決戦 7
再び主人公視点です
闇、闇、闇――。辺りには暗闇しかない。
その暗闇に私は立ち尽くすしかなかった。
『人喰いの屋敷』に飲みこまれて……。どうなったんだっけ。もしかして私、死んじゃった? 父さんは表情には出さないけれど。怒りつつも悲しんでくれるだろうなぁ。蘭ちゃんは大号泣だろうし。夜行さんは…………どうなるんだろう。『人喰いの屋敷』を倒して無事に術を解くことが出来ただろうか。山本さんを助けてくれたかな。
「…………夜行さん。山本、さん」
私は小声で呟いてから、ブンブンと首を振った。
弱気になっちゃダメ。無事だろうか、助けてくれたか……じゃない。私が救いに、助けに行かなくちゃ。だってそれが退治屋の役目なんだから。
私は真正面から闇を見据える。何も見えない。けれど。私は一歩、また一歩と足を踏み出した。
大丈夫、大丈夫。今は何も見えなくても。進んでいけば何かがあるから。
自分で自分を励ましながら歩いていく。と――。
「……陽」
「っ」
誰かに名前を呼ばれた。
女性の声。どこか懐かしさを感じるような。
私は暗闇の中、声だけを頼りに歩き出す。
罠かもしれない。けど。このまま暗闇の中にいるよりはいい。
そう思っていると、一気に周囲が明るくなった。一瞬目をギュッと閉じてしまうが、何度か瞬きをして目を慣らさせる。
すると数メートル先に女性がいた。
「陽」
女性は私に向かって手招きをする。女性は私と同じように巫女服を着ていて、髪は茶髪のショートカットだ。それが巫女服であるにも関わらず、ボーイッシュな雰囲気を醸し出している。
私はその女性の顔にわずかだが見覚えがあった。多分……話したこともある、はず。私が幼い頃だから、あんまり記憶に残っていないけれど……。
「……かあ、さん?」
私が六歳の頃に行方不明になっていた、母さん。田中 明愛梨。
久々に会えたのに。嬉しいはずなのに。人は予想外のことが起きると、ビックリしすぎて涙が出ないらしい。
そんな私に母さんは「陽」と白い手で手招きをする。
「よくこれまで頑張ったね」
「ほ、本当に母さん、なの?」
私はか細い声で問いかける。と、母さんは「ええ」と苦笑いをする。
「今まで一人ぼっちにさせてごめんね」
その優しい声に、一気に母さんと距離を詰める。母さんは私の頭に手を伸ばし優しく撫でた。その手の優しさにやっと目に涙が浮かんでくる。
「母さんは……。今までどうしていたの?」
「私はずっとここに、『人喰いの屋敷』にいたの」
「!? それじゃ、早くここから出ないと!」
私は頭を撫でる母さんの手を強引に払って腕を掴む。けれど母さんはその場から動こうとしない。
「母さん?」
「私もずっとここから出ようとしているけれど。どうもこの場所は中からじゃ出られないみたい」
「そんな!?」
「でも大丈夫。夜行さんも一緒に来てるんでしょ」
「う、うん」
「だったら夜行さんに任せましょう」
「でも」と私が言おうとすると母さんは唐突にその場に正座する。
「それよりも。陽も疲れたでしょう。ほら。ここに頭を預けて」
そう言って母さんは正座した自分の膝をポンポンと叩く。
「え」
つまりは母さんが膝枕してくれるってこと? さすがにいくら何でもそれは……。
そう思っているのに体が自然と横たわって、膝に頭を乗せてしまう。
だって。行方不明なんていったって。きっと死んだんだろうと思っていた母さんが、今、目の前にいる。父さんも私を大事に思ってくれて、きっと甘やかしてくれていたんだろうけれど。それでも。幼い頃の私は母親が恋しかったから。
母さんは寝っ転がった私の頭を優しく撫でる。
「このままちょっと寝ちゃいなさい。夜行さんが来たら起こしてあげるから」
「うん」
私は軽く目を瞑った。
ここまで読んでくださってありがとうございます。それからレビューもこの前、いただきまして。本当に嬉しいです!
引き続き、感想、レビューお待ちしています。
いよいよここまで来たか~と感慨深い気持ちです。主人公、頑張れ!と書いている私自身も応援しちゃってます。




