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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第一章 学園生活編
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55話 魔族


訓練が始まってからどのくらい経ったのだろうか、辺りはすっかり暗くなり森の中からは不気味な鳴き声が聞こえてくる。



「クーラスぅ……」



寝言で俺の名前を呟くシャロンを背中に、俺はアレスと今後のことについて話していた。



「僕たち、まだ1頭しか狩れてないけど明日の朝までに大型を、しかもあと9頭も討伐するなんて難しくない?」


「そうだな、食べれる野草について調べておくか」


「一週間この森で野宿する前提なんだね」


「まあ禁属性使ってコピーする、なんて方法もあるがゴットハルトのことだ、不正をさせないように対策をしている可能性が高い。バレたら一週間、いやこれ以上に厳しい罰になるだろう」



魔力だけで個人を見極めるような奴だ、剣だけでなく魔法に関しても思っている以上に精通しているはずだ。



「天使様ならあるいは……」


「ん?」



アレスのやつ、今なんて言った?声が小さくて聞き取れなかったぞ。



「いや、ただの独り言だよ。それよりも食べれる野草、僕たちならそこらのものでも作り出せるんじゃないかな」


「ああ、確かにそうだな。探し回るよりその方が楽だな」



クーラスとアレスはすっかり森で生活をするつもりで会話をしていた。



「ヒッ!?い、いやぁぁ」


「シャロン!?」



その時突然シャロンが悲鳴をあげ、俺は咄嗟に振り返り側に寄ろうとすると。



「大丈夫よシャロン。私が一緒にいるから」



アクリーナが手を握りながら頭を撫で、寄り添っていた。



「アクリーナ、すまない助かる」


「別にこのくらい大丈夫よ」


「……アクリーナ、もし迷惑じゃなければ一晩シャロンの側にいてやってくれないか?」


「迷惑だなんてそんな、全然構わないわ。友達なんだから」


「俺は見張りをする、何かあればすぐに呼んでくれ」


「ええわかったわ」



クーラスはそう告げるとテントの外へ出て周囲を警戒する。

森の中からは相変わらず魔物達の不気味な鳴き声が聞こえてきている。《索敵》で周囲を見回してみても、今のところ近くにはいないので大丈夫だ。


一度魔力を温存するために《索敵》を切った瞬間、背後から首筋に剣が突き出された。



「!」



俺は咄嗟に距離を取り、剣を持って振り返るとそこにはアレスが剣を突き出していた。



「何の真似だ」



いきなり背後に立ち剣を突き立ててくるとは、一瞬遅れていたら最悪殺されていたかもしれなかったぞ。


コイツも禁属性が使える以上かなりの実力はあるはずだ。



「何のって、いくら君自身が強くてもこうやって不意を突かれたら危ないだろう?僕も見張りをするから交代で休もうよ」



ああそういうことか、確かにその通りだな。多少なりとも休まないと魔力も回復しないし周囲に危険はないとはいえこうやって急激に接近されたらいくら俺でも対処のしようがない。



