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マーペリア辺境伯軍の恋愛奮闘記  作者: 宇水涼麻
第2章 結婚式
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4 側近の家族愛

 セシルへのプロポーズを成功させたフレデリックは、すぐにセシルと花屋夫婦を連れて王都へ戻ってきた。そして、セシルを親族の男爵家の養女にする手続きをしようとした。しかし、案の定、セシルに渋い顔をされた。


「貴族って面倒くさくてごめんね。でも、こうしておくと、僕達の子供も孫もその後も、困ることが少なくなるんだよ。親父さんと女将さんとの縁を切るわけじゃないんだ」

 フレデリックの真剣さに負けて、セシルは頷いてくれた。


 その手続きの間に、フレデリック自身は父親から男爵位を譲り受け、フレデリック・バレーからフレデリック・トリベールになった。


 そして、バレー伯爵家と花屋夫婦と近しい者たちの見守る中、神殿でセシルと結婚式をあげ、伯爵邸で立食パーティーを行った。カザシュタントもダニエルもヴィオリアも辺境伯も参列している。

 結婚式のドレスは、バレー伯爵若夫人フェリシーの持っていたドレスで、色合いは水色で、華美な装飾は少なく、地味目のドレスをセシルに着てもらった。それに合わせて、フレデリックも地味目の燕尾服に水色のズボンに水色のクラバットにした。それでも、化粧を施したセシルは、断然キレイになったし、ドレスだって、平民からみたら、充分だ。

 花屋夫妻には、仕立て屋へ行き、既製品を選んでもらったが、値段は決して教えなかった。

 セシルに合わせて、バレー伯爵家のみんなも、ヴィオリアたちも華美の少ないものにしたのだが、セシルと花屋夫妻にとっては、とてもキラキラして見えて、三人はいつまでも、目をしばたかせていた。


 式からしばらくは、花屋夫婦とセシルとフレデリックとバレー夫人で、王都観光を楽しんだ。フレデリックがまだ騎士団所属だったので、その地位を使い王城見学をしたときには、3人ともキョロキョロしながらもとても嬉しそうだった。


「死ぬ前に王様のお城に入れたなんて、夢のようだな」

 と、いつも無表情の親父さんでさえ、興奮していた。


 1週間ほどした頃、馬車と多めのお土産と多めの護衛をつけて、花屋夫婦をマーペリア辺境伯領地へと送り出した。


 辺境伯領地から戻ってきてから、2ヶ月、フレデリックとセシルは伯爵邸で生活している。


 フレデリックの約束通り、バレー伯爵夫人も、長男の嫁のバレー伯爵若夫人フェリシーも、セシルに男爵夫人としての教育をしようとはしなかった。でも、


「このドレス、ステキでしょう!セシルちゃんに絶対似合うわ。着てごらんなさい」

「まあ!ステキ!やっぱり、セシルちゃんにぴったりだったわね。ドレスで歩くときには、こうすると歩き易いのよ」とか、


「このお紅茶を飲むとリラックスするのよ。わたくしが入れてあげるから、見ていて」

「まあ!今日のお紅茶は、セシルちゃんが入れてくれたの?おいしいわぁ!」とか、


「女として磨くのに、平民も貴族もないわ。リラックスして、寝ていればいいのよ。ほら、マッサージって気持ちいいでしょう!」

「ほら、この香りとかステキでしょう。これは薔薇の香りね。セシルちゃんは、これが気に入りましたの?これは、レモンね。とっても爽やかでこれからの季節にぴったりですわね。今日から、お風呂の香油にしましょう。フランをドキドキさせちゃいましょうね」とか、


