第三章 -地獄編-
第3章 -地獄編-
『西暦3276年-Atmosphere-』
灯火「じゃあ、ちょっと行ってくる。」
桜「やっぱり私も……」
灯火「いや、狭いし邪魔。重いし……主に胸が……」
桜「灯火……そんなに自分を卑下しないで……1200年前のとある集団の古文書にはむしろステータスだと……」
灯火「ほほう、わかってるじゃないか古代人!!」
桜「その集団は忌み嫌われ迫害を受け、最終的には強制収容所で全滅したと…」
灯火「1200年前の奴らめ……死んで償え。まあ死んでるけど。」
桜「あははは……でも気をつけてね」
灯火「大丈夫、自動補給とかで…今まで使えなかった武器とかも使えるように
なったっポイし……」
灯火「それに、あの腹ペコポンコツロボに任せておけないでしょ……」
桜「うん、天罰機がもう一機あれば私も戦えるのにね。」
灯火「それは言わない約束よw」
桜「そうだっけ?」
灯火「じゃあ、行ってくる……天罰機バイラヴィ、出撃!」
補給を終えた天罰機バイラヴィは空高く旅立って行った。
『西暦2265年-Stratosphere-』
明弘「ヒャッハー、今日もアスラを狩って狩って狩りまくってやるぜえええ」
今日もトリプラのブラックホール炉の鼓動が俺を高ぶらせる。
明弘「おらー今日も見てるかビチグソ共。ショータイムの始まりだぜ!!」
咲夜「明弘……………物凄い悪人みたいに見えるんだけど……」
今日の俺は一段とブチ切れてる。
空と咲夜がなんか……イイ感じだからだ。
アスラに八つ当たりしてやるぜ。
おおっと、観世音にセラフィム……あれはレアなケルビムタイプか?
明弘「レトリバー小隊、全機…対神誘導弾、全弾発射用意。」
空「全部…撃ってもいいの?」
咲夜「最初に敵戦力を削ってから各個撃破、質量の大きい対神誘導弾は最初に撃って、コレ基本だから忘れないで」
空「うん、ありがとう咲夜」
咲夜「べっべつにお礼を言って欲しかったんじゃないからね。勘違いしないでよね」
なんかムカムカする……
明弘「対神誘導弾、全弾発射!」
トリプラ、パールヴァティ、バイラヴィから対神誘導弾全弾が放たれアスラ達に吸い込まれて行く。
明弘「全機オーバーブースト、セラフィムΔ(デルタ)、セラフィムε(イプシロン)を中心的に狙え、ケルビムΣ(シグマ)は俺がもらう。」
「乱暴者……」
「お前なんか生まれて来なきゃ良かったのに……」
「クシャトリアは全会一致でアイツだよね……」
けっ………今日のセラフィムεの読心は俺か?
明弘「地球の周りを回って回って、スイングバイでアスラを狩りまくれ、オーバーブースト終了時点で帰投する。速度が落ちるタイミングに注意。」
空「うん、弾は……」
明弘「好きなだけ撃って良し」
ケチくさい補給部隊の気前が物凄く良い。
いつもは対神誘導弾全弾をパールヴァティにしか積んでくれないのだが……
この宙域を突破されたら補給部隊も全滅だ。
奴らも惜しまず弾をくれる。
本当にクソ野郎ぞろいだぜ。
明弘「オーバーブースト、遠心力で弾き飛ばされるなよっ」
星々が線を引く……マッハ8800への急加速……
俺はクシャトリアシステムの内部カメラに思いっきり中指を立ててやる。
明弘「見てろよビチグソ野郎ども!、くたばれアスラ、さあ、行くぜトリプラ…楽しいパーティの始まりだぜ、ヒャッハーw」
『西暦3276年-Atmosphere-』
バイラヴィは大気圏を超える。
灯火「あれかな?」
バイラヴィより一回り大きな天罰機が見えた。
羽が一枚吹き飛んでる…そして何故か光り輝いている。
灯火「いきなり後ろからレーザートマホーク発射!!」
カーリーにレーザートマホークが命中、爆発した。
さすがに一発じゃ壊れないか……
何あれ?
