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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第一章 学園生活編
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80話 回復支援型



二人の目の前には人魚の姿をした個体と、シャロンの膝くらいまでの大きさのある卵のようなものが召喚された。



「……えーと」


「これは、一体……」



二人は目の前のモノに困惑している様子だった。



「……うーん、あら?もしかしてあたし、召喚されてしまったのかしら?」



人魚のような個体が口を開いてそう言葉を発する。

喋った!?ということはアレは知的個体なのか、他に知的個体がいるなら大体は人型をしているのだろうか?いや、でもフェンリルとか伝説の魔物だし、そのうち喋り出しそうだな……



「で、どっちがあたしの主なわけ?」


「えっと、多分私……です」



腕を組んで二人を見つめる人魚に対し、アクリーナが手をあげてそう言う。まあシャロンの目の前には卵、アクリーナの前に人魚がいるのだし間違いないだろう。



「そう、なら名前か対価をくださいな。召喚されてしまった以上、貴方に従うほかありませんから」



随分と偉そうな態度だなー、てか人魚までも召喚されるのか。フェンリルですら召喚されてるんだから何があっても不思議じゃないな。


あまり後ろを振り向きたくない。威圧感がすごすぎる……



「グルルル」


「よしよし」



よくまあアレスは可愛がれるもんだな、自分が召喚したのだし可愛がるのは当然か。



「え、ええと……?」


「別に急かしてるわけじゃないわよ。ゆっくりでいいから考えなさいな、その場の思いつきで変な名前をつけられても困るわ」



そう言って人魚はため息をついた。今までの召喚主にろくな名前をつけられたのだろうか。



「うーん……」



アクリーナは頭を抱えている。あんなことを言われたから余計にまともな名前にしようと悩んでしまうだろう。



「そういえば紹介が遅れたわね。あたしはセイレーン、星海の歌姫と呼ばれる種族よ。すごいでしょう?」



うわうぜえ、ドヤ顔で言いやがった。

セイレーンと名乗った人魚は腰に手を当てふんぞりかえるようにそう言った。



「……それじゃあ、『ステラ』で」



アクリーナがそう言うと二人が淡く光った。契約が完了したらしい。



「ま、いい名前じゃないかしら。これからよろしく頼むわね」



ステラはアクリーナにそう言う。

プライドの高そうな感じはするが、その割に従順な感じがする。一体なんなんだろうか。


そんなことを思っているとステラがふと俺の方に視線を向けてきた。



「…………?」



ステラは怪訝な顔をして首を傾げると、すぐに視線を逸らした。

一体なんだというんだ。



「あらあら、セイレーンなんて珍しい種族ね〜。それに回復支援型の個体よ〜、貴方達すごいわね〜」



セイレーンって確か前世じゃ歌声で魅了して船を沈めるとかだった気がする。ゲームとかじゃ歌で攻撃力を上げるとかあったし、そういう区分になるのだろうか。


そういえばシャロンの方はどうだ?なんか卵っぽいのを召喚していたみたいだが。



「ええっと……」



シャロンは自分が召喚した卵らしきもの前に困惑した様子でいた。



「あらあら〜、貴方すごいわね〜」



アデールが驚いたような仕草をしながらシャロンに近づいて行く。どうやら何か知っているみたいだが、アレは一体なんだ?



「それはミスリルドラゴンの卵ね〜、ミザール教が崇める天使様、ミカエル様がこの世界を創造した時に祝福をもたらしたと言われるドラゴンの卵よ〜。回復支援型の中でも、最高レベルの個体ね〜」



はいい?え、今ミカエルと言ったか?その名前が出てくるくらいにすごいのを召喚したのか?

アレスにグロリア、そしてシャロンといい俺の周りの奴らすごすぎるだろ。


というかミカエルが世界を創造したとか言ったよな、それって女神フェネアンではなかったか?


……いや、俺は直接聞いたからそう思うのだろうが伝説や言い伝えなんて月日が経てば変わるものだろう。それに女神自体が怠け者でミカエルが役割を担っていたらしいし、あながち間違いではないのかもしれない。



「ええと、それじゃあ契約の方は……」


「この状態だと契約はできないわね〜、魔物にしても知的個体にしても、双方の同意で契約は成立するからね〜。この子が孵るまで待つか新しく召喚し直すかしたほうがいいわね〜」



ん?ステラがいうには召喚されたからには従うほかないとか言ってたが、それとは違うのか?