「こちらの恋愛小説、とても面白いのよ。読んでごらんなさい。わからない言葉はいつでも聞いてね」

「あのお話ステキだったでしょ?あのお話の演劇が今上演されているのよ。一緒に見にいきましょう。うんとおしゃれをして行きましょうね」とか


「セシルちゃんがせっかくキレイなドレスを着ているのだもの、お庭でお茶をしましょう!」

「あのお花はね、薔薇の中でも珍しいものですのよ、異国の……」「さすが、セシルちゃんねぇ!わたくしももっとお花を知りたくなりましたわ」

「このケーキおいしいのよ。ほら、こう食べるとキレイでしょう」とか


「ダンスは楽しめればいいのよ。ほら、今日もレッスンに紳士たちが来たわ。わたくしと一緒にお相手してあげましょう!」など、


 セシルができると誇らしげに誉めるし、セシルができなくても絶対に笑ったりしない。何度も何度でも付き合ってくれる。

 二人の淑女に気に入られたセシルは、いつの間にか、困らない程度の貴族の立ち振舞いなどを身につけてしまったのだ。

 もし、万が一、セシルが貴族のパーティーへ出なければならなくなっても、立ち振舞いさえどうにかなれば、問題ない。話術に関しては、二人の淑女に任せておけばいいのだ。


 そうして、フレデリックが休暇中の2ヶ月を過ごしている間に、ダニエルは、騎士団の引き継ぎやら、カザシュタントの結婚式準備の手伝いやら、マーペリア領への引っ越し準備やら、とにかく、死ぬ程働いた。そして、ダンスのレッスンも。



〰️ 〰️ 〰️



フレデリック:「あぁ。あの時は悪かったな。平民から嫁に来てもらうって大変なんだよ。男爵夫人としての嗜みは必要ないから、まだましだよ」


ダニエル:「なんで必要ないんだ?」


フレデリック:「だって、僕が男爵として動くつもりがないもの。どうしてもでなきゃならない王宮の夜会は一人で出るさ。どうせ、カザンさんの側近として出るわけだし」


ダニエル:「ふーん」


フレデリック:「それに、この2ヶ月で、母上と義姉さんに構われまくって、楽しんでるみたいだから、本格的にやってもどうにかなりそうだし、ねぇ」


ダニエル:「そんなもんか?それにしても、お前ら、数回のデートだけだろ?」


フレデリック:「だから、一月通ったんじゃないか。僕を癒すことができるのは、セシルだけだからね」


ダニエル:「お前の怖さの一端を見たよ。  住まいはどうすんの?」


フレデリック:「あれ?辺境伯様から聞いてない?敷地内に僕とお前の別宅建ててもらえることになってるよ。それまでは、町で借家かな。セシルは、辺境伯邸にずっとは無理だろうから。男むさい寄宿舎にセシルを入れるなんて、もっと考えられないし」

 フレデリックの心配を他所に、セシルとヴィオリアは、大変仲良しになり、セシルは辺境伯城で生活をすることになる。


ダニエル:「別宅??」

 カザシュタントの婿入りとともに、この二人の側近もマーペリア辺境伯領軍へと確実に呼び込みたかった辺境伯は、誰も何も言わずとも、別宅の用意を始めていた。


フレデリック:「ああ。お前もあの子爵家のお嬢さんとそこに住めよ」


ダニエル:「なっ!ばっ!気がはやいってっ!」


フレデリック:「ほーんと、ヘタレだなぁ。

お前が結婚考えた時には、僕が頑張るからさ。安心していていいよ」


 二人が話しているうちに、新郎新婦の支度が終わった。4人で軽食をつまみながら、結婚式でのカザシュタントをからかう。4人での時間のおかげなのか、カザシュタントもずいぶんとリラックスした表情に見える。これなら、階段から落ちる心配もないだろう。


フレデリック:「ダニーの心配は杞憂に終わりそうでよかったな」

 フレデリックがダニエルをからかう。


ダニエル:「だから、何か食わせて落ち着かせようって言ったろう」

 ダニエルが得意気だ。


カザシュタント:「何の話だ?」

 カザシュタントは、まさか自分がそこまで心配されているとは思わないだろう。


「「何でもありませんよ。カザンさん!」」

 二人の話から、ある程度の予想ができてしまったヴィオリアは、クスクスと笑いが止まらないでいた。


 そうこうしているうちに、下階の笑い声がここまで、聞こえるようになってきた。神殿まで、きてくださった方々ももうそろそろ辺境伯邸へ着くころだし、他のお客様も揃ってきたのだろう。


「そろそろ、みなさま、お揃いでございます」

 メイドの声に、4人が立ち上がる。


 さあ、宴へと参りましょう!

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