悩ましい話
誤字報告、本当に助かります。
タグを追加しました。お気づきの方もいらっしゃったかと思いますが、自衛をお願いいたします。
目を覚ますと医務室だった。クロードの姿は無いが、1枚のメモが残っていた。
『二人だけの秘密』
そう書かれていたメモにゾッとした。そうだ。ヘンリエッタだとクロードに告白してしまった。これからどうなるんだろう。
とにかく寮へ戻ろうと医務室を出る。すると、カイムが廊下に立っていた。
「アンリ。心配した」
「カイムさん。どうして・・・」
「倒れたって聞いて。ここで待ってたんだ。寮に戻るのか?送ってく」
「大丈夫です。一人で戻れます」
「いや、送ってく」
カイムに肩を抱かれる。その手を振りほどいた。
「離して!!」
「アンリ?」
「優しくしないで!後悔するのは貴方なのよ!?」
走ってその場を去った。今は誰とも話したくなかった。
寮に帰ってベッドに突っ伏す。クロードにバレてしまった。そして、その内バレてしまうのだ。クリストファーにもカイムにも学校のみんなにも・・・。
今まで築いた関係が壊れてしまう。ムシュー子爵にも迷惑をかけてしまう。母にも・・・。
「どうすれば良いの?」
『何かあったらすぐに手紙を書くこと』
そうだセリーヌに手紙を書こう。ここに残るか、ベザント国に帰るか。一人で悩んでいても始まらない。私はペンを取った。
手紙が返ってくるまで1週間はかかる。その間どうしよう。手紙を書き終えた私にも悩みは尽きなかった。その時、扉をノックする音が響いた。
「ムシューさん。お客様が見えてますよ。寮の入り口でお待ちです」
寮の管理人に声をかけられた。誰だろう。カトレアなら直接、来るはずだ。ノロノロと部屋を出て寮の入り口に向かった。
待っていたのはカイムだった。
「カイムさん・・・先ほどは失礼しました」
「いや・・・押しかけてすまない。少し歩かないか?」
私は頷いてカイムの方へ向かった。カイムはゆっくり歩きだした。並んで歩く。お互い無言だった。
歩いている内に中庭に着いた。カイムに促されベンチに座る。少し間を空けてカイムが座った。
「体調は平気か」
「はい。大丈夫です」
「・・・まだ少し顔色が悪いな」
「そうですか?」
「ああ」
そしてまた無言。カイムは何がしたいのだろう。
「・・・さっき」
「はい」
「後悔するって言ったろう」
「・・・はい」
「俺は後悔しないから。何があっても。それだけは言っておこうと思って」
それは、貴方が私の正体を知らないから。ヘンリエッタだって知らないから。
「冷えるな。寮に送るよ」
「はい」
また私たちは無言で寮に帰った。
どんなに悩ましい夜でも、必ず朝が来ることを私は知っている。
翌朝、教室へ着くとすぐにカトレアが寄ってきた。
「アンリ、大丈夫?って顔色悪いわね」
「まだ、少し・・・」
「無理しないで寮で休んでいたら?」
「授業に遅れてしまいますから」
こんな時でも授業の心配をする自分が少し可笑しかった。
カトレアの様子からして、まだ私がヘンリエッタだという事は知れ渡っていないようだ。クロードは本当に秘密にしておくつもりだろうか。だとしたら、何故?どう私に復讐するつもり?授業を受けたにもかかわらず頭に入って来なかった。
結局、手紙が戻ってくるまでの1週間、クロードからの接触は無かった。
私はセリーヌからの手紙を開いた。
『アンリへ
貴女が混乱していることがよく分かる手紙だったわ。私の考えを取りあえず書くわ。
貴女、自衛しなさい。これは復讐からという意味ではないわ。
貴方の話してくれた乙女ゲームとは違って、クロードは貴女を愛していると言うより執着してる。
貴女の正体を他の誰かに話すことは無いでしょう。だからって安心してはダメ。
その執着は異常よ。もし、不安なら帰ってらっしゃい。
でも、国に帰ったくらいでクロードの執着は収まらないと思うけどね』
クロードが執着してる?私に?確かに、あの様子は異常だったけど・・・。
「愛してる・・・か」
クロードからの告白は信じられない。きっと何か考えが・・・私を陥れるための考えがあるはず。そうか、私を陥れるために執着しているのね。だからセリーヌは自衛しろって書いてきたんだ。
私はセリーヌからの忠告の本当の意味を理解できていなかった。
セリーヌの手紙を受け取った次の日から、私は一層、クロードに関わらないように過ごした。1年生の教室に近寄らない。生徒会室に近寄らない。この2つを徹底した。
そんな冬休みも迫ったある日の事だった。
「ムシュー。生徒会長が呼んでるわよ。生徒会室に行って」
何故か生徒会室へ呼び出されてしまった。クロードが居たらどうしよう。不安に思いながらも生徒会室へ向かう。扉をノックするとクリストファーの声が返ってきた。
「どうぞ」
「失礼します」
中に入ると、そこにはクリスファーしか居なかった。少しホッとする。
「呼び出して悪いな」
「いえ。何か御用でしょうか」
「知らせておこうと思ってな」
「何をでしょう」
「おめでとうヘンリエッタ。君のクラヴィス公爵家への復帰が認められたよ」
「・・・え?」
「ずっと、クロードが動いてたらしい。俺も最近知ったんだけどな。クロードは君をクラヴィス公爵令嬢に戻し、クラヴィス家の婿になるつもりらしいな」
「か、会長」
「何だ?」
「会長は、私がヘンリエッタだって・・・」
「気付いていたよ。元婚約者候補だ。当たり前だろう」
「そこで相談なんだが。ヘンリエッタ。私の婚約者になる気はないかい?」