カーリーのかざした光の柱が上方より振り下ろされる。
灯火「バイラヴィ、避けて」
バイラヴィは凄い速さで回避する。
光の柱をかわせる……宇宙だからか……それとも補給した核燃料のせい?
まるで別物……これなら戦える。
私の両親、桜の両親……島の皆の仇。
灯火「対神誘導弾っ、全弾発射」
灯火「グラビティブラスト三連正射」
桜がイズモで見つけた天罰機マニュアルによる攻撃を片っ端から試す。
カーリーが爆炎に包まれる。
やった……か?
カーリーから光が発せられる。
なに?
何かがカーリーの中から出て来る?
黄金に輝く少年のような姿……違う、アレは天罰機なんかじゃ無い。
セラ「灯火、アレはアスラ……人類の天敵です。」
セラ「カーリーは1000年以上前に乗っ取られていたようです。」
灯火「じゃあ、アレがみんなを……」
セラ「半分アスラに乗っ取られながらも、選ばれた者達を殺し続けたカーリー……
彼女は滅びました。」
セラ「でも、アレが本当に目覚めると大変な事になるのです。」
灯火「そんな事言われても……」
セラ「大丈夫、私の戦い方を見ていて下さい。」
セラ「・・・」
セラは大きく空気を吸い込むような動作をした。
セラ「このビチグソ野郎。パーティーの始まりだぜクソったれアスラっ!!」
『西暦2265年-Stratosphere-』
明弘「セラフィムεを中心的に狙え、ケルビムΣ(シグマ)は俺がもらう。」
「乱暴者……」
「お前なんか生まれて来なきゃ良かったのに……」
「クシャトリアは全会一致でアイツだよね……」
けっ………今日のセラフィムεの読心は俺か?
明弘「地球の周りを回って回って、スイングバイでアスラを狩りまくれ、オーバーブースト終了時点で帰投する。速度が落ちるタイミングに注意。」
空「うん、弾は……」
明弘「好きなだけ撃って良し」
ケチくさい補給部隊の気前が物凄く良い。
いつもは対神誘導弾全弾をパールヴァティにしか積んでくれないのだが……
この宙域を突破されたら補給部隊も全滅だ。
奴らも惜しまず弾をくれる。
本当にクソ野郎ぞろいだぜ。
明弘「オーバーブースト、遠心力で弾き飛ばされるなよっ」
星々が線を引く……マッハ8800への急加速……
俺はクシャトリアシステムの内部カメラに思いっきり中指を立ててやる。
明弘「見てろよビチグソ野郎ども!、くたばれアスラ、さあ、行くぜトリプラ…楽しいパーティの始まりだぜ、ヒャッハーw」
『西暦2265年-Stratosphere-』
セラの様子が明らかにおかしい……何か辛い事でもあったのだろうか?
灯火「ちょっちょっとセラどうしちゃったの?」
セラ「これがレトリバー小隊の戦いなんですよ、アスラ…ルシフェルΖ(ゼータ)覚悟しやがれです。」
セラの恫喝と共に地平線から巨大な物が飛んできた。
あれは船?
セラ「みんな、ガルーダ……ごめんなさい」
巨大な船は一瞬でルシフェルΖを跳ね飛ばし、粉々に砕けた。
セラ「ヒャッハー、地球の引力によるガルーダ・スイングバイアタック成功だぜ、べいべーw」
セラはルシフェルΖに思いっきり中指を立てる。
灯火「いつものセラじゃない……」
粉々に砕けた船の中から…再び神々しい光が漏れる。
セラ「しぶといヤローだぜ、くそったれがっ。」
セラ「灯火っオーバーブーストっ逃げて下さい。」
灯火「オーバーブースト?えー速く飛ぶ奴だったっけ……」
バイラヴィが急加速する。
灯火「むぎゅわああああああ、ちょっ一言……言っただけでしょ……」
急にシートに押し付けられる。
セラ「ルシフェルΖは死者の記憶を読むタイプです。監獄船の遺体の記憶に目を回している今なら……」
『西暦2265年-Stratosphere-』
レトリバー小隊は超加速した状態で地球を周回し続ける。
気を緩めると遠心力でブッとばされそうだぜ。
明弘「撃破数…セラフィム・タイプ不明5、ケルビムタイプ2、観世音25」
天罰機はスイングバイでマッハ一万を遥かに超えた速度でアスラを狩りまくっている。
人類のエースは俺で確定……と、おもいきや……
空は静かに正確にアスラを射抜く、ヤヴぁい……このままじゃ………
咲夜もエースの座も奴にもって行かれる!!
