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双誓のカランコエ  作者: 刻の昏
46/51

遺棄

_____自分が何も努力しなくても、何でも出来てしまう事に虚しさや嫌悪感を覚えてしまったのは何時からだろう。


幼い頃はただ感じるままに色んなことを続けていたら気付かぬ内に沢山褒められていて、当たり前だけれどそれを気持ち悪いだとか可笑しいだとかは何も感じていなかった。

むしろ褒められる事は気分が良くて、もっと褒めて欲しいって頑張れていたはずだ。

それくらいに幼い頃の子供心は純粋だった。それだけが嬉しかった。


けれど、家族を失ってから年齢を重ねるにつれ、双子と言えども自身は兄だったから、唯一残った肉親である雫を支えなきゃ、俺に出来ることを沢山しなくちゃって気持ちばかりが先行していた。


何かあった時にしっかりと兄であれるように。頼れる存在であるように。

亡くしてしまった兄の代わりに俺がちゃんとなれる様に。毎日を力一杯生きた。

全力を出し切って、俺がこうしなきゃ、俺が学ばなきゃ、俺がちゃんとしなきゃ、

俺が俺が_____って


...気付いた時には、隣で苦しんでいる妹の気持ちなど蔑ろにしてしまっていたんだ。


妹の感情を目の当たりにしたあの日からやるせなくて、こんな気持ちを抱かせてしまっていたことに対してどうしていいか分からなくて、今までの俺の行動全てが間違っていることを知ってしまった感情の整理も付けられなくて、ただただ自分自身を呪っていた。


妹の事を大事に大切に、お兄ちゃんだから、俺はお兄ちゃんなのだからって、相手の気持ちも考えずにただ自身の気持ちを押し付けてきた。

俺は自分の感情を優先して周りを見ることが出来ていなかった。


あのことを切っ掛けに、何だか勉強もスポーツも身が入らなくなって、ああ、そうだ、....あの時からだ。

今まで頑張らなきゃって振り絞ってきた気持ちや力が、こんなにも息を抜いても勝手に体に着いてくることに気付いたのは。


俺が今までしていたことは、ただの努力の真似事だったこと。

産まれた時から、恵まれていただけだったこと。

その能力を誰かの為だと銘打って、頑張っていたつもりになっていたこと。

全部全部が吐きそうで、こんな自分自身が何よりもくだらなかった______



自分自身を好きになることが出来なくなってしまった俺はより一層、その時から雫が、妹がどんなに努力して必死になっていたかを改めて身をもって知った。

そんな妹を汚すただ唯一の存在が俺であったこと、そうして俺から雫に出来ることはほとんどなかったこと。急な虚無感に襲われる。

何をしても満たされない毎日が過ぎていく。手を抜いても褒められていく。変わらない、変わらない。それでも誰にも迷惑をかけるわけにはいかないと、ただ笑っていた。

何でもこなせるように造られた俺は、大層作り笑いが上手になっていた。どんなにどん底に落ちても、自分のせいだから、暗い表情をするのは一人の時だけ、他の皆には多く見せないように、自分が嫌いな俺をただ周囲だけには嫌われない様に、ただ振る舞った。


