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マーペリア辺境伯軍の恋愛奮闘記  作者: 宇水涼麻
第1章 騎士団部隊長の視察
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8 側近、卒業パーティーを視察

    ~ダニエルの視点~


 さすがに王宮の料理人だ。学園のパーティーなのに、すごくうまいっ!自分たちの卒業パーティー以来だな。


「なぁ、俺、学生の頃、お前を見たことないんだけど、何クラスだったんだ」


「A」


 あっそ。聞かなきゃよかったぜ。


「それにしても部隊長のさっきのあれ、聞いたか?『見違えたな』だって!ほんとあの人、変なとこ残念だよな」


「予想できてたから、あそこに待機してたんでしょうよ?なあ、恥ずかしいから、そんなに食べるなよ」


「お前と違って、俺は王都に実家がないの。たまには、伯爵家の飯に誘ってくれよ」


「時々、連れて行ってるだろう。母上に言っとくから、ダニー1人で行きなよ。母上は、ダニーのこと気に入ってるから大丈夫だよ」 


「バカ言え。伯爵殿に殴られるわっ!」


「あっ、ダンス始まったよ。  ……」

 フランが右手で顔を覆いよろめいた。


「おい、フラン、大丈夫か」


「何?何?あれ??ガチゴチじゃないかっ。ステップも間違えてるっ!やはり、練習させるんだったっ!!」


「うわぁ、俺といい勝負」


「本気かっ??

あのな、ダニー。辺境伯となったら、毎年大事な夜会は参加必須だ。側近として僕たちも一緒に行くんだよ。会場で、淑女に誘われたり、流れで誘わなくてはならないこともあるんだよ。

………大丈夫なのか?」


「まじかぁーー!!」

 思わず頭を抱えてしまった。


「とにかく、部隊長の結婚式までに二人ともレッスンね。母上に連絡しておくから」


「夕食も、頼んでおいてくれ、な」



 すでに料理のテーブルへ行くのも、数度目だ。うまかったなって、思ったものを選んで皿に盛っていった。これに後は、あのオムレツを、と、思ったら、手がぶつかった。


「あっと、失礼、お先にどうぞ」

 にっこりと譲る。相手を確認すれば、女生徒だった。そして、よく見たら、皿の中身が同じだった。思わず、目が合い、一緒に吹き出した。


 その後、食事の話やら学園の話やらをして、皿が空く頃、フランに耳打ちされた。


「あ、あの、腹も満たされましたし、よ、よかったら、踊りませんか?」

 フランに、背中を肘打ちされた。


「下手ですけど、いいですか?」


「もちろん!!」


 彼女の手をとって、ホールに進んだ。


 ダンスの後、彼女のご両親もパーティーに、参加していて、その場で紹介された。フランがいてくれて、本当に助かった。彼女は、アンジェラ嬢。今日の卒業生で、オディラン子爵家のご令嬢で次女だそうだ。


 

 1年半後、彼女は、辺境伯領へ来てくれて、俺の嫁さんになってくれるとは、出会いはどこにあるかなんて、わからないものだ。



  ~フレデリックの愚痴~


 ヴィオに、赤いものを身につけて来るよう言われた部隊長は、僕を仕立て屋に連れていき、上下赤いタキシードを頼もうとした。全力で反対し、黒の燕尾服に赤い小物を使うことを説得した。

 疲れた。


 パーティー当日、影から様子を見ていたら、部隊長は、始めからやらかしてくれている。何度も気を失いかけた。


 そして、ダンスが始まった。これには本当に倒れてやろうかと思った。

僕は右手で顔を覆いよろめいた。


「おい、フラン、大丈夫か」


「何?何?あれ??ガチゴチじゃないかっ。ステップも間違えてるっ!やはり、練習させるんだったっ!!」


「うわぁ、俺といい勝負」


「本気かっ??

あのな、ダニー。辺境伯となったら、毎年大事な夜会は参加必須だ。側近として僕たちも一緒に行くんだよ。会場で、淑女に誘われたり、流れで誘わなくてはならないこともあるんだよ。

………大丈夫なのか?」


「まじかぁーー!!」


 おいおいおいおい、僕の精神力、辺境伯領で大丈夫かなぁ。


「とにかく、部隊長の結婚式までに二人ともレッスンね。母上に連絡しておくから」

 僕だけでは、無理です!