なんかレアな大物はいないのか?
敵機を探しながら飛んでいると、目の前を見知った天罰機が通り過ぎた。
友軍機体データが表示される。
あれはモグラ小隊のサラスバディ……牢獄船ガルーダの牢獄に繋がれてた女か……
非常事態なので希望者はクシャトリアに戻れたようだな。
未希「明弘さん……」
明弘「出られたんだな」
未希「はい、出なければ……あの監獄艦は廃棄されます」
明弘「中に残った連中もいたのか?」
未希「はい、復帰する者だけが出られました」
明弘「一人なのか?」
未希「はい、モグラ小隊は私を残して全滅しました。」
なるほど、いきなり小隊が全滅したからビビって出撃拒否パターンか?
明弘「それでもオマエは戦って生き残ったんだろ?」
未希「はい」
明弘「なら、今回も生き残れ。じゃあな」
未希「明弘さん……」
あの女は大人達のオモチャになってまで生存を得ようとした…
そして今…再び戦場に舞い戻ったか……戦って生き残るために……
思いが複雑過ぎて俺には何も言えない。
まあ、俺たちも処分保留中の身だが……
ふと気を抜いた途端、超高速で飛ぶトリプラに衝撃が走る。
セラ「明弘っ追尾されています。後ろです。」
なに?
マッハ一万を遥かに超えたこの速度、アスラなのか?
少年のような姿…12枚の翼………あれは……
二年戦ってきた俺ですら資料でしか見たことが無い………
セラ「タイプ判明、ルシフェル、タイプΖ(ゼータ)」
くそったれ……ラスボス襲来って事か………
なんでも昔、2個大隊を失ってようやく一体倒せたとか………
しかし……オマエが王様でいられたのは……俺に出会って無かったからだ。
運が悪かったな、天使の王の名を持つクソ野郎。
俺はグラビティブラストを放つ。奴はこの速度で重力波をかわす。
ふん、この程度は想定済みだ。
ルシフェルZが急にバランスを崩した。
何?
空?
空がファランクスを打ち込んだようだ。
やるじゃねえか空。
なんて動きだ、ルシフェルZの行く方向が解っているかのような射撃。
しかし、なぜグラビティブラストを撃たない?
弾切れか?
明弘「空、咲夜…一旦減速して補給を受けろ。コイツは俺が引き付ける。」
咲夜「明弘、大丈夫なの…そいつは……」
明弘「大丈夫だ、安心しな。お前たちが弾持ってくる間くらい。まってるぜ!!」
咲夜「解った……明弘………死なないでね………」
明弘「無敵の明弘様がこんな金ぴか小僧にやられるかっての」
パールバティとバイラヴィは減速する。
セラ「明弘っ危険なのです、打撃戦隊に対応を任せて補給を受けて下さい。」
明弘「あーうるせえロボ子、今最高の気分なんだ、邪魔しないでくれ。」
セラ「明弘……」
咲夜に心配してもらえて更にハイテンションになったぜ。
マッハ一万を超えた世界でアスラの王とチキンレース……最高にたぎるぜ。
明弘「タイマンはこれからだぜ、王様よお………見てるかクソ共」
『西暦3276年-Atmosphere-』
「くるしい、くるしいよ……」
「いやだ…本当は僕だって……」
「何で見捨てたんだよ……」
「さわらないで……」
「気持ち悪い……」
「空気が、空気が無くなる……」
「痛い、痛い、もう殺して……」
「死にたくない、なんで生きられないの……」
灯火「ぜったい、絶対に許さない」
セラ「…………」
ルシフェルZの死者の歌が響く。
セラ「クソったれ野郎………」
セラ「ファランクス全弾正射」
私は金ぴかのクソにありったけのファランクスを浴びせかける。
アスラの王は微動だにしない。
昔…誰かが撃った時はダメージを与えられたのに……やっぱり超加速してないと
勝ち目がないの………
悔しい、このクソアスラだけは私の手で倒したかったのに……
ルシフェルZがゆっくりコチラを向く。
危険な敵だとも認識されていないようですね……
距離を取ろうとする・・・途端に間を詰められ抱き着かれた。
ルシフェルZは私を締め上げる。
どうしようもない……戦力の差が大きすぎます。
セラ「明弘……」
かすかな記憶の中の明弘……強くて、乱暴者で言葉が悪い……彼の姿が目に浮かぶ。
ドゥルガーの私にも心があるって事……これは本当の気持ちなのでしょうか?
