安堵
「う....うううん......」
「雫,,,,,,!!!!!!!」
「わ、わぷっ」
目を開けると、見知った兄の顔があった。強く抱きしめられて、思わず変な声が出た。
「雫....雫、よかった、本当に、良かった...........」
「お、おにいちゃ、...苦しい.,...」
「あ、ご、ごめん......」
解放され、辺りを見渡す。此処は...兄の部屋だ。突然のことで思考が追いつかない。
「わたし....帰ってきたの?それとも....これは、夢?」
「........大丈夫、雫、大丈夫だよ....夢じゃ、ない」
「..................」
夢じゃないと言われた瞬間。涙が零れだした。
そうだ、あの時、お兄ちゃん、お兄ちゃんが。
「っ、お兄ちゃん、けが、けがは...!?血が出てて、わたし、わたし....!!」
「あ、あぁ....大丈夫だよ....ごめんな、心配かけて....」
「ほんとに?お兄ちゃん、生きてる...?よかった、怖かった、怖かったよ.......」
「ごめん、ごめん雫、たくさん心配かけて、がんばらせて....ごめんね」
顔を伏せて、子供の様に泣き出したわたしを、今度は優しく抱きしめてくれた。
背中を撫で、「ごめん、ごめん...」と何度も口にしている。
生きてた、よかった、怖かったんだ....もうこれ以上、もう失いたくなくて
お兄ちゃんだけがわたしの、わたしの、すべてだったのだから。
落ち着いてきたころに、わたしを抱きしめたままお兄ちゃんが問う。
「........雫、体は変じゃない?痛みは?」
「うん...大丈夫だよ!今のところは何もないから!」
「そっか....何かあったら、俺に必ず言うんだよ..?」
「うん...ごめんね、お兄ちゃん、ありがとう」
「ごめんな、雫」
今はただ、お兄ちゃんが生きてくれていたこと、それだけが何より嬉しかった。
あの時、すべてが真っ暗になって、何もかもを恐れてしまったから。
「もう、今日はゆっくり眠ろう。....疲れただろう。俺もこの部屋に居るから」
「分かった、お兄ちゃん....ありがとう」
「雫、おやすみ。」
「うん」
兄が傍に居ることを確認して、わたしは重い瞼をゆっくりと閉じる。
今はただ、それだけで、それだけで良かったから。