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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第一章 学園生活編
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74話 二週間


なんとか落ち着きを取り戻したシャロンは俺の右腕に抱きついて、その隣にアクリーナが座っている。


そして現在、俺の正面には腕組みをしているゴットハルトが立っていた。



「……目が覚めたようだな」


「……はい」


「まぁ何にせよ、無事で良かった」



ゴットハルトが俺を心配していたような言葉をかける。

自分の受け持つクラスの生徒であるのだから、教師として当然か。


『貴方は一人ではありません』


ミカエルの言葉を身に染みて感じる。

俺は一人じゃない。シャロンやアクリーナ、こうして俺を想ってくれている人がいるのだ。



「二週間も寝ていた感想はどうだ?」


「え、二週間!?」



二週間も俺は寝て……昏睡状態に陥っていたのか!?そんなにも経っていたなんて、俺の感覚だとせいぜい数時間程度だ。



「そうだ、あれから二週間も経過している。授業も近いうちに再開される予定だ。それまでしっかりと体を休めておけ」


「は、はあ」


「それと二度と、魔族の魔力を取り込んで戦おうとするな」



魔族の魔力を?ああそういえば、サタンを倒すときに魔力が足りなかったから吸収したな。



「今回、お前が倒れたのはそれが原因だ」



ゴットハルトは詳しく話し出した。


俺が意識を失う直前、襲われたあの超激痛は魔族の魔力が原因だという。


人間と魔族の魔力は質が根本から質が違い、互いに相反している。簡単に言えば火と水のようなものだ。


無理に取り込んだりすると拒絶反応が起こり、取り込んだ箇所から肌が黒く変色していき激痛に襲われた挙句、死に至る。


今回のように、怪我が完治して意識が戻るなど前代未聞で、本当に奇跡としか言いようがないという。



「まるで、天使の加護(・・・・・)を受けたかのようにな」


「!」



ゴットハルトはまるで何か確信を持ったかのような目で俺を見ながらそう言った。


天使の加護、ね。その通りだな、加護なのかは知らんが俺は実際にその天使とやらに会い、そのおかげで生還できたようなものだ。



「それとお前が討伐した魔族のことだが、部位の方は国へ提出してあるが、お前が討伐したことは伏せて報告しているから特に聞き込みとか心配する必要はない」



それを聞いて内心ホッとする。事件の関係者が目覚めて面倒くさい取り調べを受けるとか、ドラマとかでよくある話だからな。



「個人的には気になることがあるのでな、完治したら聞くぞ」



ゴットハルトはそう言って病室から出て行った。


個人的に、ね。天使がどうとか言ってたし、それに関してだろうか?何やら確信があるようだしな。



「……心配かけたな、二人とも」



俺はアクリーナとシャロン向き合い、頭を下げた。

シャロンは泣きそうな、アクリーナは何やら不満気な表情をしている。


また勝手に無茶をして心配をかけてしまった。一体、これで何度目だろうか。もはや謝って許されることではないだろう。



「………本当に……」



先に口を開いたのはアクリーナだ。

これは怒られるパターンだろうか、平手打ちくらいは覚悟しよう。



「本当に、心配したんだからぁ……!」



ダムが決壊するかのようにアクリーナの両目から涙がボロボロと溢れ、手でそれを拭う。



「クーラス……!」



シャロンも俺の腕を抱きしめる力を強くして顔をそこに埋めた。泣いているのか若干震えているような感じがした。



「本当に、心配をかけてすまなかった」



俺はもう一度二人に頭を下げた。

コイツらだけでも無事でよかった。本当に、無事でよかった。


アレス……お前とはもっと色々と話がしたかったよ……


その時、病室のドアがガチャリと開く音が聞こえた。



「クーラスが目を覚ましたって聞いたんだけど、どうやら元気そうだね」


「!?」



入ってきた人物を見て、俺は驚愕する。


何故、お前が生きているんだ!?



「ア、ア、アレス……」


「うん?なんだい?」


「な、何で……お前は……生きて……」


「え?」



サタンは「気性の荒い、銀髪の男を殺した」そう言っていた。今は気性は荒くはないが、少なくとも戦闘中であればそうであるが……似た人物だった、のか……?



「いや、何でもない。良かった……お前が無事で……」



俺の目から涙が流れ出るのを感じた。

ああこれか。これが、大切な人がいるってことなんだな。



「サタン……魔族たちの親玉の奴が、お前に似た特徴の人物を殺したと言っていてな、それで……俺は………」


「………」



アレスは神妙な顔つきになり、黙り込んだ。



「クーラス……」


「ん、何だ?」


「実はね……」



シャロンが顔を上げて俺に話しかける。目はやはり泣いていたのか真っ赤だった。



「シャロン、それを話すのは……」


「でも……」



何かを話そうとしたシャロンをアクリーナがそれを止めた。

話すって、何をだ?一体、何の話をしてーー



「いいよ、僕が話すよ」



アレスはそう言うとゆっくり俺に近づいてきた。



「その前にクーラス、体の調子はどうだい?」


「……ああ、まだ立ってみないとわからないが少なくとも動けなくはない」



まあ立ち上がりたくとも、シャロンに抱きつかれているせいで立てないんだが。



「それなら明日、また尋ねるから。その時に話をするよ」


「わかった」



そう言ってアレスは病室を出て行った。

話か、一体何だろうか。


ふと窓の方を見ると、もう夕暮れで空が紅く染まっていた。


二週間か、随分と経ったものだな。

街もある程度は片付けられていたり、簡易的な建物が建てられて商売を再開している商人も見える。


それにしてもだ。



「クーラス……」



いつまで抱きつかれているのだろうか。

随分と心配をかけてしまったみたいだからな、これは仕方がないことだ。



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