人間は最後の瞬間、一番好きな人の事が思い浮かぶらしいです……
セラ「そっか、私は明弘の事……好きだったんですね。」
セラ「1000年以上、気が付かないなんて、とんだポンコツロボ子ですね……」
セラ「でも、恋が出来たって事は……私は人間なのでしょうか?」
セラ「死んだら、明弘の処に行けるんでしょうか?」
セラは胸のあたりに暖かい力を感じる。
忘れていた事、見て見ぬふりをした事、失われた大切な記憶が戻って来た。
灯火「おんどりゃあああああああ」
ルシフェルZが吹き飛ばされる。
灯火「私の友達に、なにしてくれとるんじゃああああワレエえええ」
ファランクス?
超加速しながら地球を回り、私を避けてファランクスを打ち込んだ……
明弘や……空並みのセンスです。
ん?
空って誰でしたっけ?
灯火「いちびっとったら、ケツから手突っ込んで前歯コンコンしてやるワイのおおおお」
セラ「灯火なんだかガラが悪いのですよ。」
灯火「これが貴方たちの戦い方なんでしょ」
セラ「少し違う感じですけど、おおむねOKですよ灯火。」
地球をさらに一周して戻って来たバイラヴィはレーザーブラストをルシフェルZに連射する。
数発が当たる、羽の幾つかが消し飛んだ。
バイラヴィは超高速で通り過ぎる。
ルシフェルZがニッコリと微笑んだ気がした次の瞬間、いきなり超加速で去って行った。
まさか灯火を追いかけて行った……この戦いは……1000年前と一緒………
セラ「だめです、灯火……この戦い方は危険すぎます………」
『西暦2265年-Stratosphere-』
最高だ、今まで戦った相手の中で一番の手練れ。
明弘「やるじゃねえか王様」
ルシフェルZはニッコリと微笑む。
こちらも損傷したが、奴もダメージを負っている。
セラ「明弘っトリプラのダメージは限界です。」
明弘「俺は最高の気分なんだよ、水さすんじゃねえロボ子。」
セラ「明弘………お願い、減速して下さい。」
明弘「黙れえええっ」
セラの忠告を振り切り、俺はルシフェルZに最後のグラビティブラストを打ち込む、当たった?
後はレーザートマホーク3にファランクス50……オーバーブーストは切れ慣性航行中
奴も動きが遅くなった、もう少しだ。
ルシフェルZが炎に包まれ、減速した。
ようやく来たか……
空がゼロ加速状態から放った対神誘導弾が命中した。
ルシフェルZも減速する。
あれでもまだ動いているのか?