それからの妹の居ない高校生活、沢山の女の子から毎日の様に告白されることが増えていった。

俺の顔と言うのは世間一般的には大層造りが良いらしく、高校生に上がる前からも事ある事に褒められて告白されることは少なくなかったが、ここまでではなかった。

それに、良くも分からない感情を併せ、付き合うことを考えては居ないことを告げてきちんと全てお断りをしていた。


そんな状況が続く中、俺の友人はある日の休み時間に、人の大勢いる教室内でケラケラと笑いながらこう提案した。


「蕪モテすぎなんだよな〜ちゃんと一人彼女作ればいいのに」

「....うーん、その、俺はまだそんなこと、ちゃんと考えたことがなくて」

「付き合った事とかねぇからだろ!何事も経験!とりあえず告白してきた子全員と付き合ってみたらいいじゃん、複数付き合っても本人達がいいならOKだろ」

「えっ....嫌、それは...」


なんでだよ!そうしろよ!と周りの友人達が大層盛り上がり始める。そんなことは出来ないよ、とはっきり拒絶することが出来ずに口が篭もる。

どうしていいか分からず、困っているとクラスメイトの女の子が突如そんな俺に声を掛けた。


「あ...あの!蕪くん」

「えっ」

「私.....何番目でもいいから、あの..その....」


もじもじと、顔を赤くさせながらそう話す彼女。友人達が、ここぞとばかりに茶化し始める。

そうして全員が口々に言い出し始めた。「付き合え」「付き合え」と。


「でも....その...」

「空気読めよ蕪!!!お前のために言ってんだぞ!!」

「おねがい...蕪くん....」


クラスメイトの見守る中、耐えきれないプレッシャーを孕んだ感情が、ただ肯定の言葉しか許してはくれなかった。


その瞬間を皮切りに、断り切れないまま沢山の彼女が出来ていった。まるで週間制のように日々違う女の子と肩を並べて手を繋いで帰宅した。

恋人同士の関係と呼ぶにはあまりにも歪なその関係は、けれども確かに足りない箇所を埋めてくれたようにも感じてしまっていた。

沢山の愛を交わして、何度も棄てて、自分自身に呆れる時間すらも失う程で、ただ人に求められるがままに生きていけるその瞬間を楽に感じた。俺は逃げた。甘えてしまったのだ。


