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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第一章 学園生活編
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81話 因縁の相手

81話



魔法陣の上には深紫色をした長い髪、少々吊り上がった目に琥珀色の瞳、そして背中からは真っ黒な三枚の羽が、左側だけに生えている見た目十歳前後の少女が裸で立っていた。



「ふむ。われをよびだしたのは、キサマか?」



少女は俺を指差しながら先ほどのステラみたいにふんぞり返った態度を取り高い声でそう言う。


なんだコイツ、随分と偉そうな奴だな。コレも知的個体なのだろうか、にしても種族は何だ?天使みたいな羽は生えているが黒いし、それに隻翼だしな。



「……ああそうだが、俺がお前を召喚した」


「そうかそうか、人間ごときがわれを従えようなどと、じつにおろかなことじゃな」



イラッ

マジでコイツ、こんなのが俺の召喚獣とかふざけるな。のじゃロリで最初は可愛いとは思ったが、とんだやつだ。確か魔術の書に送り返す方法とか書かれてた筈だ。


いや、コイツを生贄にして再召喚するのも悪くない。某カードゲームみたいに強力なのを呼び出してやる。


つーかコイツ、どっかで見たことがあるような気がーー



「それにしてもキサマ、どこかでーー」



改めて目が合った瞬間、俺はそいつの正体に気がついた。



「「あーーーー!!」」



俺とそいつは同時に声を上げる。どうやら向こうも俺が誰かわかったらしいな。



「なぜキサマがぁ!!」


「それはこっちのセリフだ。『サタン』」



そう、コイツは二週間以上前に王都を襲撃してきた魔族共の親玉、六魔天将のサタンだ。見た目が随分と変わっていたからすぐには気がつかなかった。


サタンの方もこちらに殺意のこもった目で睨みつけ激昂している。



「おのれぇ、よくもわれを殺したなぁ!」


「っ!」



そう叫ぶように声をあげると同時に、サタンは俺に向けて右腕を振り上げ殺そうとしてきた。至近距離であったために反応が遅れてしまったがーー



「ぐ!?な、なんだこれはぁ!」



サタンの手は俺の左胸に当たる寸前で急停止した。まるで見えない壁、それも絶対に壊れない壁に阻まれたかのようにだ。何が起こっているのかわからなかった。


するとアデールが物陰から出てきて俺に向かって言った。



「さっきも言ったと思うけど〜、召喚された魔物は絶対に主人に逆らうことはできないのよ〜。攻撃なんて、尚更できるわけないわ〜」


「なんじゃとぉ!?」



そ、そうなのか。これならサタンは俺を殺すことができないわけだな。とりあえず、一安心だ。



「うぐぐぐ、おのれぇ……!」



サタンが殺意を込めた眼差しで俺を睨みつける。自分を殺した憎き相手を殺せない、これほど屈辱的なことはないだろう。



「クックック、さて契約がまだだったな」


「誰がキサマなんぞに従うものかぁ!おのれ!こんな束縛などぉ!!」



サタンがなんとか俺に攻撃を加えようと必死に抗う。それも全て空振りしているのだから滑稽だ。



「そんじゃ、名前はーー」


「おのれぇえええええええええええ!」


ズドドォ


がむしゃらに振り回す手から魔法が俺に向けて撃ち出されるも、魔法は意志があるかのように俺を避けて周囲へと飛んでいった。



「うわぁあああ!」


「や、やばいってこれ!」


「きゃああ!」



そして、その一つがシャロンたちの方へと飛んでいった。



「シャロン!大丈夫か!?」


「だ、大丈夫!」



俺はサタンへと視線を戻し、キッと睨みつける。

コイツ、無意識とはいえよくもやりやがったな。



「ほほう、なるほどなるほど。キサマには危害は当てられぬが、その周囲にはできると。これは良いことに気が付いたのじゃ」



口角を吊り上げ、笑みをうかべるサタン。コイツ、何をする気だ。やらせはしないぞ!