「ちょっと、それってあたしは召喚されたら拒否できたってこと?」



案の定ステラがアデールにそう質問をする。とちうか召喚獣が勝手な行動をしているがいいのか?いや、命令をまだ下してないし問題はない、のか?



「それは違うわね〜、今言ったように魔物や知的個体、どっちにしても自分の意思があるものは召喚された時点で召喚主には逆らえないわ。あくまでもこの卵みたいに、自分の意思がないものに対して契約ができないってことよ〜」



そういうことか、まあ卵に対して『お前は俺のものだ!』と言ったところで動くわけでもないし、その辺の石ころに言ってるようなものだしな。



「それで、どうするのかしら〜?卵は学園側で面倒を見ることもできるけど〜?」


「いえ……私は、このまま孵るまで待ちます」


「そう、わかったわ〜。それじゃあ孵ったら育成についてまたお話しするから、教えてね〜」


「わかりました」



ふむ、育てることにしたのか。卵から育てる、なんか魔物を使役するというよりペットみたいだな。犬とか猫とか、そんな感覚に近い。



「じゃあ、最後は俺だな」



そう言って俺は魔法陣に近づくと、シャロンは邪魔にならないように卵を持って離れようとした。



「んっ!んんん!」


「大丈夫か?どれ、俺も……んぐ!」



二人で持ち上げようとしたが、ミスリルドラゴンの卵はビクともしなかった。相当重いぞこれ。


試しに俺はノックするように卵を叩いてみる。



カンッ


「……かって」



何だこれは、卵にしては硬すぎるだろ。表明はデコボコひとつもない綺麗な表面で全体的に銀色に輝いている。もしかしてマジでミスリルで出来てるのか?


とりあえず俺が召喚するのに邪魔になるし、適当に魔法で重さとか変えてどかそう。



「《重量調節 紙》」


「わわわっ!」


「おっと!」



魔法で卵の重さを紙一枚分くらいまで落とした。ちょっと息吹きかけただけでピューっと飛んでいきそうになった。



「しっかり掴んでおけよ、というか《空間収納》にでも仕舞っておけ」


「う、うん」



さて、いよいよ俺の番か。一体どんな個体が召喚されるのだろうか。攻撃型がいいかな、それも強力なやつ。俺には回復や防御なんてものは性に合わん。



「『我が求めに応じーー」



改変でもして強力な個体を呼び出そうかな?

ーーいや、下手したら制御不能なレベルの個体が召喚されるというテンプレになりかねないし、そうなったら大変なことになる。


ここは大人しく、普通に詠唱するか。



「ーー此処に顕現せよ』《召喚》」



……でも少しくらい魔力を多く注いでも大丈夫だろ。


俺は魔法陣にシャロン達よりも魔力を多少多く流し込んだ。



バチッ、バチバチッ


「な、なんだ!?」



魔法陣から溢れ出る魔力に伴い、黒い稲妻のようなものが大きな音を立てて溢れ出た。


くっ、魔力量を増やしたのが失敗だったか!?

マズいな、なんだか爆発でも起こりそうな雰囲気がするぞ。



「爆発耐性結界!対物理結界!魔術結界!」



俺はすぐさま距離を取ると魔法陣から球状に何重もの結界を張った。どのくらいの威力になるかわからないし、心許ない。


パリィン!


すると結界はすぐに壊れ魔力と雷が渦を巻き、巨大な黒い竜巻のようなものがゴォオオと音を立てて現れる。

本格的にマズいことになってきた。



「ちょ、これやばいって!」

「逃げたほうがいいんじゃないのか!?」

「なんなんだあれ!?」


「みんな〜、一旦授業は中断して逃げるわよ〜」



アデールがそう言うと周りのエルフ共は一目散に逃げ出し、物陰に隠れた。

俺は自分のしたことの不始末を片付けなきゃいけないので、逃げ出しはしなかった。


いつでも魔法を放てるように魔力を手に集中させる。いざとなれば爆発に対し爆発で威力を相殺させる。



ゴォオオオオォォォ


「む、なんだ?」



黒い竜巻は段々と規模が小さくなり、やがて形を成し始める。どうやらこれも召喚に成功?しているみたいだが、爆発は起こらないだけ一安心だ。



「っ!?」


「うっ!」


「な、なんだ!?」



魔力が完全に固まったと同時に強い光を発し、周囲にいた俺たちの目を眩ました。



「むー、なんなのじゃ」



やがて光が収まると、そこには小さな女の子が立っていた。

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