これで本当にいいの? と問いかけても、ただ皆にっこりと微笑むばかり。関係を断とうなんて話は誰からもされなかった。

何故か女の子たちの中で交代制度を設けていたり、独自の様々なルールが形成されていって、間違ってると分かりながらも周囲の期待に応え続けた。

誰も傷つけたくなかったから、裏切りたくなかったから、_____嫌、違うな、俺はただこれ以上自分が傷つきたくなかっただけだ。


そうして誰からも嫌われない為の自分を無理矢理に形成した俺は、空っぽな俺は、誰かに嫌われる覚悟から逃げた俺は、また妹を傷つけた。

付き合っていた彼女達が、妹に危害を加えたのだ。良く良く話を聞けば、それは以前からだったらしい。

自分が楽な気持ちを感じて逃げていた間に、雫は俺のせいで苦しんでいた。

何かを大切にするのには、代償がいることを頭の奥底では理解出来ていたのに、何も出来ず逃げ続けたことのツケは俺ではなく妹に降り掛かった。

汚い人間は、本当に俺でしかなかった。妹の事を大切にしたい、その気持ちはいつまで経っても変わらなかったのに。嫌、今でも変わらないのに。


何度も俺は妹の辛い顔を見てきた。俺のせいで、何度も傷ついて苦しんでそれでも前を向こうと、現実と向き合おうとしていた。

それなのに俺は、逃げてばかりだから、もう逃げないって、妹が傷つくくらいなら、俺が何からも傷ついていられるように、

俺が出来る最大限のことでちゃんと彼女を守り続けようって、その覚悟ができて誓いを掛けたあの日から数年



_____________俺はまた、大事な妹を傷付けた。




________________________

____________________

_________



身体が鉛の様に、重たい。

先程迄の雫の言葉が、永遠と頭の中を飽和している。


___俺は、結局何も変わっていない。

嫌、変われて等、居るはずも無かった。


こんな俺の存在自体が、この身でたった唯一、俺自身の考えで大切にしようと思った実の妹を深く何度も傷付けて、

最低限のことをすることすら、また上手く出来なかった。こんな兄好かれる訳が無かったんだ。

誰からも好かれる要素なんてある筈もない。あってたまるか、こんな人間。


「ッ.....!あ、す、すみません!!」


目的地も無く彷徨っていたら、いつの間にか人混みの中まで来てしまっていたようだ。

道行く人にぶつかってしまい、咄嗟に頭を下げる。そうして、人混みの流れる方へ体を任せてまた歩き出す。

このまま流れる様に、そうして人混みに溶けるようにして消えて行けたなら、そんなに人生が一生が簡単だったなら、

傷ついたり誰もしなくて良かったのに。


俺は自分の事をやっぱり愛せない。


周りからは、羨ましいと、妬ましいと、沢山の視線を受けてきた。完成された人間だと褒められ、疎まれて。

分かっている、確かに俺はスポーツをしても、勉強をしても、特に努力せずとも手を伸ばしただけで完成していた。

見様見真似でした出来事は、目の前の人よりも優れていた結果を叩き出せた。当たり前に出来た。

自分自身でも分かっていた。人よりも努力なんて必要なかった。それを人は、羨んだ。


俺には何も、分からなかった。努力もせずできる事の、何が褒められるんだ。

持って生まれた才能がただ優れていただけで、俺自身が優れているんじゃ何も無い。

俺はただ、努力して自分の求めるところまで必死に這い上がって、ただただその達成感を得られる事をずっと渇望していた。求めていた。

だから、そういった方々を何よりも素晴らしいと、悪気の1つもなく唱え続けていたんだ。...結果は、散々だったけれど。


気付けば横断歩道の信号は赤。無意識に体が静止していた。