地球をもう一周して奴に追いついて、とどめを……
オーバーブーストが切れ、スイングバイで推力を得ているトリプラは減速出来ない。
減速すれば…もう加速が出来ない。
空「咲夜っ」
セラ「咲夜っ引き離して……」
咲夜「くっ…無理……」
明弘「何だ?何が起きている?」
セラ「パールヴァティがっ……咲夜が、奴に取りつかれたのですよ。」
明弘「クソったれ。」
セラ「空っダメです、グラビティーブラストやレーザートマホークではパールヴァティも一緒に……」
空「咲夜っ……」
咲夜「またしても大ピンチね。皆ともお別れかしら?」
空「ダメだっ…咲夜……責任取るって言ったでしょ。」
咲夜「空……アンタは言ってないでしょ。」
空「責任取るから……生きて帰ってデートしよう。」
咲夜「それも楽しそうね。特別にデートしてあげるわよ。でも好きって訳じゃないんだから……勘違いしないでよね……」
セラ「咲夜っあきらめないで!」
まったく……どうしようもない連中だ。
明弘「おい、空……デート何処に行くつもりだ?」
空「えっ?どこって……」
明弘「なんだ、考えて無いのかよ……とりあえず海だ。海に行け。」
明弘「まあ、宇宙に縛られてる俺らが海に行けるかどうかは……今後の戦い次第だがな。」
明弘「空、咲夜とデートか羨ましいぞ!!俺もしたかった。」
セラ「さっきから何を言っているんですか?まさか……」
明弘「セラ…俺はお前の心配性な処が心底嫌いだった。」
セラ「明弘?」
明弘「でも俺はお前の事……そこそこ好きだったぞ」
セラ「何を言っているんですか明弘?」
地球周回を終えルシフェルZがパールバティにしがみ付いている姿が見えた。
ふん、人類のエースを舐めるなよアスラの王!
ファランクス起動、今の状況では最高の武器だ。
俺はこの『神切り包丁』と呼ばれる地味な武器が一番好きだった。
明弘「そりゃあ惚れた女を救える兵器だからなっ」
明弘「行くぞトリプラっ、最高にたぎるぜ!」
トリプラはファランクスをぶっ放す。
ルシフェルZが吹き飛ばされる。
よし、パールヴァティから引き離した。
トリプラはルシフェルZに正面からぶつかる。
加速されたトリプラはルシフェルZを道づれに地球軌道を外れる。
衝突の衝撃でコックピットがゆがむ……気密が失われる。
重力制御システムも機能しなくなった。
ルシフェルZがもがく、ふん、宇宙の果てまで付き合ってもらうぜ。
この加速を殺せる力がお前にあるか?
急激な減圧で肺が機能しなくなる。
明弘「咲夜……空とのデート……楽しめよ…………」
ふん、好きだとも言えなかったな……
最後まで不器用な事だ………
明弘「なあ、見てるかビチグソ野郎ども……」
明弘「一人だけ……俺に入れなかった奴……いたよな……」
明弘「地獄で待ってるぜ……」
トリプラが爆散する瞬間、咲夜の笑顔が脳裏に浮かんだ。
『西暦3276年-Atmosphere-』
体が椅子に押し付けられる、苦しい。
セラ「灯火、後ろっ追尾されています。」
灯火「なんなのコイツ……しつこすぎ!」
セラ「ルシフェルZ、最強クラスのアスラ……明弘でも仕留めきれなかった恐ろしいアスラです。」
灯火「明弘?」
セラ「レトリバー小隊の二代目隊長、最強の戦士、私の初恋の相手です。」
灯火「その恋バナ……後でたっぷり聞くからね。」
セラ「明弘は今の灯火と同じ戦い方をしていましたが、結果……死んでしまったのです。」
灯火「セラ……辛い思いしてきたのね……明弘さんか……」
灯火「バイラヴィ……どうしたらいい?」
セラ「いや、バイラヴィも奴には勝ったことが無いのです。」
灯火「でも、奴は……あのクソったれアスラは弱っている……とバイラヴィは言ってる気がする。」
セラ「たしかにそうです。明弘や空にやられた傷が治っていないのです……でもっ」
灯火「カーリーに取りついて1000年……どのくらい回復したのかな…死にぞこないのクソ野郎は……」
灯火「セラ………奴はギリギリで生き残って来ただけ、セラの元カレのダメージも残っている」
セラ「あっ、あの……明弘は………元カレなる関係では……無かったのです。」
灯火「とにかく……奴は回復はしていない。不思議に思ってた事があるのよ。」
灯火「タイマンは…これからでおます、王様はん………お命もらいうけまっせ覚悟しいやっ。ひやっはー」
セラ「どことなく違う気がしますが……灯火、無理はしないで下さい。」
『西暦2265年-Stratosphere-』
人類は敗北した。
アスラに成層圏以上、地球衛星軌道の制空権全てを奪れた。
戦闘能力のある天罰機は全て大気圏を超え、各地の基地に降り立った。
