何故かぴーちゃんが夜行さんの服から飛び出してきた。ぴーちゃんはみるみるうちに巨大化していって、私と影の間に入る。そして私の代わりにぴーちゃんが影に貫かれた。


「ぴーちゃん!」


 ぴーちゃんはみるみるうちに小さくなっていく。けれど。違和感があった。――――ぴーちゃんはまだ死んだわけではない、と。


 山童も夜行さんも。透明になって消えるのに対して、ぴーちゃんはそうなっていない。元々ぴーちゃんは新しい妖怪で、言霊によって生まれていて……。


 そこまで考えてハッとした。


「ぴーちゃんは夜行さんを助けて! 私はもう一度人喰いの屋敷を斬りつける」


 するとぴーちゃんは再び巨大化していく。


 やっぱり。私の言霊でぴーちゃんは強くも弱くもなる。


 ぴーちゃんは大きな嘴で夜行さんを貫いている影にかぶりついていく。そのぴーちゃんの様子を見て、私も力が湧いてきた。


 一緒に戦ってくれる仲間がいる。それだけで自分が無敵になったかのような感覚がある。


 今度こそ。人喰いの屋敷を。


 もう一度地面を強く蹴って、母さんの前に飛び出す。影はぴーちゃんと、弱りきった夜行さんを取り込もうと必死で、こちらに向かっては来ない。

 刀を大きく上に振り上げる。勢いのまま、母さんを斬りつける。斬りつけるのと同時に大量の血が顔にかかった。


「っ」


 けれど顔にかかった血を振り払うことなく、続いて二撃。三撃。攻撃を続けるごとに影はボトボトと地面に落ちて消えていく。


「……陽」


 母さんの声が微かに聞こえる。けれどその声を無視して唇を噛みしめ、母さんの心臓めがけて刀を突き刺した。

 その瞬間、磔にされていた母さんが床に崩れ落ちる。影は消え去り、異様な気配はなくなった。


 お、終わった……。


 ホッと息を吐いて肩を落とす。


「元気で、な…………」

「!」


 そう最後に母さんの声が聞こえた気がした。


ここまで読んでくださりありがとうございます。感想・レビューいただけると、めちゃめちゃ喜びます!


二日続けての投稿でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