「夕食も、頼んでおいてくれ、な」


 そんな図々しいダニーに、急に出会いが訪れた。セシルのことでは、予想せず傷つけてしまったし、助け船でも出してやろう。その女生徒は、ドレスを見ると、恐らく男爵家か子爵家だ。ダニーとも爵位的に問題ない。女性の爵位が高いと面倒だからね。

 頃合いを見て、ダニーに助言する。


「ダンスをお誘いするのがマナーだぞ」

 誘わないのは、女性に恥をかかせる。断られたとしても、恥をかくのは男だ。それが、紳士たるものだ。


「あ、あの、腹も満たされましたし…」

 僕は崩れ落ちそうになったが、ギリギリ耐えて、ダニーに肘打ちしてやった。その口説き文句おかしいぞっ!

 うん!セシルは、ダニーには落とせない!僕はダニーを傷つけていないっ!



 ダニーのダンスを見ていたらしく、辺境伯が僕のところへやってきた。

「ほぉ、ダニーは学園に彼女がいたのかっ」


「いえ、さっき出会いました」


「そんなこともあるのかっ。ハッハッハ」

辺境伯がなぜか嬉しそうに笑う。


「フランは、我が領へ彼女を連れて来るのか?」


「いえ、今は花屋のセシル嬢と親しくさせていただいております」


「おぉ!あのいい体つきのお嬢さんかっ」


「コホン」

 本当のことだが、ここで言うべきではない。そう、セシルは、スレンダーだが出るところがはっきり出ている、大人美人だ。ダニーは、僕が本気でヴィオを狙っていると思っていたみたいだけど、ヴィオのことは、妹のようにしか見えない。


「そうかそうか、じゃあ、敷地内に別宅を2棟建てねばならんな。メイドが3人くらいの大きさでいいか?」

なるほど、僕とダニーの心配か。辺境伯領は、基本的に、結婚遅いって聞くし。


「ご配慮ありがとうございます。充分です」

 ダニーは、男爵家を継がないのに、メイドいていいのか?まあ、大きな商家なら、メイドくらいいるしな。辺境伯が雇ってくれるのかもしれないし、辺境伯の側近なら、大丈夫か?

 ちなみに、僕は父から男爵位と領地を賜る予定。上の兄二人が他国へ婿に行ったので、僕に回ってきた。領地管理は管理人がしてるので、当分問題ない。



 ダニーが女生徒を連れて戻ってきた。女生徒がダニーを両親に紹介したいそうだ。

うん、うん。ダニーはヘタレだからね。それくらい積極的な女の子がいいね。


「私も、彼の身元がわかる者としてご一緒しましょう」

 やはり、彼女は、アンジェラ嬢、オディラン子爵家だった。それも、次女!ダニーっ!ツイてるなぁ。


 僕の伯爵家をひけらかし、身元保証をする。こういうとき本当に便利ありがとう父上。いや、ご先祖様。


 辺境伯の側近になる、でも充分だとは思うけど、ダニーが結婚するとき役職が必要なら、武官長でも、秘書官でも、もらえばいい。やる仕事は、一緒なのだから。まあ、確かに『側近』っていう役職はないからね、貴族が役職を欲する場合はある。


 で、本当にこの娘と結婚して別宅で暮らすのだから、びっくりだ。この時の僕はまだ、知らないけど。



 僕はこうやって、一生、二人のトホホを補っていくんだろうな。

 あ~あ、セシルに癒されたいっ。


 そうだっ!セシルと結婚したら、男爵領に2週間くらい引き籠ろう。部隊長とダニーの恋を叶えてあげたんだ。それくらいいいよね?


 この後、カザンさんは、本人の結婚式でやらかすけど、ヴィオの機転で乗り越えた。二人は相性ぴったりだっ!


〰️ 〰️ 〰️


 秘匿されていたが、半年も前に婚約をしていたカザシュタントとヴィオリアは、卒業パーティーの翌日には、王妃殿下への結婚許可願いを提出した。ガーリウム王国において、貴族の結婚は、王妃殿下の許可を得て成立するものであるのだ。

 卒業パーティーより1ヶ月後、王妃殿下の許可がおり、結婚式より先に、書類上は、カザシュタントとヴィオリアは、夫婦になった。

 本物の夫婦になるのは、もう少し先だ。

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