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エリオットの預言

アーディンと一緒に廊下に出たエリックは、第四王子のエリオットを呼び止めた。


「エリオット、話したいことがあるのですが、少し時間をもらえませんか?」

「ええ、兄上、構いませんよ。……最近、ほとんどお話しする機会がありませんでしたね。前に兄上とお話ししたのは、母上が身罷った時だったでしょうか」

「……確かに、あの時以来ですね」


苦笑したエリックに、エリオットが穏やかな笑みを浮かべた。


「お互いに立場というものもありますから、仕方のないことですね」


エリックとエリオットは母親が同じ妃であったため、二人の外観は他の王子と比べても良く似ていた。エリオットも、エリックと同様の滑らかなプラチナブロンドの髪が襟足にかかり、聡明さの窺える碧眼をしていた。


廊下を折れて、エリックが示した部屋に三人が入り、それぞれ椅子に腰を下ろした。エリオットの瞳が、静かにアーディンに向けられる。


「エリック兄上のアーディン贔屓は、相変わらずのようですね。まあ、アーディンにあの印があるのなら、兄上が興味を惹かれるのもわかりますが。……それで、兄上。私を呼び止めた理由は何ですか?」

「まあ、大方想像はついているとは思いますが。エリオット、父上に起きたことは、あなたには見えていたのですか?」


エリオットの魔法の力は、先読みの力だった。それも、他の神官とは異なり、かなり先まで見通すことのできる強い力であり、その実力のために、王子であることは理由とせずに、神官長に就任していたのだ。


エリオットは、小さく首を横に振った。


「いいえ。……厳密に言えば、全く見えていなかった訳ではありませんが、細かく枝分かれした先の未来の、さらにぼんやりとした霧に包まれた中だったとでも言いましょうか。要するに、可能性をほとんど想定していない未来だったと、そう言えるかと思います。それに、兄上ならご存知でしょうが、」


エリオットはエリックを見つめた。


「私たちの魔法の力は、父上には効きにくい。だから、私から見ても、父上に関する未来は見えづらいのですよ。ただ、見えていたことと言えば、『混沌』です」

「混沌……」


顔を顰めたエリックに、エリオットは続けた。


「兄上は、この先に見える未来についても、私に尋ねようとなさっているでしょう? その答えも同じ、混沌です。私の目には、ある一つの未来がはっきりと映ることもあれば、分岐して霞んだ未来が並行して浮かぶこともある。今の状況としては、まさに後者です。ただ、何故か、どの未来にも、ある人物が関わっているようです。私が朧げに見える先には、同じ人物が一人映り込んでいるのですよ」

「それは、誰なのですか?」

「さあ? 私には面識のない方のようですよ、兄上。それから、アーディン」


エリオットは、ずっと口を噤んでいたアーディンに目を向けた。


「アーディン、あなたにあると言われている、あの印。私にも、見せてもらうことはできませんか? 何か鍵になるものを見ると、突然視界が開けることもあるので。もしかしたら、何かヒントを見付けられるかもしれません」

「兄上がそう仰るのなら、わかりました」


アーディンが服の肩口をぐっと押し下げた。アーディンの右肩の後ろに視線をやったエリオットの瞳が輝く。


「ああ、これがあの印ですか……!」


そこには、仄かに金色がかった羽根の模様が浮かび上がっていた。その雄々しい翼の形は、王家の紋章の中央を彩るペガサスの翼と酷似していた。


「守り神と引き合う者の身体に、時に現れることがあるという、守り神の身体の一部の刻印。そうか、これが……」


しばらくアーディンの身体に浮かぶ羽根の模様を眺めていたエリオットは、すっと目を細めた。


「アーディン。あくまで、これは一つの未来の可能性として聞いてください。この模様は、あなたの身体から消え失せることがあるかもしれません」


アーディンに代わってエリオットに問い掛けたのは、エリックだった。


「それはどういう意味ですか?」

「そういう未来も私の目に浮かんだと、ただそれだけのことですよ。では、もう話も済んだことと思いますので、そろそろ私は失礼しようと思います」


エリオットが椅子から立ち上がろうとした時、部屋のドアがノックされた。エリックがドアに歩み寄るのを眺めながら、エリオットは両目を瞬くと、まだ閉まったままのドアを見つめて、楽しげにその瞳を輝かせた。

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