異常性癖が異世界転生した結果

第一章 学園生活編

64話 共闘

「ぐ、ガハッ！」

グロリアは魔族を倒すと力尽きその場に崩れ落ちる。出血が酷く傷口から勢いよく血が溢れ出していく。

「グロリア！」

「グロリア様！」

アクリーナとサラは同時に名前を呼び駆けつける。サラを背中から降ろしグロリアを起こした。

「な、なんで……」

「ゴホゴホッ！ぐ……」

グロリアは吐血混じりの咳をし、二人の方を見る。その目は何か安心感があるように感じられた。

「ぶ、無事、で……よがった、ですわ…ゴホッ！」

「喋らなくていいよ！今治癒魔法を……」

アクリーナが治癒魔法をかけようとするとグロリアはそれを制する。

「わ、わだくしの傷では……も、もう助かり、ませんわ……グッゲホッ！で、でずからっ、早く……逃げ…ゴホッ！」

「で、ですがグロリア様！」

腹からの出血は酷く、少しでも動かせば臓物が見える、もはや時間の問題だった。

「ア、アグッ…アクリーナ、さん……」

「な、なに……？」

グロリアはアクリーナに視線を向け、力を振り絞りながら口を開く

「ごぼっご、これが、償いに……グ、ゲボッ！な、なるど、は……思いま、ぜんが……貴方には……ほん、とうに……許されない、ことを……」

言葉が途切れ途切れになり、血反吐を吐きながらグロリアは続ける。それをアクリーナ達は止めようとした。

「もういい、もういいよ！喋らないで！」

アクリーナとサラは必死に治癒魔法をかけるも傷は塞がらず出血も止まらなかった。

「ほん、とうに……申し訳……」

グロリアの目から一筋の涙が流れ、いよいよ最期の時が来たかと頭の中は、今まで自分のしてきたことが走馬灯のように流れ後悔の念でいっぱいになっていた。

「グロリア（様）！」

「何勝手に死のうとしてんだ。罪から逃げようとしてんじゃねえよ」

傷口に手を当て俺は再生魔法をかける。致命傷だろうと欠損してようと生えて元どおりになる。ついでに輸血して命をつなぎとめた。

「クーラス！」

何とか間に合ったみたいだな。コイツらと一緒にいるとは、まあ何があったかは状況的にわかる。

「アクリーナ！無事で良かったよぉ！」

シャロンがアクリーナに飛びつく。それにしても無事で良かった、状況からしてアクリーナが犠牲になっていた可能性があるからな、本当に無事で良かった。

「痛っ……シャロン」

「大丈夫！？どこか怪我でも……」

「大丈夫よ、ただのかすり傷だから」

アクリーナの頰や足に若干のかすり傷や切り傷が見えた。おそらく学園が崩れた際やコイツらを助ける時に負ったのだろう。

「おいグロリア！」

「なん……ですの…？」

「いつまで惚けてるんだ、お前の傷はとっくに治癒した」

そう言うとグロリアは自分の腹をさすり傷口が塞がっているのを確認すると驚愕した。

「な！傷、が塞がって……私(わたくし)…生きて……」

「お前ら、魔法の杖は持ってるか？」

俺はグロリアとサラに向けて聞く、もしあるのなら戦力になる。

「えっと……私、は……！ お、折れてる……」

サラの杖は校舎が崩れた際に衝撃で折れてしまっていた。

希少で高価って、これが原因なのか？

どうでもいいことを考えながら俺はグロリアの方へ向く。

「グロリア、お前はどうなんだ？」

そう言うとグロリアはゴソゴソと腰のあたりを探る。

「……くっ」

グロリアは真っ二つになった杖を取り出した。

魔族と相討ちになった上にこの被害だ、折れてない方が奇跡だろうな。

「まあいい、動けるなら手伝え。お前にはお得意の詠唱改変があるだろう？」

「う、わかりましたわ……」

多少詰まったもののグロリアはそう返事をする。

ふむ、この様子なら《人格再構成》の効果は多少は出ているようだな。アクリーナ達を身を呈して助けたようだし、良心がなけりゃコイツがそんな真似をするはずがない。

「で、でもクーラス……」

「どうした？」

「逃げた方がいいんじゃ……」

アクリーナが不安そうな声を出す。

まあ当然な意見だ、今もなお周囲から爆発音や人々の悲鳴が聞こえてくるしさっさと避難するべきだろう。

「別にそれはそれで構わない、けどこの状況で逃げたとしても、街の冒険者や兵士が魔族相手に戦い慣れているとは思えないし、それどころか避難場所が襲撃される可能性がある」

さっき駆けつけた兵士を逃げる際にチラッと見たが戸惑っているように見えたし戦い慣れてはいないだろう。戦争みたいに人間を相手にしてるわけじゃないしな。

「それに、さっきからアレスに《思念会話(テレパシー)》で話しかけてるが返事がない」

アイツほどのヤツがやられるとは思えないが、昨日の戦いのせいで魔力が回復しきってないのだろうか、いやそれしか考えられないな。

「シャロン、お前はどうする？」

「私は……」

シャロンは俺とアクリーナを交互に見て困ったような表情をして沈黙する。

「無理しなくていいんだぞ？」

「シャロン、私は大丈夫だから」

「うぅ……」

ますますシャロンは困惑しオロオロし始める。

そんな空気の中、サラが声あげた。

「わ、私も戦……っ！」

サラはそう言って立ち上がろうとするも、すぐに崩れ落ち苦痛に悶えた。

足の方を見ると両足首が腫れてあらぬ方向を向いている。多分折れているのだろう。

「その足の状態でどう戦うと？」

「そ、それは……」

コイツもアクリーナをいじめていた主犯(クズ)だ。むしろその状態でよく逃げてこられたな、アクリーナがおぶっていたのが遠くから見えたが助けられたのだろうな。

「まあいい」

俺はサラに向けて治癒魔法をかけ、歩けるようにする。

覚悟は本物みたいだし少しは協力してやる。

「あっ……」

「サラ、お前の覚悟が本物なら罪を償うつもりで戦え」

「そ、それは……」

「命をかけてシャロン達を守れ」

ギラリと殺意を込めるようにサラを睨みつける。完全に信用したわけじゃない、もしシャロンに何かあれば迷わずに殺す。

「っ！」

サラはビクッと体を震わせると無言で頷く。殺意が伝わったのだろうか微かに怯えるように震えていた。

次に俺はアクリーナとシャロンに目を向ける。

「だったら、私も行くわ」

「アクリーナ、でも怪我は……」

「かすり傷って言ったでしょ？それにほら」

先ほどまでついていた傷はいつのまにか完治していた。

というかアクリーナって無詠唱で魔法使えたっけ？

「あ、そうか私の服……」

シャロンは自分の服に手を当てそう呟く。

ああそうか、シャロンは回復し続けるような付与魔法が使えたんだったな。その服にも付与してあったのか。さっき抱きついた時に効果が出たんだろう。

「それじゃあアクリーナ、シャロンのことを頼むぞ」

「ええ任せて」

「二手に分かれて行動するぞ、グロリアと俺はあっち、アクリーナ達は向こうを頼む」

「クーラス……」

「なんだ？」

シャロンが不安な声を漏らす。

先程まで俺が心配だからと駆けつけてきたのだ、それがまた離れるとなれば不安にもなるだろうがアクリーナをサラと2人だけにするのは正直心許ない。

「大丈夫だ。絶対に死なない、約束する」

俺はシャロンの頭をポンと撫でながらそう言うとシャロンは顔を紅くしながら頷いた。

「よし、行くぞ！」