私達レトリバー小隊が降り立ったのは日本の小さな島。
これといって何もない島だけど……海は綺麗。
真っ赤に染まった海が、まるで死んでいった戦士たちの血だまりのよう。
咲夜「明弘……………私達、帰って来たよ。」
セラ「そーめん、そーめん、おかわりまだですか~?」
咲夜「まだ…食べるの?」
セラ「はい、燃費悪いんですよ。」
咲夜「で、空はもっと食べなさいよ」
空「うん、でもゴメン…食欲がなくって……」
咲夜「そーめん…くらいは食べれるでしょうに……」
咲夜「明弘の事…まだ気に病んでるの?」
空「…………」
私は空をぶんなぐる。
咲夜「明弘は自分の戦いを挑んで、自分の戦いで死んだの……そう思ってあげなきゃ……」
咲夜「それに……元々、私のせいなんだし…………」
セラ「咲夜、暴力はダメなのですよっ。ところで明弘って誰でしたっけ?」
セラは壊れた、明弘の名前どころか私達の事もたまに忘れる。
レトリバー小隊の戦死者は20人を超える……
セラの稼働時間を考えれば、見て来た戦死者は2000人を遥かに超えるはず。
今までは平気だったのに……
セラは悲しみに耐えきれず壊れてしまった。
レトリバー小隊はボロボロだ。
空「咲夜……」
咲夜「空……私も…仲間を失うのは慣れてはいるけど……明弘の事はショックだったの……」
空「デートしようよ」
咲夜「はっ?はああ?今の流れでそういう事言う?」
空「海に行こう……咲夜」
咲夜「……………」
咲夜「うん、そうだね……明日、海にデート行こうね。」
私は空をそっと抱きしめた。
涙が溢れ…私は空に抱きしめてもらいながら号泣した。
『西暦3276年-Atmosphere-』
灯火「ぐええええっミが出る……」
地球によるスイングバイであり得ない速度で飛ぶバイラヴィ。
ルシフェルZが追いかけて来る。
速度を落としルシフェルZの上空にバイラヴィが差し掛かる。
灯火「セラの元カレの仇っ……くらえっ」
私は思いっきりバイラヴィをルシフェルZにぶつけた。
凄い衝撃が走る。
ルシフェルZは腕を伸ばしバイラヴィを締め付ける。
セラ「灯火っ取りつかれたのです。離れてっ締め潰されます。」
灯火「ルシフェルZ……さあ、今まで戦ってきた人類の気持ち……明弘さんの気持ち……セラの気持ち……」
灯火「思い知って燃え尽きなさい。」
私はバイラヴィの高度を一気に落とす。
大気圏の摩擦でバイラヴィとルシフェルZが赤く染まる。
コイツは大気圏を越えられない……それほどダメージが深かったって事だ……
ルシフェルZがたまらずバイラヴィを放す。
灯火「今だっクタバレ、クソ野郎」
私はバイラヴィを立て先端をシフェルZに向ける。
灯火「グラビティブラスト三連正射、レーザートマホーク弾切れまで撃て、ファランクスも同時に切れるまでうてっ!」
至近距離で連射されルシフェルZは2つに砕ける。
「僕だってこんな事……」
コックピット内に歌が響く。
灯火「黙れえええ」
私は再びバイラヴィをぶつける。
「生きているのは……」
「苦しすぎないかい……」
ルシフェルZは燃え尽きた……
セラ「灯火が仇を取ってくれましたよ……明弘」
私は初めて涙を流しました。
『西暦2265年-Stratosphere-』
私は空と二人、海辺で空を見ていた。
咲夜「ねえ、空……私達も………死ぬのかな?」
空「………………」
空は答えない、いや答えられない。
成層圏をアスラに奪われ地上に落とされた人類。
高みの見物を決め込んでいた大人達、私達を選んだ生徒達……全ての人類が青ざめている。
むしろ死と隣り合わせの日常を送って来たクシャトリアの方が気楽なのかも、
空「僕は……生きるよ、きっと……」
咲夜「そうね、空は凄いよね。明弘にも引けを取らない…」
空「生き続けて……咲夜を守り続けるよ………」
咲夜「空………」
私は何故かとても切ない気持ちになり…空を抱きしめる。
空「咲夜……」
咲夜「空……キスしていい?」
空「えっうん……でも後で……なぐらないでね」
咲夜「なっ殴らないわよっ、あれは空が不意打ちするから………」
耳を劈くようなエマージェンシーアラートが敵襲を知らせ、恋人たちの時間を終わらせる。
私は空を抱きしめキスをした。
咲夜「空、明日……もう一度しようね。」
空「うん、咲夜……約束だよ」
私達は手を繋ぎ、天罰機へと走って行った。
『西暦3276年-Atmosphere-』
セラ「灯火、凄かったです!」
灯火「天空神社の巫女の力、思い知ったか!へへん。」
私は空の厄災を祓った。
これで島の人たちは安心して暮らせる。
セラ「では帰投しましょう。」
灯火「おー」
「まって……」
え?
