10 国王陛下執務室を視察
ジャンバディ・サンドエクは、早速、その提案書を持って国王陛下に謁見した。3日後、ジャンバディはオーリオダムを伴い、登城することとなった。国王陛下の執務室へすぐに通された。ソファーへと案内され、挨拶も、そこそこに話が始まる。
国王:「この提案書を書いたのはそなたか?オーリオダム」
オーリオダム:「はい、そうです。国王陛下」
国王:「今まで、遠征は何度かおこなったが、この長期派遣という考えはなかったな」
派遣という考え方は、転生者ならではなのかもしれない。
オーリオダム:「ちょうど、先日の学園の卒業式で、今後辺境伯になるという御仁と知り合いになりまして、その方に、辺境伯領の現状を聞いて参りました」
オーリオダムは、ジャンバディから相談を受けてすぐにカザシュタントへ面会に行った。
国王:「それは、カザシュタントのことだな。騎士団長からも、マーペリア辺境伯からも聞いている」
オーリオダム:「はい、そうです。カザシュタント殿から、辺境伯領では魔法士が足らず、戦闘に苦労することもある、と。父からは、戦闘に行かない魔法士戦力があると聞きましたので、それを解決することを考えました」
オーリオダムの提案書には、魔獣の森を持つ各辺境伯領に一定数の魔法士を、数年派遣する。その間、魔法師団でも、魔法士の育成を進める。また、数年後には、王都の魔法士と交代するというものだった。
国王:「どの程度が、妥当だ?」
オーリオダム:「仕事や地域への順応を考えると、3年から5年程だと思います」
国王:「ふむ、王都を離れるとなると長いな」
オーリオダム:「そうですね。ですから、できればご家族も一緒がいいと思います。
あ、それから、『魔法師団』からの派遣としたいのなら、国費で敷地と寄宿舎を用意するべきでしょう。
その中に、いくつか家族用の建物も建てればいいですし。家庭用のメイドまで、世話をする必要はないと思いますけど。家庭用の家のメイドは個人の自費であるべきでしょうね」
国王:「ほぉ、それで」
オーリオダム:「私の年齢だからかもしれませんが、結婚は気になりますね。当地で結婚した場合は、辺境伯軍へ移籍できる制度もあるといいですよね。結婚しなくても、その地が気に入れば、移籍できるとか」
国王:「そうすると、魔法師団の人数が減るが?」
オーリオダム:「派遣している間は王都の寄宿舎が空きますよね。その分採用して、育てればいいのです。現在、魔法師団は200程ですか?まずは未婚者を40名ほど派遣して、40名王都で採用する。3年後は、王都にいた者と交代させるを繰り返すのです」
国王:「ジャンバディ、採用の宛は?」
ジャンバディ:「はい、今まで、かなり狭き門となっておりましたので、訓練は多少大変になるかもしれませんが、可能です。また、年功序列で団を離れた者もいるので、再採用もできます」
国王:「そうか、若い者を増やすとなると教育係も必要であろう。その者たちが適任だな」
オーリオダム:「ただし、ここにあるのは机上の話です。先日、カザシュタント殿から聞いた話ですと、魔獣討伐を、実践してみると落ちる者もいると」
国王:「そうか、ジャンバディ、その見極めは?」
ジャンバディ:「実践でしか、わからぬことかと。ですが、例えば、本当の戦争やスタンピードでそれがわかるよりは、この案で、魔法師団の弱点が、今わかることは、良いことかと存じます」
国王:「なるほどな。今なら修正がきく、ということか。なら早目がよかろうな」
オーリオダム:「マーペリア辺境伯軍は、寄宿舎に余裕があると言っておりましたので、とりあえず、マーペリア領でやってみてはどうですか?試しに20名くらいですかね?
その間に、マーペリア領に魔法師団の寄宿舎を建て、使用人も現地で採用すればよいのです」
国王:「おいっ!マーペリア辺境伯は、まだ王都におったな、カザシュタントとともに呼んでまいれ」
国王陛下が秘書官に命じる。
マーペリア辺境伯とカザシュタントが、国王陛下の執務室へ来た。挨拶もそこそこに、話が始まる。
二人に、今までの話を説明する。魔法士を派遣されるという話に、マーペリア辺境伯もカザシュタントも大いに喜んだ。魔法士の防御壁や先制攻撃があれば、兵士の死傷はかなり軽減するはずだ。
カザシュタント:「私から一つよろしいですか?」
国王:「なんだ、カザシュタント、ここでは、遠慮なく、申せ」
カザシュタント:「オーリオダム殿には、お伝えしたのですが、新人兵士たちでいいますと、80名中約40名が魔獣討伐研修で挫折します。これは、実力の話ではなく、魔獣との対戦ができるかできないかの単純な話なのです。それでも、現地で実際に魔獣に対面すると、どうしても、無理な者が出てくるのです。その点、魔法師団は、どうお考えですか?」
ジャンバディ:「現在の魔法師団は、実践経験のない者が、ほとんどです。やってみないとわからないと言うのが本音ですが、やっていかないと、いつまでも、未経験であるともいえます。マーペリア辺境伯軍には、とても迷惑をかけることに、なるかもしれません。でも、魔法師団長である私としては、やってみたい。それで、帰ってくる者はもう一度鍛え直す。そうやって、育てていきたいと考えております」
マーペリア辺境伯:「マーペリア辺境伯軍は、この案の試験的実践を受け入れましょう。カザシュタント、そのように、動いてくれ」
辺境伯は、その場で即決した。
カザシュタント:「義父上のおっしゃる通りに」
マーペリア辺境伯は、魔法師団の寄宿舎を建てる場所もすぐに思いついたようだ。辺境伯領へ戻ったら早速建設を始めるそうだ。
国王:「あくまでも、国の人材だ。かかった費用は、財務局へ申請せよ」
オーリオダムの言う、寄宿舎を国費で賄う意味を、国王陛下は理解していたようだ。
マーペリア辺境伯:「雇用が増えるのは、大変嬉しいことです!」
使用人の採用についても手放しで喜んだ。
国王:「その使用人たちの仕事や給与を管理する国の者が必要だな。魔法士派遣とともに行かせるように手配しよう」
マーペリア辺境伯:「では、娘たちの結婚式が終わりましたら、1週間ほどで出発いたしますので、それでお願いいたします」
マーペリア辺境伯でこの案を仮採用することに概ね決まり、今日のところは解散となった。
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マーペリア辺境伯王都邸。
カザシュタント:「親父殿、実際やってみたら、どの程度だとお考えですか?」
マーペリア辺境伯:「最初は0だと考えるべきであろうな」
カザシュタント:「0ですか。それでも受け入れるのですね」
マーペリア辺境伯:「そうだ。戦闘経験というのは、それほど大切だ。カザン、お前が魔法士たちを、育ててやれ。それが、マーペリア辺境伯軍の兵士たちを守ることにつながるはずだ」
カザシュタント:「畏まりました。厳しい初仕事になりそうですね」
マーペリア辺境伯:「ワハハ、それだけお主には、期待をしとる。婿としても、跡取りとしてもな」
カザシュタント:「恐縮です」
『カチン』二人はワイングラスを合わせた。
~マーペリア辺境伯領軍奮闘記 第1章 fin~
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