1−2
意識が暗闇に落ちていく。
頭は混乱したままだ。死んだ?誰が。
体の感覚が戻ってくるのを感じた。
視界は暗いままだ。起きようとしても起きれない。
なぜか私の意識なのに体が動かない。
「これは死の直前のお前の体だ。死の瞬間に意識がなかったから理解できぬのだろう。ならばその身をもって己の死を知るが良い。」
声が頭に響く。
私はわかってしまった、これから何が起こるのか。
この声が私に何をしようとしているのか。
温かい湯が体を包んでいる。
そう、あの日私は湯船に浸かりながらレポート課題に励んでいた。
そして私は湯船で寝てしまった。パソコンに手を置いたまま。
しばらくして体が湯船の底を滑っていくのを感じた。
鼻から、口から体内に大量の水が流れ込んでくる、息ができない、苦しい。
体が反射的に湯船の蓋を掴む。不安定な置かれ方をしていた蓋は湯船に滑り落ち、そこに乗せられていたパソコンも一緒に湯に落ちてきた。
此処から先は思い出したくない、思い出すだとあの苦痛が蘇る。
簡潔に言うなら、私は溺れたところに感電して死んだ。
「これで理解できたか。」
再び無の世界に戻された私は恐怖で何も考えられない状態になっていた。
「理解できたようだな。私は管理者。姿はない。」
管理者、、恐ろしい存在。
「もう一度言おう、お前は選ばれた。行け。運命と世界はいつもお前の味方だ。」
声の存在の気配が消えていき、意識が沈んでいくのを感じた。
頭は恐怖と混乱に支配されていたから、声が何を言っていたかなんて全く気に留めていなかった。