可笑しいな、俺の体は傷むことを本能的に拒めるのに、誰かの事を無意識に傷付けたりするなんて。

それは自分が、本当に最低な人間だから、そうだろう。


信号が青に変わる。行き場等、思い付かない。宛は無い。

....困ったな、どんな顔をして、どんな言葉を掛けたら良いんだろうか。想像が付くはずが無い。

治しても治りきる訳もない、どんなに表面上の傷が治っても、俺という存在は残り続けるのだから。

しかし、考えれば考える程自分と言う存在の歪さに嫌気が差していく。

当たり前になれなかった、何も美しくなんてない化物のような人間だ。醜い。

誰かの輝きをただ奪うだけの、俺はそんな存在だ。


こうやって、自分を貶めていても何も変わらないのは分かっている。

自分を嫌いになって、自分のせいだと抱え込むなんてきっと誰でも出来るんだ。簡単なんだ。

だけど今は、大切にすると決めた人間をまた俺の存在が苦しめていること、それだけがどうしようもなく、虚しくて、

ただ抱えきれないくらい、吐き出してしまいたいくらい、ああ、どうすれば。


__とにかく、人混みからは離れよう


このまま身体を委ねていたら、ますます何も分からなくなって見失ってしまいそうだ。

せめて、人の少ない所でもいい、何か新しい所に行こう、考えを入れ換えることの出来るような、いや、そんな所何処にあるんだろうな。

人混みに逆らって、人気の少ない道を歩いた。


すっかり重量を得てしまった感情が、俺の不要さを頭の中で説いている。

代わり映えのする事ないその思考に嫌気が差してしまいそうで、それでも新たな解答は出てこない。

捩じ伏せるだけの気力も何処にも無い。もう自分の存在意義が分かり得ない。かと言って、誰かに認めて貰いたくも無い。

もうこのまま違う何かになりたいのだ、どうか。



「おい、橒月ィ」


「え......あ、や、山崎さん!?どうしてこんな所に..」


一気に、現実世界へと引き摺り出されるような感覚。肩を掴まれ少し萎縮するが、直ぐに声の主の方へ顔を向けた。

山崎さん、俺の会社の先輩、正直今は会いたくない、慣れた筈の何でも無い振りをした表情が、少し歪むのを感じた。


「お前こそなんでこぉんなところにいんだよ....うっえ、きもちわる....」

「っ....!?も、もしかして、お酒飲んでます...?」


彼はそんな俺などお構いなく、俺の体に身を預けるようにして覆い被さってくる。

何とか抱き止めた彼の体、いや、嗚咽混じりの言葉から漂うお酒の匂いに、思わず聞かずには入られなかった。


「あー??....そうだよぉ、日中から酒飲んでました、悪いか、クソ...」

「い、いえ...そういうことでは無くて、あ、あの....」


こんな時間から、酒に溺れている理由はあまり聞きたくなど無かった。

もし万が一、可能性として、自分のせいでは、無かったとしても。

触れてしまった時の、その結果は、正直言って恐怖以外の何者でも無い。


「俺はなぁ~....ほんっとに出来る男なんだよ~...」


何処か虚ろな目で、俺に全体重を預けて寄りかかったままそう答え始める彼。


「めちゃくちゃ頑張ってきたんだよ〜...今も頑張ってる〜.....俺は頑張ってんだよ〜...」

「...酔いすぎですよ、お家まで送りますから」


俺は言葉を遮るように、自身の言葉を放った後、山崎さんの背中を優しく擦った。


「んん〜.....クソ...」


虚ろな目の雰囲気と、漂うお酒の匂い。相当量を飲んだのだろう。

このまま眠ってくれたら良いと、そんな事を思いながら背中を擦り続ける。

彼は畜生、クソ、など短い単語だけを吐きながら、やがてゆっくりと目を閉じていった。

ほ、っと口から安堵の息が漏れ出る。


(寝てくれたのは良いが、....今動いたら起きるよな..)


