治療
全員を瓦礫から救出し、怪我の酷い人間から順に
能力を使用して状態を回復させた。
瓦礫の中に埋まっていた皆さんの怪我は、
凄まじいものだった。
目も当てられない程の、姿。
辛うじて息をしている状態。
血を帯びた体と瓦礫に、唯々負の感情が募る。
尚更、直ぐに治る自分の手のことなど
ばかばかしく思えた。
「....ん、助かったよ、ありがとう蕪くん。」
「.......三途の川を渡りかけちゃったよ、おじさん」
「.......死んだかとおもったよぉ.......うぅ....ありがとう...」
「二階堂さん....聊さん....まなちゃん....」
意識を取り戻した三人を見て、
雫が嬉しそうに顔を綻ばせる。
全員、助けることが出来た。
その現実を確認して安堵した瞬間に、
体の力がぐっと抜け落ちるのを感じた。
「危ない」
「.....あ、す、すみません...!御迷惑お掛けしました!」
ふらり、と地面に倒れ込みそうになった瞬間を二階堂さんに助けられた。助けていただいたのが申し訳無く、すぐに慌てて体を離す。
「迷惑なんてそんな...でも本当に助かったよ、ありがとう。」
「あ...俺の方が...俺の方が皆さんに助けられて...」
深々とお辞儀をされ、慌てる。助けられたのは俺だ。
俺は助けられた皆さんの怪我を治しただけにすぎない。
それは当然のことであって、うん、そうだ。
そうなのに。
「御礼どうこうはとりあえず後にしようや。
おじさん達、敵の陣地の真っ只中。
此所から逃げ出さなきゃあ、
まーだ無事とは言えないのさ。」
「憲史郎...そうだね。蓮、聞こえるかい?」
二階堂さんが、誰かに向かって話し掛けている。恐らく猫耳フードの、あの印象的な男性、椎名さんだろうか。
『...聞こえてる。お前らの状況もなんとなく読めた。
オレは今お前らの居るすぐ下の階にいる。
合流すんぞ。』
「ねぇ、でも敵とか....なんで誰も来ないの..?」
此所は敵の本拠地だと言うのに、確かに誰も来ない。
むしろ天井が崩れた時点で、此所は敵で埋め尽くされていても正直可笑しくなかったと思う。
その疑問を、俺には聞こえないけどどうやら椎名さんが答えてくれたらしい。
『お前らを襲った奴、すぐ下の階で暴れてるんだよ。
それを取り押さえに集合してる。
それに、奴、降りる時にエレベーターを壊していって
移動経路は階段だけになったし、お前らは重傷なのが
分かってたからそっちを優先してるって感じだな。』
「不幸中の幸いってことだねえ。
あれ、じゃあ今下降りると危ないんじゃないかい?」
『安全経路は見つけてある。取り敢えずそっちに行くから待ってろ。』
「頼りになるね、待ってるよ蓮」
どうやら、今はとりあえず此所は大丈夫なようだ。
後は此所に椎名さんが来てくれるの待つだけらしく、少し疲れを感じたので壁に体重を預けた。