「そうだな、1時間程度で交代するか」


「それじゃあこれから僕が見張るから仮眠でも取ってきなよ」


「ああ、そうさせてもらう」



俺はそう言ってシャロン達とは別のテントへと入り横になる。疲れていたのか目を閉じるとすぐに意識が落ちた。




「——ラス、クーラス!」


「んん」


「クーラス、朝だよ」



次の日、シャロンは体を揺さぶりながらクーラスを起こした。昨夜の様子とは違い元気を取り戻したようだ。



「もう、朝か……ん?」



あれ?そういえばアレスのやつ俺を起こさなかったのか?交代しようと提案してきたのはアイツだったはずなのに。



「やあ起きたようだね」


「あ、アレス。見張りの交代は……」


「ああ、随分と気持ち良さそうに寝ていたからね。起こすのも悪いと思って」


「悪いな、一晩見張りをさせて」


「大丈夫だよ、魔力量には自信があるからね」



アレスは微笑みながらそう言った。


そう言ってくれると、俺も気が楽になる。さてと


俺は視線をシャロンの方に向ける。



「なあシャロン、お前昔の狩りがトラウマになっているんじゃないのか?」


「!」



そう言うとシャロンの様子が昨日みたいに顔は青くなり体は震えだした。

やはりそうか、1人にしたばかりに突然現れた大きな熊に対しての恐怖がトラウマになってしまったのだな。



「すまない、嫌なこと思い出させたな」



俺はそっと彼女を抱擁し頭を撫でる。



「ク、クーラス……」


「あの時、お前を1人にして悪かった。今後絶対にお前を1人にはしない、約束する」


「……」



シャロンが無言で俺の背中に手を回しぎゅっと力を込める。



「クーラス……」


「シャロ…うわっと!」



突然シャロンがクーラスを押し倒し、馬乗りのような形になった。



「シャ、シャロン?」


「クーラス、私ね……!」



シャロンが何かを言いかけると突然顔が赤く染まった。



「あ、いや、その……!」



シャロンは俺に跨ったままテントの入り口の方も見ながら真っ赤になってしどろもどろになっていた。


俺はシャロンの視線の先を見るとそこにはアクリーナが顔を赤くしながら立っているのが見えた。



「あ、朝ごはんが、できたから、よ、呼びに来たんだけど……お、お邪魔しましたっ!」



アクリーナはそう言うと素早くその場からいなくなった。



「シャ、シャロン。とりあえず朝食を済ませないと……」


「あ、うぅ〜」



シャロンは赤くなったまま俯いてゆっくりとクーラスの体から降りた。





「ご馳走さま、アクリーナ料理上手なんだな」


「い、いやそんなこと……」


「とても美味しかったよ、どうやって作ったの?」


「お、お母さんに教わったのを真似しただけだよ……」




アクリーナは顔を赤くしたままモジモジとしてそう言った。

そう謙虚にならなくていいのに、今まで褒められたことがなかったのだろうな。



「さて、とりあえずこれからどうする?もうすぐ制限時間だけどノルマは達成できてないみたいだし」


「そうだよね、私たちもあと大型1体で達成なのに全然いなくて……」



そう言って落ち込むアクリーナにクーラスはある提案をした。



「それなら俺らが狩ったムーンベアーを譲ろうか?」


「え!?でもそれだとクーラスたちは……」


「そもそも俺ら、この1体しか狩れてないし今から探したって間に合わないしこうした方が有意義だと思うよ。いいよな?アレス」


「構わないよ、僕もクーラスと同意見だよ」



アレスがそう言いながら俺は空間収納よりムーンベアーの頭部を取り出す。討伐の証拠として頭部、もしくは牙をゴットハルトに提示するのがルールだ。



「そんな……ありがとう」



アクリーナは少々戸惑いながらそれを自分の空間収納へと仕舞い、俺たちは森の入り口へと戻ろうとした。



「さて、それじゃあ戻ろうか——!」


「!」



クーラスとアレスはまるで示し合わせたかのように同時に後方へ振り向いた。



「どうしたの?」


「……シャロン、アクリーナ。今すぐ走って——いや、身体強化、その他強化魔法を使って急いで入り口まで戻れ」


「えっ何が——」


「早くしろ!急げ!」



俺は声を荒げて2人に急ぐように叫ぶ、するとアクリーナも異変に気がついたのかすぐにシャロンの手を取った。



「わ、わかったわ!シャロン!急ぐわよ!」


「え、う、うん!」



2人はほぼ一瞬にして森の入り口に向かってその場からいなくなった。



「なあアレス……」


「うん、この魔力……」



俺は後方へ向け声を荒げて叫んだ。



「誰だ!」



すると周囲の茂みがガサガサと動いたと思うとそこから無数の人間——否、人間の形をしたモノが現れた。



「ひひひ、女は逃したか」


「アレは本当に人族か?速すぎるぞ」


「いいさ、殺す楽しみは残ってるんだし」



そいつらは人間とそっくりな見た目をしているがツノが生えている個体、翼がある個体、またはその両方がある個体と人間とは思えない姿をしている。

そして明らかに違うところが一つ、それは禍々しい人間のものとは思えない異質な魔力だ。


コイツらは、間違いない————




「魔族だな(だね)」


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