「待ーー」


「《極滅魔弾雨》!」



サタンが頭上に手をかざすと、そこから周囲に向けて黒い弾丸が無数に撃ち出される。



「「うわぁあああああ!」」

「「きゃああああああ!」」


「クハハハハ!みなごろしにしてやるのじゃー!」


サタンは高笑いをしながら周囲へ次々と攻撃を放つ。



「やめろサタン!」


「うるさいのじゃ!」



俺は周囲に結界を張りつつサタンにそう叫ぶも一向にやめる気配がなかった。どういうことだ、召喚獣は主人に逆らえないのではないのか!?



「け、契約を完了させないと命令しても聞かないのよ〜!」


「なんだと!」



どうしてそう大事なことを先に言わないんだ!俺も魔術の書を読んではいたが、詠唱のところくらいしか読んでないから、その項目はすっ飛ばしてた可能性が高い。


幸い弱体化しているのかサタンの攻撃は結界で何とか防げているがーー


すると弾丸の一つが結界から漏れて王女の方へ向けて飛んでいく。



「しまっーー!」



ガキィガキィン!


弾丸は王女に当たる前に、寸前で躍り出たネコミミの生徒に全て弾かれた。



「……殿下、ご無事ですかにゃ?」


「えぇ、ありがとう。ミカ」



ミカと呼ばれたネコミミの生徒は王女に向かって無事か尋ねる。確かアイツ、教室の隅の方にいた奴だったな。言葉遣いからして王女の護衛とかなのだろうか。



「嬉しいにゃ、また殿下に褒められたのにゃ」



にしても語尾ににゃあって、それにネコミミ娘かぁ、何か萌えるなぁ。



「そこのお前、にゃにか無礼なことを考えてるにゃ?」


「っ!?いえ、決してそんな……」



鋭い、これが野生の勘とか言うやつか?

てか今はそれどころじゃねえ!



「王女を殺し損ねたか、われも随分弱くなったものじゃな」


「サタン、これ以上好き勝手はさせん」


「ふん、やれるものならやってみるのじゃ」



再びサタンが頭上に手を掲げ、魔力をその手に集中させようとした。そうはさせない!



「今すぐにやめろ!フィリア(・・・・)!」



そう叫んだ瞬間、サタンの動きがピタリと止まった。



「な、なんじゃ!?これはぁ……!」


「お前の名はフィリアだ。そして続けて命ずる。地に伏せ、一切の動きを禁じる」


「だ、誰がキサマの命令なんぞに……ぐぅう!」



サタンは必死に抵抗している様子だが、体は俺の命令通りに地に伏せた。


そして俺を殺気を込めた眼差しで睨みつけていた。



「こ、このぉ!人間風情に、こんな、屈辱……!」


「お前は俺の召喚獣だ。今後、勝手な行動はさせねえぞ」


「この、人間がぁ!」



地に突っ伏したまま、表情だけは怒りに染まったまま俺を睨みつけるサタン。


とりあえず動きは封じたが、こんな危険な奴が召喚されるなんてな。さっさと殺して再召喚した方がいいかもしれない。



「おのれぇ、絶対にキサマを殺してやるのじゃ!束縛を破って、いつか絶対にぃ……!」



相変わらず恨み言のように俺を殺すと言いながら睨んでくるサタンを見ていると、段々とそんな気持ちが薄れてくる。


この感情は、なんだ?




クルシメタイーー



奴のプライドを粉々にしたい。

奴の屈辱に歪む表情を見たい。

奴の苦しむ声が聞きたい。


壊したい、壊したい壊したい壊したい壊したい。



そんな感情が次々と俺の中で湧き上がってくる。


あのサタンが、俺が一度殺したあのサタンが再び俺の眼前に現れるなんてな。

嬉しいよ、今度は痛めつけて苦しめて、それでも殺さずに長らく苦しませてやるからな。楽しみだ。



「っ!」



サタンの表情が一瞬恐怖に染まった。アレだ、俺が奴を蹂躙した時に見た表情だ。ククク、またあんな表情が見れるなんてな。



「……さて、これからよろしく頼むぞ。『フィリア』」



そう言いながら屈んでサタンの、いやフィリア(・・・・)の頭にポンと手を乗せると俺と奴がパァっと淡く光る。契約完了の証だ。



「わ、われに気安く触れるなぁ!この人間がぁ!」


「さてお前の拘束を解除する前に、いくつか命令をしておこう。勝手な行動をさせないためにな」

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