「何で、なんで僕を置いてゆくの……」
「一人は嫌だよ……」
「約束したじゃないか……」
「こんな真っ暗な処……」
「もう一度キスしよう……」
何?
アスラ?
まだいるの?
目の前が金色に光り輝く。
セラ「灯火……逃げて下さい………私達じゃどうしようも無い相手です。」
さっき倒したアスラと同じ形をしたアスラが4体……
そんな……
4体のルシフェルは膝を折り、ひれ伏すような体制を取った。
まだ来るの?
金色に光る巨大な円形が見える。
灯火「セラっ……あれは何?」
セラ「アスラの王達を束ねる究極の存在、天帝です。
『西暦2265年-Stratosphere-』
セラ「空、左からセラフィムタイプ4来ます。」
セラ「咲夜、直上にケルビムタイプ2。」
アスラ達は空から降る雨のように地上へ堕ちて来る。
友軍の天罰機は次々と地上へ落されて行く。
今まさに日が落ちようとしている。
夕日に照らされた空が金色に輝く。
空「あれは……」
咲夜「何なのアレ?」
丸く光る光臨を抱いたその姿、神っぽいアスラの中でもより神様に近いその姿。
セラ「あれは、天帝です……アスラの王達を束ねる存在。」
咲夜「じゃあアレを倒せば終わるって事?」
セラ「はい、恐らくは……天帝が停止すればこの戦いは終わります。たぶん。自信は無いですが……」
咲夜「セラ……どうしちゃったの?」
セラ「どうしちゃった……?不思議な事を言いますね?」
天罰機から突如アナウンスが流れる。
指令「全天罰機は基地を放棄してイズモに撤退。」
指令「イズモを死守せよ。」
咲夜「何て勝手な事を……今まさに戦っているのに……自分達の命の事しか考えてないなんて……」
空「咲夜、セラ……僕、戦うよ……」
咲夜「えっ空?まさかアイツと戦おうって言うの?」
空「うん、こんな事はもう終わらせないと……」
咲夜「うん。どうせイズモに行っても盾にされるのがオチだしね。私も空についてくからね。」
空「咲夜……」
咲夜「さっきの約束、忘れてないでしょうね。」
空「うん、咲夜……明日もキスしようね」
セラ「キス?とは?なんでしたっけ?」
咲夜「ちょっ……そっちじゃなくて……私を守るって言ってくれたでしょ。」
空「うん、咲夜を守ってキスするよ」
咲夜「………まあ、同じ事か……空、セラ、天帝のヤロウをぶちのめしてフィニッシュっ!」
セラ「咲夜、言葉が荒いのですよ…」
咲夜「何言ってんの、私達レトリバー小隊はいつもこうだったでしょ。」
セラ「そうでしたっけ。自信は無いですが……」
咲夜「見てるかクソ共、天帝をぶち殺して、アンタ達を助けてやるから……」
咲夜「目ん玉ひん剥いてよく見やがれ。レトリバー小隊、突撃っ! ヒャッハー」
空「……ひゃ……はあ……」
セラ「ひゃはあ」
咲夜「ちょっと私が恥ずかしくなるでしょ、もっと大きな声でっ!!もう一度、さんはい」
一同「ヒャッハー」
レトリバー小隊は天帝へ突撃を開始した。
PV動画
https://www.youtube.com/watch?v=aM6Gb1Wp8SM
WEBサイト
http://kaze-no-sansara.net