出会い
今日は午後の講義は一コマのみだったので、授業が終わると帰り支度をし大学を出る。
帰りは今日の夕飯の材料を買う必要があるのでそのままスーパーへと向かう。
必要最低限の食材のみを買い、スーパーを出ようとすると入れ違いで入ってきた男性とすれ違った。わたしはその男性の服装に驚き思わず目で追ってしまった。
(う、うわあ…、あの人の着てるパーカー猫耳着いてる…)
ファスナーの付いているタイプの濃いめのピンクのパーカーで、帽子の部分が猫の耳のような形なっていた。さらにターコイズブルーの髪色、耳に当てている黄色のヘッドホンなどによりかなり人目をひく容姿をしていた。
見た感じわたしと歳の変わらない若い方だとは思うが、なかなか個性的な人だと思う。あまり見ているのも失礼なので、そのままスーパーを出て帰路につく。
(あっ、今日図書館で借りた本返すつもりだったんだ…食材買っちゃったけど、少しくらいなら大丈夫かな)
追加の用事を思い出したわたしは、家へと向かう道から少し逸れ図書館へと向かう。
さすがに食材を持っている為長居するわけにもいかず本の返却だけ済ませると再び自宅への道を急ぐ。
川沿いの道を歩いていると、向こう側に渡る為の橋の下に複数人の人間がいることに気が付いた。あまり人のいることのない場所なので、少し気になり彼らの様子を観察してみる。
(なにやってるんだろ…?何か話してる…?……ってええっ!?)
何か会話を行っているのかと思い眺めていたら、突然1人の人が他の人間に蹴りで攻撃を始めた。
(夕方…、橋の下…、複数人…、ま、まさかそういうこと…!?!)
状況を1つずつ整理していくと現状について1つの答えにたどり着き、プチパニックを起こしたわたしはあの人たちわ止めないと、というバカな思考に飲まれあたりを見渡す。
下に降りる階段を見つけたので、急いでそちらに向かい彼らの元へと走る。
しかし、
「ハァ…、ハァ…、って、あれ…?」
「は?」
わたしがたどり着いた頃には、立っている人間は1人の男性のみでそれ以外の人はみんな地面に倒れていた。駆け寄ってきたわたしに気が付いた男性は怪訝な目を向けてくる。
(あ、あれ、この人って……)
目の前の男性はとても見覚えのある人物だった。つい先程、スーパーの入り口ですれ違った個性的な服装の人だ。
(格好のみならず、行動まで変わってる人…?!関わっちゃダメな気がする……!)
頭の中で警鐘が鳴り響きその場を去ろうとしたのだが、その前に男性におい、と声をかけられた。
「お前、なんでこんなとこいんの」
わたしに向ける視線を相変わらず鋭く、ひどく警戒されているように思える。
その雰囲気に怯み、わたしは男性の問いに答えることができない。
(いや、そんなの聞きたいのはこっちだし、なんでそんな警戒されてるの?)
「こいつらの仲間?」
あまりに返事をしないわたしに痺れを切らしたのか、再度問いをかけられる。
わたしはその問いに対してなんども首を振り否定を示した。
その反応に対し、ふーんと興味のなさそうに呟くと自身の足元に転がる人間たちに視線を向けた。先程まで向けられていた警戒心が少し薄れたように感じる。
ひとまず攻撃されるようなことはないようなので、わたしは息を吐いた。
「こいつら、オレ1人のとこ狙ってきやがって…、めんどくせぇ…」
「お、襲われたんですか…!?!な、ならすぐに警察に……!!」
「んなめんどくせぇことすんな。つーか、ガキはさっさと帰れ」
「はっ……!?!」
シッシと手を払われ流石に怒りを覚える。
もう完全にわたしへの興味をなくしたらしく、彼はポケットからスマホを取り出すとそれを弄りだす。
そんな姿にさらに怒りを覚えてさっきまで全く出なかった声が、思わず口をついてでる。
「な、なんなんですか!わ、わたしはあなたのことを心配して……!」
正確にはこの人のことを心配してではなく、ここで行われていた喧嘩を止める為だったのだがこの際そんなことどうだっていい。
責めるようにそう告げると、男性は一瞬だけ目線をこちらにやるがすぐにまたスマホの画面へと戻した。
「頼んでない。邪魔だからさっさと帰れ」
「!!!言われなくたって帰ります!失礼しました!」
男性のあまりの態度に怒りが最高潮に達し、わたしはそう怒鳴りつけると走ってその場を去った。
その後は、寄り道をすることもなく家に帰ったのだが先程のことを思い出す度に怒りが蘇り兄が帰ってきたらすぐに愚痴ってやろうと心に決めた。