寝ている彼の寝息を横目に、今からどうしようかと首を傾げる。

もう少し時間が経てば、睡眠に彼の体が慣れたならば、彼を起こさずに自身の背中に背負って、家まで連れて行けるだろうか。

ともかく彼が目を覚ます前に、目の前からは離れたい。何を話されるか、気が気でない。受け流せる余裕は、何処にも無い。



本当に幸いに人通りは少ないし、これ以上早々知り合いも通り掛からないだろう、なんて。



_____ああ なんて運の悪い。




「..............あれ?蕪、さん....?」


「.......さ、咲......」



目の前に現れたのは、特能幹部、册山咲(サクヤマサク)。俺の事を、何故か慕ってくれている、不思議な男の子。

誰かの足音が近付いてくる様な気がしていたが、まさか二連続知っている人間だなんて。正直、思いもしなかった。

良くない事、願っても無いことは叶いやすいと言えども、ここまでなのか。表情が上手く張り付けられない。頭が、強く傷む。


「.....誰?その男」


咲は、何時も聞いていた声よりも、低いような声で、そして睨み付けるような目で俺を見ている。


「え、あ....ええっと、こちらは、会社の先輩、で」


俺に凭れ掛かっている山崎さんを起こしたくはない気持ちが少しばかり先行して、

何だか内緒話を行う時の様に音量が小さくなってしまったこと、また何かが起こらないかが不安で仕方なくて、

目が泳いでまともにどこにも視線を定めることが出来なかったこと、そんな悪い要素ばかりが詰まった回答を俺はしてしまう。


案の定、咲は目に見えて不機嫌そうに、「ふーん」とだけ告げては、まだ俺を睨み付けている。


「ごめんな、咲、今は、えっと、この人を介抱しなくては行けなくって」


また、悪い要素が詰まった言い方だ。話せば話す程、何かを気にしよう、治めようと、すればするほど良くない方向へ向かう気がしてならない。

冷や汗が止まらない気がする。心臓だけがぎゅっと誰かに掴まれているような気がする。歯がカチカチと鳴り出しそうな気がする。気がする。気が、する。


「........僕も着いて行く」

「えっ」


予想外の言葉に、思わず瞳孔が開く。直ぐに返事を出来ないでぱちぱち、と瞼が開閉運動を繰り返す。

不味い、何か言わなければと口から出た言葉はまた酷い。


「あ、そ、そんな、俺一人で大丈夫だから....」


はは、と苦し紛れの渇き切った笑い。地面の石ころに目線を落としながらの返答は、益々状況を悪化させる。


「今日の蕪さん変だよ。いつもの蕪さんなら僕にそんな表情を向けない。

 ねえ、その人、なんなの。そんなに大事な人なの?どれくらい?ねえ、どれくらい!?」


「っ.......あ、ぁあ......え、ええと......」


「答えてよ!!!!!」


咲の怒鳴り声が、耳の奥まで響く。

余裕の無い表情や話し方は、咲には山崎さんが俺にとっての大切な人で言い訳をしてこの場を逃れてまるで咲に触れさせたくない様な、そんな風に思われたのだろうか。

そういった訳では無いのだが、こんな感情が渦巻く最中の俺の言葉など形にすらならない。ただ、有り触れた嗚咽のような言葉が漏れ出るだけだ。



「_____んんっ、あ、.....うるっせーな......なんだよ..」


「や、山崎さん....!?」


恐れていた、回避したかった事態は嘲笑う様に俺の前へと出現する。欠伸をしながら俺から離れ、山崎さんは、咲をぼうっとした目で見つめた。

最悪だ最悪だ。どうすればどうすればどうしたら上手くいくんだ戻れるんだ何もかもぜんぶぜんぶぜんぶ。


「............蕪さんの何なの、お前」

「はぁ.....???.......えーと...あかねって、ああ、コイツ?」

「僕の言うことに答えなよ、殺すよ?」


咲は俺に問い掛けていた時よりも、先程までよりも、より低い声で、山崎さんを睨み付けていた。

とろんとした目のまま山崎さんは、軽い口を叩く様に、言葉を放つ。


「ころす?おいおい、そんな言葉使っちゃダメだぞ坊主ー」

「うるさい黙れッ!!!!!!」


「山崎さんっ...!!!!!」


再び咲の怒鳴り声が聞こえた時、俺は反射的に山崎さんの体へ手を伸ばした。

咲の足元から急成長して伸びる二本の鋭く尖った植物の蔓が、山崎さんの体を貫こうと襲い掛かった瞬間、

何とか体を引いて軌道から外させることに成功する。


「!!!..っ、な、何、しやがる!!!」

「山崎さん、逃げてください!とにかく、立って、逃げて!」

「逃がす訳ないだろ」

「っっ!!!離れないでください!!」


大層驚いた様で、山崎さんのぼうっとしていた目が何度も瞬きを繰り返してから、やがて大きく開いて非難の声を上げ始めた。

そんな彼を無理矢理起こそうとしたが、咲の攻撃の手は止む気配がない。直ぐに山崎さんへ向けて、何本もの蔓が成長してくる。

次は軌道を逸らしている暇が無い。慌てて彼の前に滑り込んだ。


「....っ、ぐぅ......ッッ!!」


「は....?え、あ、橒月!!?」

「蕪さん、どいてよ!!!!!!」


腹部を鋭く成長した蔓が一気に突き破る。痛みと共に、口に血の味が一瞬拡がって呻くが倒れている暇など無い。直ぐにまた次が来る。

俺の腹部を突き破った蔓に付いていた沢山の葉が、壁になっている俺を避けて彼に向けて真っ直ぐ飛んでいく。

俺は、山崎さんに覆い被さるような形で膝と両手を付いた。


「ぁ、ぐっ......は、はぁっ........はぁ......っ!」

「....え、...ぁ、....な、なんだよ、これ....」


幾つ物鋭く成長した葉が、俺を切り付ける。蔓の様に体を突き破ることはしないが、それでも大量の葉だ。一気に体中に切り傷が拡がる。

山崎さんが、混乱した表情で、俺を見ていた。


「.......は?え、ぁ、な、なぁ...これ、夢、夢だよな.....?俺、まだ夢を見て...」


「.......っ、どうにか、ごめんなさい、俺のせいだから、俺のせいですから、何とか、何とかしますから....ッ!」


「なんとかって、お前_____」


「走って!!!!!!」


伸びてきた大量の蔓に気付き、直ぐに山崎さんの手を引く。幸い狭い路地だ。

何処かに逃げ込んで、隠れる事は出来なくもないはず。そんな淡い期待で、後ろも振り返らずただ一心で走り出した。



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