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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第一章 学園生活編
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71話 アイドルとシスコン



死んだと思った、その瞬間だった。



「もぉ〜ダメだよっ」


「うおっ!」



背中に衝撃が走ったと思ったら、また何処からか声が聞こえて、目の前に結界が現れ攻撃を全て防いだ。



「なっ!なぜ、お前がここに……!」



メタトロンが信じられないという表情をして俺を……いや、俺の後ろを見つめていた。


すると俺をあすなろ抱きするように目の前に手が回ってきた。



「ちょっ!な、何だ!?」


「初めまして!天使のアイドル、サンちゃんだよー!よっろしくぅ!」



某解体のアイドルみたいな口調で、俺をあすなろ抱きする女性と思しき人はそう名乗った。


初めましてと言われても、背後から抱きつかれてちゃ顔すら見えないんだが……



「なぜ……お前がここに、サンダルフォン!」



サンダルフォン、また聞き覚えのある名前だ。

確かメタトロンの弟……とは聞いてはいるが、この世界だと妹なのかな。



「そうだよーっ、サンちゃんは七大天使の末っ子なんだーっ!」



さっきから突っ込まなかったが、ちょいちょい心を読まれてるよな。

ミカエルといいメタトロンといい、そりゃ天使だし、神の使いとかなのだし当たり前なのだろうけど。



「うんうん、さっすが理解が早いねーっ!」



口に出さずに会話が出来るのは便利なものだ。



「あ、あの、それよりも何で俺は抱きつかれて……?」


「そ、そうだ!貴様、さっさとサンダルフォンから離れろ!この罪人!」



俺のせいかよ。


メタトロンは感情をあらわにして激昂するように叫ぶ。



「もぉー、メタ姉?そんなに怒らないの。もっとサンちゃんみたいに笑顔で……きらーん☆」



サンダルフォンは俺から離れると、頰に人差し指を当てながら満面の笑みを浮かべた。



「うっ」



メタトロンが顔を紅くし、手で口元を押さえたと思ったらすぐに顔を逸らした。

一体どうしたんだ?



「ほらほらっ、貴方も一緒にせーの、サンちゃんスマイル!きらーん☆」


「き、きらーん……」



俺は思わず苦笑いを浮かべる。


サンダルフォンは、本当に某アイドルを彷彿させるような容姿をしており髪型も、顔つきも似ていた。

違うところといえば、せいぜい金髪なのと翼があるくらいだ。



「表情が硬いなー、まあいいや。ミカ姉、大丈夫?」


「う、大丈夫です。少し、力が入らなくなっただけです」



サンダルフォンはふわっとミカエルの側に寄り、声をかけた。

よかった、無事だったみたいだ。



「……メタトロン、今貴方は何をしたのか理解しているのですか?」



キッとさっきのメタトロンと引け目を取らず、鋭い眼光で睨みつける。

メタトロンはそれに思わずたじろいだ。



「っ!わ、我は規律を守るために……」


「メタ姉はいつも規律規律って、少しは情状酌量の余地とかないの?」


「く、う……」



サンダルフォンも呆れたようにメタトロンにそう言うも、メタトロンはただ狼狽えている。

規律を司る天使と言ってたしな、役割というものがあるのだろう。



「だ、だがそれでは示しがつかん。それに秩序というものが……」


「もー、そればっかり。そんな規律だの秩序だの、固いことしか言わないメタ姉、嫌い」



サンダルフォンがはっきりとそう言うと、頬を膨らませながらプイッとそっぽ向いた。

するとメタトロンはあからさまにショックを受けた表情になり、ものすごく慌てた。



「そ、そんな……!ち、違うんだ。我はそんなつもりじゃ……嫌だ、サンダルフォン……」



涙目になりながら、懇願するかのようにサンダルフォンに近づいて言う。


……確か天使の威厳を表した存在とも言ってたよな、その威厳とやらはどこにいったのか。

こんな醜態を人間である俺に晒していいものなのか。


俺はそんなことを考えながら、半目で茶番をただ眺めていた。



「お願いだ、嫌わないでくれぇ……」



もう涙声になってるじゃねえか、何なんだメタトロン(こいつ)



「……じゃあ、彼のしたことを今回は見逃してくれる?」


「ああわかった!そんなことで許してくれるのなら!我は、何だってする!」



おいコラ、さっきまで大罪だの許されないことだの言ってたくせに、あっさり『そんなこと』で一蹴すんなよ。



「罪に……いや人間、すまなかった!この通りだ!だから、許してくれ!な?な?」



ほんと何なんだ。さっきと様子が変わりすぎだろ、口調も威厳のある喋りから随分と砕けてるし。


何だろう、サンダルフォンに嫌われたくないという一心で、メチャクチャ必死になっているように見える。

まさかとは思うがーー



「人間!頼む、サンダルフォンに嫌われたら我は、我はぁ…」



俺の手を取り半泣きで必死に懇願してくる。



「わ、わかった。わかりましたから」


「本当か!?本当だな!」


「本当本当、もう気にしてませんから」



本音を言うと正直これ以上メタトロン(こいつ)に関わるのが面倒くさかった。



「サンダルフォン!許しをもらえたぞ、だから嫌わないで……くれるよな?」


「さーっすがメタ姉だねーっ。寛容な心で彼を許してあげるなんて、やっさしー!」



また、きらーん☆とか効果音が出てそうな笑顔でサンダルフォンはそう返すと、メタトロンはあからさまにホッとした表情を浮かべた。



「七大天使の中でも最高!流石は自慢のお姉ちゃんだよーっ!大好きっ。きゃは☆」


「ぐはっ!」



サンダルフォンがそう言った瞬間、メタトロンは鼻血を噴射して倒れた。


間違いないな。メタトロン(こいつ)、シスコンか。それも、かなりのだろう。


天使の威厳もクソもねえな、こんなのが規律を司っていて、そんで殺されかけたってのに……



「ふっ、チョロい」


「!?」



サンダルフォンがアイドル?らしからぬゲスい表情を浮かべながらそう呟いたのを、俺は見逃さなかった。


……何だろう。天使って、みんな二面性があるものなのかなぁ。


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