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マーペリア辺境伯軍の恋愛奮闘記  作者: 宇水涼麻
第1章 騎士団部隊長の視察
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6 湖畔を視察

 騎士団へ戻ると、三人は団長へと挨拶へ行く。


「で、どうだった?」


「極めて順調であります」

 ダニエルとフレデリックは苦笑い。


「それはよかった。改善点などは?」


「今のところは、特には」


「そうか。また何か変わったら連絡しろ」


「「「はっ!失礼します!」」」

 

〰️ 〰️ 〰️


 寄宿舎への帰り道、早速、部下に捕まる。

「部隊長!マーペリア辺境伯領どうでした?」


カザシュタント:「どうって?」


「いや、ほら……。あのぉ…」


カザシュタント:「真面目な軍だったぞ。力も相当ある」


「そ、そうなんですか。あの、かのご令嬢も夏休みでお帰りになったって聞きましたけど」


カザシュタント:「それがなんだ?」


 空気が凍る。


 ダニエルとフレデリックが部下を挟み肩を抱いて、Uターンさせる。


フレデリック:「あちらのうまい酒を土産に買ってきた、後でみんなで、やってくれよ」


ダニエル:「俺たちも疲れてるからよ。また今度な」

 部下の耳元で説明し、カザシュタントの進行方向とは逆方向に押し出す。



 こんなやり取りを4回ほど繰り返すと、カザシュタントは、ダニエルとフレデリックへ言った。


「団長の元へ戻る」


「「は??はい」」




コンコンコン

「入れ」


「団長、失礼します」


「なんだ、お前たち、さっき話したばかりだろう?」


「状況がかわりました。早急に後任の手配をお願いします。引き継ぎなどを考えますと、半年はかかると思われますので」


 団長は、目を丸くした後、ニタニタした。ダニエルとフレデリックは、カザシュタントの後で肩を揺らしている。


「カザン、現状を把握できたか。俺もおしいものを失くすことになっちまって、残念だ。だが、拾ったのがお前でよかったよ」


「自分は拾ったわけではありません。捨てられたものではないので」


「確かにな。ゴミ箱に捨てられたのは、こちらだ。回収再生も難しそうだ。


そっちは しっかり頼んだぞ」


「はっ!」


「ダニー、フラン、お前らはどうするんだ?」


「自分は南に住むのもいいなと、考えております」


「自分は南で デートの約束がありますので」


「……そうか。わかった。後任探しは手間取るかもな。二人も気が変わったら連絡しろ。報酬は、考える」


「「はっ!」」


「そうだ。ゴミの再生場所、南にしてやろうか?」


「「「断固拒否いたしますっ!」」」



〰️ 〰️ 〰️



「いいのか?お前たち」


「部隊長、1人で大丈夫だと思ってるんすか?」


「ほんとです。ダメダメになったら、誰が埋め合わせするんですか?」


「……すまんな」


「「今さらです!」」


「それにしてもフラン、デートの約束って」


「部隊長だけがいい想いをしてるとは、思わないでくださいね」


「コソ ヴィオじゃないから大丈夫っすよ」

 『パーン』ダニエルが頭を抱えて立ち止まった。


〰️ 〰️ 〰️


 婚約白紙は、秘匿事項なので、堂々とデートするわけには いかない。

 『マーペリア辺境伯に、お嬢様の指導を頼まれた』として、剣の鍛錬はもちろんのこと、馬術の指導と言っては遠乗りへ行き、警邏の指導と言っては町デートをし、市井の把握と言っては食事や観劇を楽しんだ。


 すべて、部下や同僚、他部隊の者へ言い訳だ。言い訳がうますぎて、その辺の婚約者たちより逢瀬の回数は、ずっと多かった。それでも、カザシュタントは、ヴィオリアの手も握れないのだ。


 遠乗りの時、ヴィオリアはカザンからの贈り物のバレッタをしていった。ヴィオリアに見つからないように、フランから説明と説教を受けたカザシュタントは、真っ赤になりながらヴィオリアを褒めていたのは、ご愛嬌。

