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双子の王子

ドアの隙間からひょいと顔を覗かせたのは、濃紺の髪に輝きのある金色の瞳をした、そっくりな顔立ちの二人の美青年だった。一目で双子だとわかる彼らは、先程のエリオット様に負けず劣らず、独特の雰囲気を纏っていて、背格好から色気のある身のこなしまでもが、とても似通っていた。


「ダリル、デレル、どんな用ですか?」


エリック様の言葉に、二人は目を見交わした。


「ちょっと、兄さん。抜け駆けはずるいんじゃないの? エリオット兄さんに、この先何が見えるか聞いたんでしょう、そこにいるアーディンと一緒にさ。エリオット兄さん、何て言ってたの?」


エリック様は、溜息混じりに口を開いた。


「君たちは、いつもそういうことを嗅ぎ付けるのが早いですね。……エリオット曰く、見えたのは『混沌』だと、霧に包まれた、並行して存在する枝分かれしたいくつもの未来だと、そう言っていましたよ」

「ふうん。てことは、僕たちにもチャンスがあるってことだよね」


にっと口角を上げた一人に対して、もう一人が私のことを振り返った。


「……この子、誰? 見掛けない顔だね。こんな子まで王宮に連れ込んでたの?」


彼の視線が、私の胸元に光るペンダントを捉える。エリック様が、やや固い声で答えた。


「彼女が首にかけているペンダントを見ればわかるでしょう、彼女は私の客人です。失礼な物言いはやめてください、ダリル」


エリック様の言葉を聞いているのかいないのか、ダリル様と呼ばれた彼が、つかつかと私の側に近付いて来た。私の顔を見下ろすと、私の顎元に指を添えて、くいっと持ち上げた。驚いて見開いた私の目を、彼はじっと見つめた。彼の大きな瞳が愉快そうに輝く。


「へえ、よく見るとかなりの美人じゃない。こんな子、いったいどこから見付けて来たの? 兄さんか、アーディンか、どっちかのお気に入りか何か?」


いつの間にやって来ていたのか、アーディンがダリル様の手を私から振り払うと、私のことを彼の背中で庇っていた。


「彼女は、エリック兄上の客人だと言っていたのが聞こえませんでしたか? 横暴な振る舞いは慎んでください」


ダリル様が軽く顔を顰めた。もう一人、デレル様と呼ばれた方が、不機嫌そうに片眉を上げる。


「……お前はいつも仏頂面だな、アーディン。もうちょっと、兄に対して愛想があってもいいんじゃないか?」

「生憎、俺はそういったものは持ち合わせていないようですね」

「まあいい。お前は今では、後継者の椅子を争う一人に過ぎないからな。いずれ、目に物見せてやるよ」


ダリル様が、剣呑な言い方をしたデレル様を窘めるように口を開いた。


「そんな言い方をして、あんまりその子を怖がらせても悪いし、そのくらいにしておこうよ。……ねえ、今度改めて、君の名前を聞かせてね?」


アーディンの脇から私の顔を覗き込むようにしてウインクを送って来た彼に、私が戸惑っているうちに、またねと一言残して、彼ら二人は部屋を去って行った。


静寂の戻った部屋で、エリック様が深い溜息を吐いていた。


「彼らも、相変わらずでしたね」

「ああ。……ローザ、驚かせてしまって、すまなかったな」


アーディンの言葉に、私は首を横に振った。


「私は大丈夫だけれど。あの方たちもご兄弟なの?」

「ああ、そうだよ。第五王子のダリル兄上と、第六王子のデレル兄上だ」

「エリック様やアーディン、それにエリオット様とも、また大分タイプが違うみたいね……」


綺麗な顔をなさってはいたけれど、どこか女性慣れしていそうな空気を漂わせている彼らは、何だか軽薄そうな、苦手な系統の人だというのが私の第一印象だった。アーディンも、私の表情を見て苦笑を浮かべていた。


「ローザも感じたかもしれないが、あの双子の兄上たちは女性に手が早いんだ。出来ることなら、特にあの兄上たちには、ローザを会わせたくはなかったんだが……」

「さっき言われた言葉は、冗談にしか聞こえなかったし、特に問題はないと思うわ」

「君の護衛を厚くしよう。今もルシファーには君の護衛を頼んでいるが、影からもう数名、君の身辺を警護する者を付けるつもりだ」


アーディンの言葉に、エリック様も頷いた。


「注意しても、し過ぎるということはありませんからね。私も賛成です」


私はほっとして微笑んだ。正直なところ、あまり、彼らとまた会いたくはなかったからだ。


にもかかわらず、想像していたよりもダリル様とデレル様にずっと早くまた会うことになるとは、この時の私にはまだ知る由もなかった。

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