正体 4
陽視点
私は『喫茶 百鬼夜行』の妖怪を引き連れて、美術館の中を進んでいく。
なんだか不思議な感じだ。妖怪と一緒にいるなんて。
私は周りに注意を払いながら、どうしても母さんを思い出してしまう。
この不思議な縁も母さんが残してくれたもの、なんだよね。
思わず涙目になりそうなのをグッと堪える。
今は泣いたら駄目。私のすべきことを、やり遂げるまでは――。
そう覚悟を決めた瞬間、とある絵が目に入って立ち止まる。
「急に何よ」と雪女。
「うん。この絵…………」
私が立ち止まったのはムンクの『叫び』だ。
薄いけれど。この気配……。
「夜行さんの気配がする」
「「「「え?」」」」
「え?」
四人共何故か驚いた声を出す。その反応に私も驚いた声を出してしまう。
河童がズイッと前に出てくる。
「夜行サンの気配、ホントにするのかよ」
「う、うん。薄っすらだけど」
「……正直、オレらには感じねぇけど」
「え」
皆の顔を見渡す。と、確かに困惑したような表情をしていた。
夜行さんといた時間は四人の方が長いし。気のせい? でも。確かに夜行さんの気配がする。
「本当に夜行さんの気配がするんだね」
コホコホと咳込みながらコナキ爺が問いかける。それに私は強く頷く。
「なら、わしは陽さんを信じるよ」
そう言ってコナキ爺は小刀をムンクの『叫び』に向かって投げた。その瞬間、ぶわっと黒い靄が辺りに広がる。
やっぱり。ここに夜行さんがいる――。
そう思う間もなく、影が絵の中からこちらに向かってきた。
「っ!」
速い!
咄嗟に刀を抜く。だが私が刀を振るう前に冷気が周囲を覆って、影は凍りついた。
「ちょっと。気を抜かないでよ」
「うん、ごめん」
「…………まぁ、そういう素直に謝るところはアイツに似なくて良かったわ」
「え?」
雪女とやりとりをしている間に、天狗が羽団扇を取り出して強風を絵に叩きつける。縦に傷が入った。
かなりの強風だったはずなのに、傷しか残せていない。
私は天狗の後に続いて刀を振り上げる。傷跡をなぞるように強く斬りつけた。傷跡はさらに深く、そして広がる。その広がった傷跡の中に黒い影と、目を閉じた夜行さんが見えた。
ぶわっと鳥肌が立つ。
まさか。夜行さんが殺られるなんてことは。
「夜行さん!!!」
大声を張り上げる。と、夜行さんが目を開けた。
良かった。まだ間に合う。
私は広がった傷跡に手をかける。
「夜行さん!!!」
縦に入った傷はどんどんと広がり、私は転がるように傷跡の中入っていった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
自分で書いておいて変な話なのですが。書きながらやっぱり雪女好きだなぁ~って。
まだコナキ爺と河童が活躍できていないので。次回こそは活躍させてあげたい!!!