 


〰️ 〰️ 〰️



 一月もしないうちに、辺境伯の王都屋敷に、団長殿と子爵家当主が呼ばれることになった。


 『攻勢に出る』と決めたら、早いものだ。



 ただし、これも秘匿であるが。


〰️ 〰️ 〰️



 カザシュタントは、次回の新人研修の頃には、あちらにいたいものだと考えている。もちろん、そのつもりで動いている。ダニエルとフレデリックも。

 

ダニエル:「いくらなんでも、早すぎでしょっ」


カザシュタント:「なんでだ?俺たちの部下になるんだぞ。自分たちの目で選べるならいいことだろ?」


フレデリック:「部隊長は、ヴィオを王都から引き離したいだけでしょう」


ダニエル:「そういえば、ヴィオの誕生日、どうだったんですか?」


 誕生日は、普通にデートをしたいと考えたカザシュタントは、ヴィオリアを連れて朝早くに馬車で王都を離れ、湖の畔にある町へ出掛けた。戻ってきたのは、翌日の夕方だった。


カザシュタント:「初めてだったらしい。顔がすぐ赤くなってな。無理をさせずにゆっくりと与えていったんだ」


ダニエル:「え?部隊長!ヴィオに手を出したんすかっ!!??」

 『パーン』ダニエル頭を抱えた。


フレデリック:「ばっかっ!酒の話だよ。

宿も食事場所も僕が予約したよっ。一番奥から2つの1人部屋だっ。もしもがあったら、僕が辺境伯殿に、殺されるよ。セシルに何ていうつもりだ」


ダニエル:「その時には、俺がセシルさんを……」

 『パーン』今までで一番大きな音がした。ダニエルは頭を抱えて、座り込んだ。


カザシュタント:「フラン、飯はうまかったし、宿はキレイでよかったぞ。景色もよかったから、ヴィオと散歩をしたんだ。夕焼けも素晴らしかったが、朝の散歩にも丁度よかった。セシル嬢を王都に招いたときには、行ってみるといい」


フレデリック:「そうでしたか。よかったです。それより、口づけくらいしてあげたんですか?」


カザシュタント:「な、なにをバカなっ!」


ダニエル:「え、だってヴィオの成人祝いでしょ?それくらいは許されますよ」

 頭を抑えながらダニエルが立ち上がった。


カザシュタント:「そ、そういう問題じゃないっ!」


フレデリック:「部隊長が怖気づいただけだったら、さらに問題ですよ」


カザシュタント:「っ!……そ、それは…」


ダニエル:「まじかぁ!ヴィオ、がっかりしたろうな」


カザシュタント:「え?本当か?」


フレデリック:「女の子は、大人の男には大人の女として扱われたいのです。口づけしなかったってことは、子供扱いされたって感じますよ」

 カザシュタントが青褪めた。


ダニエル:「手は?手くらいは繋いんだんですか?」


カザシュタント:「あ、ああ、夕方の散歩の時にな、ヴィオが繋いできた」


フレデリック:「は?それもヴィオから?」


カザシュタント:「よ、翌朝は、俺からしたぞっ!」


「「当たり前ですっ!」」


〰️ 〰️ 〰️


ダニエル:「なあ、フラン、あの人、結婚できるのか?」


フレデリック:「結婚はできるだろう。初夜はわかんないけど」


ダニエル:「それがなきゃ結婚の意味ないだろう?婿って意味わかってるか?」


フレデリック:「僕に聞くなよ。僕としては、初夜がどうでも、部隊長が辺境伯領に行ってくれれば問題ないよ」


ダニエル:「セシルさんか?勝手だなぁ。そういえばさぁ、いつまで部隊長って呼ぶ?」


フレデリック:「…結婚式まで、か、な?」


ダニエル:「なんて呼ぶ?」


フレデリック:「普通に」


ダニエル:「そうだな」

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